ンゴマ(ngoma)について紹介した際に、その重要な参加者に主宰する施術師の「施術上の子供たち」がいることに要約的に触れた。それは施術師とその施術を受けた患者との関係に基づいた、やや持続する社会関係である。どんな人も、病気の際にその治療を当てにできる複数の施術師を念頭に置いている。占いの最後に、その誰が実際の施術師になるかが、相談者が占いの施術師に差し出す複数の生木の枝のどれを選ぶかで決まる。その治療結果に感銘を受け、その施術師に対する信奉を深めた人は、自らその施術師の「ムコバ(mukoba1施術用の編み袋)に入る」ことを選び、その施術師の「施術上の子供(mwana wa chiganga2)となる。正式に「ムコバに入」らないまでも、かかりつけの医師のように信奉する施術師との密な関係に入る患者とその家族たちもいて、彼らも「施術上の子供たち」と語られることもある。施術上の子供は、施術師の施術の助手として施術にさまざまな形で協力する。それに関しては上記の要約を見られたい。この関係は、ほとんど一生を通じて続く場合もないわけではないが、多くの場合それほど長続きしない(人間関係におけるさまざまなトラブル、嫉妬や執着などはつきものである)。「ムコバに入る」手続きがあるように「ムコバから出る」手続きもある。ムコバに入っていない信奉者の中には、自然と脚が遠のいたり、離れていく者もいる。その一方で、新たな患者が施術師子供たちのサークルに加わってくる。いったん「ムコバから出て」離反した子供が、その後病気などを契機に、もう一度戻ってくるといった場合もある。この事例に関して施術上の親子関係の中に含まれる葛藤要因を考察しているので、興味のある方はどうぞ。
このように「施術上の子供」とされる人々のつながりは、時間とともに変化する。どれくらいの人々が、そのときの実効的な「子供」かは、施術師が主宰する「月のカヤンバ」などで施術師の声掛けで当日、集まってくるのが誰かでだいたいわかる。まあ、そうした流動性のある半ばインフォーマルな集まりである。
施術師と患者(とその親族たち)のこうした関係よりも、やや持続性のある施術上の親子関係は、施術師同士の間で見られるものである。憑依霊を多数持つ者のなかには、憑依霊の施術師になる者がいる。なぜなら憑依霊が宿主に対してもつ様々な要求のなかでも最大のものは、「仕事」の要求、つまり宿主自身がその憑依霊の施術師になるという要求だからである。「外に出すンゴマ(ngoma ya kulavya konze(or nze))」と呼ばれる盛大なンゴマを通じて、宿主は施術師になる。
この「外に出すンゴマ」が、他のンゴマと違っている点は、男女二人の施術師によって主宰されねばならないという点である。この男女は必ずしも夫婦である必要はない。が、それぞれが、このンゴマでその霊の施術師となる者の施術上の父および母となる。つまり施術師となるものは施術上の父と母の「子供」として「外に出される」わけである。そして同時に当該憑依霊は、瓢箪子供の形をとって、あらたに施術師となった者の「子供」として「外に出される」。(同時に、二人の主宰する施術師は「外に出さ」れた憑依霊たちを、自分たちの子供と語ることがある。)
「外に出すンゴマ」による施術上の親子関係は、通常の施術上の親子関係が施術上の父子あるいは母子のいずれか一方だけであるのに対し、父と母の間の子供として、より完全な親子関係ということになる。施術師の唱えごとのなかで繰り返される決まり文句に「誰それはその父とその母とから生まれました。神の被造物、人間です。(後半は、きれいな息をもって生まれました、などバリエーションあり)」例というのがある。「その父と母とから生まれる」ことに一種の存在としての完全性が含意されている。
単なる施術上の親子関係については、ムコバから出たり入ったり、関係が切れたりできたりする履歴がいちいち辿られることはないが、「外に出すンゴマ」による施術上の親子関係は、憑依霊に対する唱えごとのなかで、すべての履歴が逐一述べられねばならない(一例)。それは子供として外に出された憑依霊たちに対する、施術師の「親」としての特権的な関係を保証するものとなっている。子供(憑依霊)は親のいうことを聞くべきだ(あまりちゃんと従ってはくれないけれど)。
こうした親子関係で結ばれた施術師同士の間に、対抗心や嫉妬が全く無いわけではなく、完全に仲違いしてしまうようなケースもときに見られる。しかし通常の施術上の親子関係に比べて安定していることは確かである。とりわけ、施術師は自分で自分の病気を治すことはできず、また同じく憑依霊の施術師であっても配偶者によっても治すことができないとされている。というわけで、施術師は自分を苦しめている憑依霊に通じた、こうした施術上の親や、子供の手を必要とする。つまり互いに癒し合う、治療し合う関係でもある。
さらに専門家どうしとして、こうした親子関係でつながった施術師同士が出会うと、共通の興味関心に従う情報交換(雑談)でおおいに盛り上がる。このページで取り上げるのは、こうした専門家同士の「深く濃い」雑談の一例である。
このように互いに治療し合う施術上の親子関係でつながった施術師どうしが久しぶりに会うと、どんな会話が展開するのだろうか。Mwainzi氏とその妻Anzaziは、Chariのライカ、シェラ、デナを外に出すンゴマが、1989年、1990年の2度にわたって不首尾に終わった後に、ついに三度目の正直で満足のいく結果をもたらしてくれた施術師夫妻で、1991年に行われたこのンゴマ以来、チャリたちと極めて親密な関係にある施術師夫婦である。互いの憑依霊に対する知識に敬意を払い合っている。今回はチャリの病気治療を求めての訪問だった。Mwainzi夫婦がチャリの施術上の父母という関係であるが、後にAnzaziの病気が世界導師によるものと判明し、その治療と世界導師を外に出すンゴマをチャリたちが主宰したことで、世界導師に関してはムリナとチャリの夫婦がAnzaziさんの施術上の父母になるという、相互的な親子関係になり、互いが主宰するンゴマに遠方からゲストとして参加することも多く、親密な関係が長く続いた。
(from diary of Oct.7,1992(Wed), kpwaluka) ...12時すぎ、キナンゴでムリナたちと合流、Bang'aのMwainzi宅訪問。こちらではunga15がほとんど手に入らず、人々は相変わらずチャパティなどで凌いでいる。金が必要でウシは減っていくばかりとなげく。チャリ、アンザジと仲良くmudurumaの布のkuhunga16。ムリナ、Mwainziと雑談。さすが施術師同士の雑談だけあって、自分たちを悩ませるpepoの話に終始する。ムリナはチャリについているmudigo17とshera26にkukokotera108し、チャリが再びvuri112の畑仕事にかかれるようにと望んでいる。それとjine mwanga74のngata56。
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Chari(C): 上の方に、蜂が群れ飛んでるのよ、もう馬鹿みたいに。 Anzazi(A): (ムズカ(muzuka47の)洞窟のなかの上の方で? C: ええ。 A: バオバブの木の洞みたいに。 C: でも、あの蜂たちときたら、ああ!あの連中(チャリの施術上の子供たち)ったら、ああ、逃げろ。みんな逃げ出しちゃう。 Murina(M): 蜂はそこでルンバ(rumba)を踊ってるのさ。蜂たちには私たちは見えない。私たちは水に潜って外に出るのさ。 A: なに?そこ(ムズカの場所)に着いたら、皆さん、中に入るんですか? C: 水中にってこと? A: いえ、その大洞窟の中に。 M: そりゃ、入らないとね。 C: 私はまずね、中の方まで入っていくの、で、立ち上がって、さらに奥まで行きます。 M: 水のなかに入らないといけない。水がここ(胸)のあたりまで来るまでね。さて、その洞窟はこちらに続く。そしてあなたは水中に潜って、ここ(一番奥)に行く。 Mwainzi(Mw): その日にも? C: そうよ。カリンボ(浜本)が心配してね。「お母さんが完全に潜っちゃった。頭も見えない」って。 A: 大仕事ね。 Mw: そこではそんな大仕事がされてたんだ!
Chari(C): 同行者は二人ともすでに帰っていって、私の施術上の子供が一人。見ると、顔色が真っ青(字義通りには白々)、頭がぐるんぐるん114しているの。ピング(pingu57)を縫ってあげたら治ったわ。 Mwainzi(Mw): なんと恐ろしい(phakali115)場所。 C: 恐ろしいところよ。 Anzazi(A): そこには、あなたは(憑依霊たちの)椅子(複数 vihingbwa116118)を身に着けて行く必要があるわね。それらを持っていかなければね。 C: うん。でも私は私の椅子(複数)を忘れたりしないわ。 Murina(M): 私は持ってなかった。 C: この人は持ってなかったの。 A: さらに、他の人たちも、もしかしてもっていない? C: ああ、でも私、後で全員に縫ってあげてたわ。 Mw: 彼らは言われるだろう。こいつらは何をしに来たんだと。皆、(椅子を)持っていない。 M: でもそいつ(ムズカの主)は私のことを知っているのさ。私は自分の鶏が(ムズカに置かれるのが)嫌だってこと。 Mw: 例の仔山羊たち(鶏のこと)はそこに入れられたんだ? A: なんとそこに入れられたのね。知らなかったわ。 M: そいつは、私の鶏がそこに入れられたのが嫌だってわかっているんだ。だって無理やり私がそいつから取り上げたんだから。 C: (そこにいる女性に向かって)あなた、ンデグヮの奥さん、それともムリナの奥さん? M: そこキンバララ(ムズカの名前)、あのちょっとした洞窟、そこの上で私たちが先日(いっしょに)草木を採ったその場所、そこもとっても恐ろしい場所なんだよ。
Chari(C): 先日、行き始めたところ? Murina(M): あそこも恐ろしい場所だよ。 C: 先日ね、あの、あの嘘つきの...さん、その娘さんが、そこに水くみに行ったのよ。そこに着いてね、彼女が言うには。その子はいずれ癒しの術を出すことになるわね。彼女が言うには、「お母さん、水を汲みに行ったところは、わぁぁ、もうたくさんの人々といったら、まあ。少しじゃないのよ。」私は言いました。「ああ、この子、ちょっとおかしいんじゃない(muvyoni119)?」でも、本当だったのよね。 M: そこは、恐ろしい場所だよ。一昨日、夜が明けたら昨日になる一昨日、その子に例の草木を採ってきてくれるよう言ったんだよ。私は彼女に言ったよ。「しっかり採ってきてね」って。そして(その後すぐ)私もそこまで行った。 Mw: その子はもう水場に行っていたのかい? M: するとね、私は妙な気分になった。 C: さらに、そこってあの洞窟なのよね。 Anzazi: あなたがたのあのンガタ(ngata56)は身に着けて行ってたの? M: 家に置いてきちゃったんだよ。 C: 彼女はそれを身に着けてたんでしょ? M: 異様な感覚さ。耳のなかではブウェケ、ブウェケ、ブウェケ120鳴っている。ウェケ、ウェケ、ウェケ。目は突然見えなくなる。いったい何だってんだ。これまで当たったこともないような風が吹きつけてくる。 C: あなた、そこに行くとしたら、その..なにを採りにいったのよね。
Murina(M): さて、私がまさにその草木を握ると、髪のつけ根がハラハラハラ121。私は言ったね。「ああ、どうぞお好きに、あんた。私は草木を折り取るよ。」 Chari(C): あそこだよ、カリンボといっしょに先日行った所、その後でいっしょに下っていった。 Hamamoto(H): うむ。 M: 最初は、その草木は、まるで電気みたいに私を引き寄せやがった。その草木。そいつを握ると、そいつは私を引っぱる、でも私はそれを折り採った。 Mwainzi(Mw): (そこの主が引き起こした)不思議だね。あなたがそれを身体のうちに経験するようにとね。 C: そこ、けっしてただの場所じゃないよ。 M: 立ち去るとき、持っていたのは葉のついた一本の枝だけだよ。二度と戻らなかった。 C: そう、私は言ったわ。どうしてそんな小さな枝、一本だけ持ってきたのって。 Anzazi(A): そうじゃなかったとしても、結局、負けてたでしょうね。彼は葉のついた枝一本持ってきた。他の草木のために、もう一度戻ろうとはしなかった。だって、心(roho122)は、すっかり別様になってしまってたんだから。 M: 一週間というもの、私を蔑む人々が列をなしてやって来るんだ。ほら!泥棒だ、ほら!泥棒だ。泥棒だ!と呼ばわった奴が通り過ぎると、別の奴がやって来る。ほら!泥棒だ!そいつも通り過ぎる。全員、嘲りの声はどれも私を蔑みつくす。そう実に奇妙なやり方で、私を蔑むんだ。 A: あなたは眠っているの?それとも... M: 私は眠っている。さあ、来る者、来る者、ほら!泥棒だと言いたがる。そして通り過ぎる。全員。小さい女が。あいつは泥棒だ、泥棒だと言うばかり。私は目を覚ます。そして言うんだ。じゃあ、私の盗みとは、私が何を盗んだというんだ、ってね。
Anzazi(A): あなたが他人(憑依霊)の草木を盗んだって言うんでしょう。あなたは盗んでなど... Chari(C): もし、そんな風に草木採取に行くのなら、例の護符(pingu57)を持っていくのが望ましいわね。 Mwainzi(Mw): うん、その方が良い。 C: 彼も、もしクズザ(kuzuza27)の仕事を終えたなら... Murina(M): そこで、別のやつ(憑依霊)がやって来たんだ。そいつは私に多くの草木を教えに来た。教えて、教えて、さて私はどの草木を折り取ろうか。私はすでに草木については知っているんだよ。 C: でもね、もしそんな風に(憑依霊から)教えてもらったのなら、あなたは折り採ればいいのよ。だって、あなたが本当に欲しているのは癒しの術でしょ。 A: そうよ、癒しの術よ。 Mw: 彼は「外に出し」てもらいたい。 C: 彼は「外に出し」てもらいたい。すぐにもあなた方が彼を扇ぎに(mupunga123)来る。 A: ところで、あなたが教えてもらったそれらの草木だけど、あなたの知らない草木は一つもなかったわけ?全部、あなたが知っているものばかりなの? M: 全部、すっかり私は知っているんだ。 A: でも教えてもらうこと以上に、癒しの術そのものがあなた、欲しいんじゃないの。 C: ああ、でもその日のうちに欲しいわけ? M: そう、だからそいつはやって来て、私に徹夜でクズザさせるってわけだ。 C: 彼にしても、もし突然そんな風にし始めたのなら、ねえ、あなたはそこで立ち上がって、彼といっしょに、たとえそれがどこであろうともいっしょに行くべきよ。朝まで目をさまさずにね。
Anzazi(A): ところでそのクズザだけど、病人をクズザするの、それともただクズザする(そのやり方をおさらいする)だけ? Murina(M): 病人を実際にクズザするんだよ。そして私は歌うんだけど、その歌は私に涙を流させて、私は実際に泣いてしまうんだよ。目が覚めたら、実際に涙が流れていた。 Chari(C): 飢饉が襲ってきてるんで、私は... M: でも例のターバンを巻いたやつが出てくると、さて、私はとても大変な仕事を背負い込んだんだ。 Hamamoto(H): 誰のことですか? M: ジンジャ導師(mwalimu jinja127)だよ。私は彼と本当に何度も何度もクズザし続けたよ。他の憑依霊たちもいたけど、でも彼がもっとも留まった。彼にはとてもかなわない。だって2か月もの間だよ。そしてそいつが私に教えた草木は、普通によく使われる草木ばかり。 Mwainzi(Mw): でも、さてあなたが(正式に)癒しの術を外に出してもらうときには、あなたは同じ草木をまた教えてもらうことになるんだよ。 M: それが私の現状だよ。さて、今さら行ってどの草木を折り採れって言うんだい? Mw: いや。私が(草木を)教えられたっていうのは、私が外に出してもらったからこそ...
Anzazi(A): ねえ、(草木を)折り採ることだけど、あなた自身、癒しの術を外に出してもらって、病人を治療しに行くようにならないで、どうやって折り採れるっていうの?どうなの、あなた今、折り採って病人を治しに行けるの? Murina(M): いえ、とんでもない。 Chari(C): 普通はって、何なんでしょう。もしそんな風に(夢で憑依霊から)草木を教えられたら、憑依霊たちがあなたに教えたことにならないとでも?あなたはさっさと折り採って、戻って揉み潰して揉み潰して(薬液にして)自分自身で浴びる。それだけのこと。 Woman(W): そうよ。まさにそのとおりよ。それが望まれているやり方よ。さて、そうしたら、あなたはあなたの身体がしゃんとするのを感じるわ。 M: まさに先日、そいつがやって来ると(夢の中に)、私をとっても高い木に上らせたんだよ。 C: (そこで遊んでいた子供に)さあ、行った、行った。自分で歩いて行きなさいってば。 M: とにかく高い木で、見上げるとまるでムヴレのお椀(muvure128)のよう。その一番上に上って、こんな風に葉を踏んで立ったんだ。一番てっぺんでね。 Mwainzi(Mw): それこそ、彼ら(憑依霊たち)の業そのものだね。 M: わああ。さらにそいつが言うには、「南の風をとれ、南の風をとれ。北の方角の風をとれ、西の風をとれ、東の風をとれ」って。そして、そいつは私の身体の向きを変えさせた、まるで私の写真でも撮るみたいに。ああ、すごく苦しかった。 Mw: ああ、お前さん、その後は身体はしばらく元にはもどるまいね。 A: ああ、ちゃんとあれこれ(施術を)調えてもらいなさいな。今は、どうせ当分苦しい(貧しく惨めな)ままでしょうし。いつ終わるともしれない。 M: ああ、今の飢饉にはうんざりだね、お母さん。何で(空腹と)戯れたら136いいのかもわからない。
Anzazi(A): ああ、そうね、飢饉に慣れる(平気になる)ことなんかないでしょうね。いつになったら終わるのか、よね。飢餓と病気。飢餓はいつかは立ち去るもの。でも今の飢饉は、やって来てまるで永遠に居座るつもりみたいね(Yino nayo yakudza ya kamare.)。 Mwainzi(Mw): 私の場合は、(お金の工面のために)いろんな人と格闘するばかり。 A: (お金を)手に入れるために奔走。こちらには飢えに対処するためのお金の問題、あちらにはこの身体のために調えてもらうためのお金の問題。だって、あなたは身体は自分で守るしかないものね。 Murina(M): 正直言って、飢饉のせいで「ちょっと抜く」地区を去って以来、私には全く仕事がない。 A: (子供に向かって)お前、ビーズをばら撒いちゃって、お前ったらもう。退きなさい。 M: (自分語りが続く)...ただの人だよ。ほんとのこと。ただの人、ただ(何もせず)座っているだけの。誰(憑依霊)が通り過ぎていくかもわからない。 Mw: 問題のせいで、お前さんのイスラム系の憑依霊たち、お前さんが治療するそいつらも、塞ぎ閉ざされてしまう(活動できなくなってしまう)こともありうるからね。 A: (まだ子供を叱っている)もう、触らないでって。後で拾い集めたらいいから。そこを退きなさい。 Mw: 憑依霊は厄介だね。自分でもわかってるけど、憑依霊ってのは厄介だ。
Mwainzi(Mw): 憑依霊は厄介だね。自分でもわかってるけど、憑依霊ってのは厄介だ。 Murina(M): こいつ(Chari)にしても、(彼女の憑依霊が)ワリ(wari137)すら食べるのを嫌がるんだ。 Chari(C): 先日、先日なんか突然、血を吐いたのよ。昨日の前日。 Mw: ワリを拒絶するという症状が関係してるんだね。 M: ワリを食べるということでは、そいつはワリそのものを嫌ってるんだよ。 C: 明日よ、明日は私はワリを食べない人。明日って木曜日でしょ。もうびっくりよ。 Mw: ワリを食べられないんだ! C: 明後日まではね。たぶんジャガイモとキャベツでも探そうかしら。さて、明日になったら私の食事は、それってこと。 Mw: ここじゃね、戦争だよ、ここじゃ。ワリに関してはね。取っ組み合いみたいに食べ尽くされる。でも、この人(Anzazi)ときたら、チャパティを一枚食べたら、もう、それでお終い。さてその憑依霊がここに到来したら、ここに紙巻きタバコを用意してなくちゃならない。 C: 私もよ、その紙巻きタバコっていう性癖、昨日になって始まったの。昨日、私、朝紙巻きタバコ買いに行ったわ。なんてまあ、紙巻きタバコをとっても美味しいと感じるのよ。(買ったのは)一本だけ。だから消して、(残りを)置いておいたわ。 Mw: 紙巻きタバコという性癖。 Hamamoto(H): その性癖を引き起こすのはどの憑依霊ですか? Mw: ムミアニの「白人」(muzungu wa mumiani138)だよ。 H: うむ。ムミアニの「白人」。 C: さて、この人(ムミアニの白人)、あなたは知ってるわね?
Murina(M): あのズボンを履いている奴ら(ケヤの白人)も同じだね。 Chari(C): あのイスラムの霊(ズングオの奴140)も紙巻きタバコを吸うわ。 Hamamoto(H): 木曜日にワリを食べるのを禁じているのも、このムミアニの「白人」ですか? M: いやいや、それはこいつ憑依霊セゲジュ人(muzegeju141)だよ。 H: おお、憑依霊セゲジュ人ですね。でも紙巻きタバコの性癖はこいつムミアニの「白人」ですね。 M: 「白人(muzungu)」、そいつも吸うよ。彼「(ケヤの)白人」も吸うよ。 (Mwainzi氏、自分に要求してくる別の憑依霊について語る) Mwainzi(Mw): そもそも、私にはお金がないんだよ。じゃなきゃ、布にしてもとうに測って(購入して)ただろうに。おまけにとっても小さい布なんだ。私は言われたんだ。そいつはやって来るんだ。私はそのとき小屋の中に座っていた。でもこんな風に上に座っていたんだ147。そいつは丸太棒(梁として渡されている)の上にいる。その小屋は、こんな風に丸太棒が置かれているんだ。さて、そいつはやって来ると、私に挨拶した。そいつはそこに降りてきた。「母さんや、この人に椅子を出してあげてよ」とそいつは言う147。そいつは服(布(nguo))を着ている。その帽子、そこに(縫い付けてある?)布切れはいっぱい。(着ている)小さいシャツも、たくさんの草木。そして手には本を持っている。さて、そいつは言う。「私はマルワ・ワ・ブドゥ(maruwa wa abudu148)だ。」私は立ち上がって、あの椅子を取りに行きます。するとそいつが言うには「いや、私はそこには座らない。あちらの私の小屋に連れて行ってくれ。そこにこそ私が座る椅子がある。私は背もたれのある椅子には座らない。」 C: でも、そいつムビリキモ(mbilichimo93)じゃないの?
Mwainzi(Mw): 「私が座る椅子は脚の(3本)ある椅子だ。」私自身がちょっと先に立って、彼とあちらの小屋に行ったよ。そいつが言うには「わかるだろう。私はお前に自分はマルワだと言った。お前、私をマルワ・ワ・ブドゥだと思ってるな。なんと、お前は私がわからないのか。私こそムガイ(mugayi149)だぞ。私は貧乏しているよ、お前。私のいで立ちを見てごらん。これが一枚布に見えるかい。私はムガイ(貧乏人)。さあ、あちらの小屋に行こう。お前に言うことがある。」私は彼の先に立って、そこに行くと、(三本)脚の椅子を置いて、彼に差し出したよ。ああ、そいつのいで立ちときたら... Murina(M): 布切れのツギハギなんだろ。 Mw: そう、布は... そう、あらゆる布切れを身体にまとっている。さて、その帽子、小さい帽子なんだけど、ビーズ飾りが、こちらと、こちらと、こちらと、こちらに垂れ下がっている。そいつが言うことには「わかるだろう。私の椅子は腰を下ろすためのこいつだ。さあ、お前、お前の椅子もこれだよ。後は、お前はこれと同じような服(布)を買いなさい。お前もそれを味わうがいい。ほら、この本をあげよう。お前はこれからこの本を眺めることになる。そしてお前はそれを眺めて、いったい(妖術使いは)何者か(を知ることができる)。」そこで私はその本を手にとって、それを小屋の中にきちんと置いた。さて、外に戻って、さて楽しく会話しましょうと。そこではっと目が覚めた。でも本は、私は小屋の中にきちんと置いた。 M: そこで彼の姿は消えたんだね。
Mwainzi(Mw): そこで私はびっくりしてとび起きたんだよ。つまり、そいつは私に、お前もこの本とこの服を手に入れたら、お前自身、味わえるだろうと言ったのさ。たとえもしお前が妖術をかけられたとしても、お前は仕事をして、お前自身で知ることができるだろうと。さて、そこで目が覚めたのさ。ああ、私はその服がほしいよ。でも金が!ああ手に入らない。あれこれ考えても... Murina(M): 金は古着に使い尽くした150。 Mw: 古着にね。ところで、その(憑依霊ムガイの)服は、ここまでの丈しかないんだ。 M: すごく小さいんだね。 Mw: そう、すごく小さい。裾はここ辺りまで。ここ臍のところまでの丈にしろって言われたんだよ。そしてこの、(胴に巻いて結ぶ)黒い布には、白い線を、この辺りから、ここ上まで施せって。 M: 腰のところに? Mw: ああ、違うよ。ここ下から始まるんだよ、その白い線は。 M: 腿のところから? Mw: そう。 M: つまり横面に? Mw: そう、横面に。そして(その布で)胴を巻いて縛る。線は一本だけ。さてこちらには例の小さいシャツ、そして小さい帽子。「私のように着なさい。そして見守ってなさい。」ってね。「もしお前が死ぬときには、これら全ても終わりになる。お前は、(癒しの)仕事をここでやりなさい、そしてもし人(妖術使い)が出てきたら、知ることになるだろうよ。...ああ、さあ、このことは早急に調えなさい」
Murina(M): まずは、あなた、その服(布)を手に入れないとね。 Mwainzi(Mw): 仕立て職人と先日話したんだけどね。子供を(キナンゴ病院に)連れて来る用があってね。私は言ったんだ。ねえあんた職人さん、私には私を苦しめている一人の憑依霊がいるんですよって。 Hamamoto(H): つまり、そいつが憑依霊ムガイですね。 Mw: そう。さてそいつの服(布)... Chari(C): 私も今、グーシェの布(gushe152)があって、そいつを仕立て... H: ムガイと憑依霊ドゥルマ人は同一の憑依霊じゃないですか、それとも違う人? M: そいつらは互いに隣人だよ。 Mw: 彼らは隣人どうしだよ。さて、お前は言われる。「あなた、まずお金を工面しなさいな。だってムルングの布の小片をこの辺りに縫いつけて、別の小片をこちらに... M: つまり、ツギハギにね。 Mw: そうツギハギ、シャツ全体がすっかり埋まるまで。 M: つまり、実にみっともない。 Mw: そう。実にみっともない。だって貧乏人らしく。さらに帽子も、また同じように、ツギハギ。さて、施術に行くときにも、それを着て、クズザ(kuzuza27)に行くにもその格好で。さあ、あなたじっくり感じてください。私は言いましたよ。ああ、ああ.. M: 本当にバカバカしい服じゃないかい。 Mw: そう良い服とは言えない。 (ムリナ、別の夢の話を始める) M: (誰かが問い詰めている)「お前、なんでここに寝ているんだ?」 C: その日は、私たちは畑に寝ていたの。
Murina(M): 「お前は誰のワリ(wari137)を食べてるんだ?お前は他人のものを食べてるだけ。お前はこの土地にやって来たけど、お前の友人っていったい誰?お前はここから出ていくことになるよ。」 Chari(C): そいつはここ、マットレスの上に寝てた。でもマットレスから退かされて、草むらに寝に行かされたの。「お前、なんでここに寝ているんだ?お前の場所はどっちだ?」と言われて。 M: さて、こちらでカヤンバを打った。そいつは手に蝿追いハタキを持って、(草むらを)立ち去る。 Mwainzi(Mw): そいつ立ち去るのかい? M: そう。そいつは立ち去る。カヤンバは(小屋の)中。そいつは立ち去る。流れてくる。 C: 「私は追い出された」 M: さて、私はそいつのために子供たちを呼んで、さっそくカヤンバだよ。そいつがやって来て言うには「私はここから徹底的に追い払われたよ。そう。だから私は家に帰るよ。ここには友はいないと言われたよ。」私はそいつに言った。「あなたを追い出した奴が間違っている。でもここは仕事をするところだよ。あなたはここに仕事をしにやって来たんじゃないのかい?じゃあ、あなた、心をひとつにして仕事なさいな。でも、もしあいつがあなたを拒絶したとしても、それは住む場所を拒絶しただけだよ。そいつにしても(住む)場所は手に入れられないよ。(仕事をしないのなら)あなた方皆いっしょに、自分たちの家にお帰りなさいな。私は怠惰な者は嫌いです。」そいつが言うには「あいつらここに住んでいる連中(憑依霊)は、ずいぶん昔にやって来て、ただ何もせずに(dovyoo153)座っている。ここにね。皆、ただ住んでいる。でも仕事をするやつは一人もいない。ただ住んで脚を伸ばしているだけだ。私は自分の仕事をもってやって来た。私は、布さえいただければね、もう仕事しますよ。私独りで。私には友はいませんから。」そこで私は言ったよ。「じゃあ、仕事なさいな。」そいつはカリンボ(浜本)に泣きついて、あの長衣を買ってもらったよ。ああ、それで、本当に仕事してくれてるんだよ。 Mw: ああ、あの憑依霊のことだね!
Murina(M): そいつだよ。まさに仕事人そのもの。しかもそいつ独りで、そいつだけの仕事を。 Mwainzi(Mw): そいつだけの仕事をね。ああ、ほんとに、憑依霊っていうのはキリがないね。(新しいのが)やって来るときには、ただやって来るだけ。 M: 今は、そいつは私を急き立てるんだよ。ワリ(wari137)を食べないんだ。バナナが欲しいんだと。(ムリナの家の)バナナの木はしおれて、終わってしまった。じゃあ、私はどこでバナナを手に入れろと言うんだい? Mw: はああ、私もね、ここで、私の妻だけど、ねえ、わかるだろあんた、妻とあれらの憑依霊たち、そして私は、もはや家畜の交易人(muchuzi)なんかじゃない(飢饉のおかげで家畜を売り買いする元手も無くなってしまった)。 M: さらに憑依霊ペンバ人がいる。今やそいつが私を急き立てようとしてる。 Mw: はあ、憑依霊ペンバ人と言えば、あんた自身が、それを調えるためのことをすべて知り尽くしている奴なんじゃないかい。 M: 私は(憑依霊ペンバ人のために)鍋を設置したんだが、そいつ、突然暴発して、(鍋を)溢れさせて駄目にしやがったんだよ。鍋は中にあるんだけど、香料ともども腐ってる。 Chari(C): 結局、失敗したわけよ。 Mw: 鍋は失敗だった? M: 憑依霊ドゥルマ人が、その鍋を嫌ってるんだよ。 Anzazi(A): 憑依霊ドゥルマ人が? M: 全く嫌っている。 C: そもそも、私のお腹も膨満して、全体が一つの痼りみたいなの。
Murina(M): さて、私は香料を鍋に押し込んだのさ。するとそこで鍋が失敗した。突然、ひとりでに暴発した。さて、もう私には何も言うべきことがないよ。 Mwainzi(Mw): 憑依霊ドゥルマ人が嫌がっている? M: そいつはローズウォーターの匂いが全く嫌いなんだよ。 Mw: ああ!憑依霊ドゥルマ人は自分だけの香料があるからなあ。 M: そう、そんな風に仲間(憑依霊)と齟齬が生まれるんだよな。あいつ(憑依霊ドゥルマ人)だけ別に食べさせておいて、彼の仲間(の他の憑依霊たち)が食べるのには干渉させないようにしないと。 Mw: はあ、まあ憑依霊ドゥルマ人、もし布だけが問題だったら.... M: 憑依霊ドゥルマ人をまず(彼(女)の)鍋の湯気にあたらせた。さて、彼(or彼女、新たにやってきた霊)を探して、「お前は憑依霊ドゥルマ人かい?」「いや、別人だよ。」で、そいつを手に入れることになる。 Mw: あんたはそいつを手に入れことになる。彼らも現れてくる(出てくる)ことになるよね。 M: あとは、そいつを確保するだけさ。そいつが誰なのか私はまだ知らない。そこで、私はそいつの家まで素早く運ばれる。もうありえないほどの家だ。 Mw: とても素晴らしい家。 M: わあ!私はすぐさまその家を打ち込んだ(据えた)よ。 Mw: その家を地面に打ち込んだ? M: 今は、小屋の内枠を組んでいるところ(柱を立て、それに横木を結びつけているところ)だよ。昨日は一日中その作業、おかげでまだ身体が痛い。 Mw: 床にはセメントもしっかり打つんだろうね。 M: まさにそうしたいところだよ。
Mwainzi(Mw): はあ、そう、あんたは言われてるわけだね。もしそんな風にすれば、あの長い脚をもった連中が... Murina(M): もう大奮闘154あるのみだよ。そいつのためのその家作りに大忙し。約束の日に、そいつがやって来たら、上からその家を見てもらうよ。ああ、昨日は一日中、そして今もなおさ。昨日は、ほんの少しの部分を残してしまった。(木材を縛る)縄が無くなっちゃったんだ。これから帰ったら、縄を入手して、明日には、うまくいけば、そこを終わらせることができる。全能の神の助けがあれば、そこを午前中に終わらせて、梁にする木材を切り出して、壁土詰めもしたい。 Mw: そちらの良いところは、(壁材に用いる)土が手近にあるところだね。 M: ああ!私は、土だけで壁を詰めるつもり。あなた、家作りってのは身体が疲れるよね。 Mw: ところで建てる家は、キドゥルマ・タイプ155の家? M: 仔ウシ・タイプ156だよ。 Mw: 仔ウシ・タイプかい? M: とっても長い家になるよ。
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5601 (ムァインジ氏による唱えごと、途中から)
Mwainzi(Mw): その腹を解きほどいて下さるよう欲します。その腹が、つつがなきことを、その腹が。(その腹のなかで)何かが捏ね作られ、そして消失してしまう、そんなことがないように。あなたジネ・ムァンガ(jine mwanga74)は、なし。今日、今、このンガタ(ngata56)を、両の手でお受け取りください。あなた、ジネ・ムァンガよ。あなたにはあなたの大いなる椅子そのものがある。あなたのヒリジ(hirizi58)です。それも調えられます。あなたの写真を撮り(ここではヒリジの中に封入する紙に憑依霊の絵を描くことを指す)、その後に、あなたの香料と、あなたのローズウォーターです。はあ、あなたにはピング(pingu57)を差し上げることになるでしょう。でも今は、これ、このンガタです。さて、このンガタで、この私の子供(施術上の子供2)が経験しておりますこれらの問題から、彼女が自由になり、つつがなくなりますように、サラマ、サラミーニ157。彼女がつつがなくありますように。この者はその父と母から生まれ、(癒しの)仕事も外に出しますよう。あなた、ジネ・ムァンガだと言われたのです。あなた、夜に、昼に、人を襲う者よ。さて、施術師とは一箇所に腰を据えてしまわず、眠らず、昼に仕事、夜にも仕事なものです。でもこの者に病気を注ぎ込むのは、なしです。私は、そんなのは嫌です。ンガタはこれです。 (ムァインジ、唱えごとを終え、ンガタを薬液の隣に置く) Chari(C): 私は、何をしたらいいのかすら、わからないわ。はああ。わたし、さて、どうしてなの。あの年、一昨年、病気はますます乾くみたいだったわ。流産したでしょ。もう一度妊娠したけれど、7月になって、消え去ってしまった。全く何も。その後、私はニャマウィさんのところに行って、「重荷をおろし(kuphula mizigo96)」を受けたかったの。でも彼が言うには、妊娠中の女性には「重荷下ろし」はできませんって。
5602 (薬液の差し出しに関するムァインジ氏の唱えごと)
Mwainzi(Mw): 私たちは皆様方に「お邪魔いたします(hodini158)」と申します。ムァチェ(Mwache159)の皆様方「お邪魔いたします」。カンエンガヤツリ草(mukangaga160)の皆様方「お邪魔いたします」睡蓮(matoro161)の皆様方「お邪魔いたします」...(聞き取れない)...の皆様方「お邪魔いたします」。私が入る許しを乞うのは、この女性奴隷(mujakazi fr.Swahili mjakazi)のためです。この女性奴隷は、あなた全能の神(mwenyezi mungu162)よ、この者は困難に見舞われております。あなた全能のムルング(mwenyezi mulungu)よ、もしあなたが彼女に癒しの術(urongi163)を本当にお与えになるのであれば、彼女は夜に、昼に癒しの術を行うもの。なのになぜ彼女はいつも病気なのですか、あなた全能のムルングよ?さらに癒しの術を与えられた人は、つつがなきこと(uzima164)こそ彼女のもの、どうか彼女が健康を手に入れ、仲間の人々を治療できるようしてやってください。そして彼女自身が、日々まったく仕事を見ることもなく、盛大な歌(wira12)をあたえられることもありません。ところでこのように歌を与えられるのは、あなた全能のムルングとともにです。なのにあなたは砦(ngome165)があなたの子供たちによって引っ掻き回されるにまかせておられる。いったい何事でしょう、あなた全能のムルングよ。 いっしょにおられる憑依霊アラブ人(mwarabu166)とバラワ人(mubarawa167)子神とサンバラ人(musambala168)子神とクァビ人(mukpwaphi169)子神。そしてあなたカツィンバカジ子神(katsimbakazi34)、あなたこそ偉大なる癒し手。そしてあなたムヮンガラ(mwangala170)とあなたライカ(laika33)子神とあなた憑依霊ガラ人(mugala171)子神。 ここで、私はこのようにミチョチョニ(michocho172)を差し出すことを宣言します。ちょっとしたただの薬液(kavuo6)です。そう、草木(vidzihi, diminitive of mihi)を細かく切り刻んだりしますか?そんな風に差し出される薬液があるでしょうか? さて、皆様方どうかこの身体を解きほどいてください。それが健康でありますように。腹が便秘になることも、まずなくしてください。彼女自身が歩いていて、身体に力がないと感じることも、なくしてください。この身体をどうか解きほどいてください、あなたムァムニイカ(mwamunyika173)子神、あなたキリマンジャロ子神(mwana chirimanjaro)もごいっしょに。
5603 (ムァインジ氏の唱えごと続く)
Mwainzi(Mw): あなた全能のムルング。この者に、あなたは与えられました。匠(施術師)175なのです。この者は匠なのです。さて、あなた全能のムルングよ。この者に、私は癒しの術を再び与えました。もし私がムルング子神を外に出したと言ったとすれば、(それは嘘になります)彼女は(私と同様の)仲間の施術師たちによって出されました。私はというと、その先で彼女を助けることになりました。あなた全能のムルングよ。 さて、この砦ですが、そこには多くの人々(憑依霊たち)がいます。そこには、あなたニャリ(nyari91)がいます。そしてあなた方ニャリはその数が多い。ニャリ・キピンデ(nyari chipinde176がいます。ニャリ・ヴンザヴンザ(nyari vunza vunza177)もいます。ニャリ・ムァブンバ(nyari mwabumba178)も、ニャリ・サガリロ(nyari sagariro179)も、ニャリ・キピンデもいます。オーケー。皆様方、この砦を解きほどいてください、この砦を。この者に昼に夜に癒しの術(urongi163)をお与えください。でも、二度と彼女を投げ倒す、投げ倒すのはなし。はあ、あ。なしです。なしです。この者を解きほどいてください。 あなた長老、ミスター・マサイ(bwana masai180)人もいらっしゃいます。あなた長老、デナ・ムカンベ(dena mukambe185)もいらっしゃいます。あなた方はお二人とも長老だと言われています。お仕事は、これなる砦がつつがなきようにしてください。そして外を飾り立てて198ください。しかしムコバ(mukoba1)は家の飾りではありません。飾りになっているとしたら、それは悪い状態です。なぜなら家の飾りになるということは、問題が彼女に返ってきてしまうことだからです。さて、人がやって来ても、その人はああ、彼女(施術師)は病人だと言う。人がやって来ても、彼女が病人だと言う。ムコバもどこにも行かない。そうではなく、今、皆様方どうか彼女に健康を与えてください、彼女を解きほどいてください。皆様方、世界の住人の子神たち全員で。
5604 (ムァインジの唱えごと、続く)
Mwainzi(Mw): さて、この砦には、多くの人がいます。そこにはあなたディゴの女性(muchetu wa chidigo106)、あなた狂気を煮立てる者(mujita k'oma105)、あなたシェラの女(muchetu wa shera26)。あなたシェラの女よ、そう、あなたは故郷のギリアマからやって来ました。ギリアマを出て、キノンド(Chinondo199)に行き、キノンドを出て、ゾンボ(Dzombo200)に行き、ゾンボを出て、腰を下ろす砦が見つからず、結局、「私はあちらに行きます、私の故郷ギリアマに戻ります」とおっしゃる。でもその途中で、あなたはこのチャリに出会われたのです。それからというもの、あなたはそこに腰を下ろされている。さて、多くの施術師がこの身体を治療しました。ある者はしかじかのやり方で、他の者は云々のやり方で。最後に、私が私の癒しの術をこの身体に調えにやって参りました。 あなた、マレラ子神(marera201)、今日この日に解きほどいて下さるよう願います、あなたディゴの女性よ202。あなた方のためのちょっとした薬液がそれです。私はあなた方を、あなた方の母である全能のムルングとご一緒に混ぜ合わせました。どうか皆様方、ご一緒にお召し上がり下さい。今や、耕作の季節が始まっています。今は耕作の季節です。あなたディゴの女性よ、あなたのやることと言えば、怠惰です。マンゴー木の場所を去り、イチジクの木々に、そしてカシューナッツの木に行く。あなたときたら、水の深みを探しては、水の中に腰を下ろし、水浴びし、そこから出ようともしない。あなたがお持ちになっているのは怠惰だけです。ところで、私はあなたのためにあらゆることを調えて、彼女に与えました。仕事のための子供(瓢箪子供133のこと)も彼女に与えました。そして癒しの仕事に関して、漂ってくる匂い(世間の評判)を嗅ぎますと、仕事は実にちゃんとされていると。じゃあ、後は彼女自身に健康を与えることだけじゃないですか。今、彼女に健康を与えて下さい、あなたシェラの女よ、あなたディゴの女性よ。彼女に健康を与え、その仕事をさせ、畑に着くと、休む気すら起こさないように。
5605 (ムァインジの唱えごと、続く)
Mwainzi(Mw): これはちょっとした薬液(kavuo vuo)です。(彼女の)夫(dzumbe203)が言ったことには「私が私の家を仕上げたら、彼女に歌(wira12)を与えよう。歌を与えて、彼女が今度の小雨季(vuri)にしっかり耕作できるように。」だから、この身体を解きほどいてください、そして歌が開催されるとき、この歌がこのちょっとした薬液から出たものだと言えますように。そう、彼女が健康で、歌を与えられますように。そして彼女は言われますように。「さて、この歌を私は差し出しました、あなたが手鍬を握って、耕作しますように」と。妻とは、薪採りに行き、薪を伐って、ここに置くもの、畑に行って、マチェーテ(mundu204)を握って、茂みをすっかり切り払うもの。あなた方も手鍬を与えられ、耕してください。そして収穫が得られたら、あなた方は歌を与えられます。 人々は、体力(余裕の無さ)のせいで、うまく行かないものです。でもあなた方、いつもどおりの世界の住人子神の皆さまは、そこにはおられない。農耕の季節が到来すれば、歌は与えられません。(人々は)手鍬を握って、耕しに行く。トウモロコシがしっかり実れば、ああ私のトウモロコシは実った。人が収穫するところまで行けば、あなたは歌を与えられます。さあ、あなたは、仲間を治療することに専念する。これこそあるべき姿。なのに、家のなかでは、物事はまったくうまく行かないのです、あなた方、私の友よ。 さて、今日この日、どうか皆さまおだやかに。私はあなた方の父として、あなた方にお話いたします。私はあなた方が耳をお傾けになり、手鍬を握って、耕されるよう望みます。そして怠惰さを追い求めたりなさらぬよう。まずは、身体が健康でありますように。そして仕事をしっかりしますように。これこそ私が望んでいることです、あなた方世界の住人子神の皆様。
5606 (ムァインジの唱えごと、続く)
Mwainzi(Mw): この砦には多くの人々がおります。イスラム系の憑依霊たち(mashetani205)もこのように。あなたロハニ子神206もいます、あなたバルーチ人子神(mwana bulushi209)もいます、あなたスディアニ導師(sudiani50)も、クルアニ導師(kuruwani210)、あなたペンバの女(muchetu wa chipemba196)もいます。 ジネ・ムァンガ(jine mwanga74)、あなたジネ・ムァンガ、今、あなたはこの者を夜に昼に襲う(unaanjira211)、あなたジネ・ムァンガよ。私はこの者に、今、彼女の仕事を与え、昼に(患者の家に向かい)出歩き、夜に出歩き、でも、あなたが戻ってきてこの者を再び襲うこと無きよう望みます、あなたジネ・ムァンガよ。私は、今日、今、あなたにあなたのンガタ(ngata56)をお与えします。もし本当にあなたの仕業なのでしたら、腹が便秘で膨れ上がることから腹が解放されますように、この腹が便秘で膨れることから腹が今日にも解放されますように。そして身体は健康で、癒しの術の夢に打たれますように。でも夢の中にあれらの碌でもない連中がやって来ることは、なし。彼らはやって来て、あとに病気を残していくのです。身体のなかでそうしたことをやらかす連中が。今日この日、私はンガタを差し出す、それだけです。もし本当に、あなたジネ・ムァンガの仕業なら、あなたがそうしたことをやらかしているのなら、今、私はあなたが、私が差し出すこのンガタを両の手で受け取ることを欲します。彼女が仕事をし、さらには、事態がほんとうに良好になったら、私は、腰を下ろすためのあなたの椅子を、あなたに調えるためにやってまいります。さ、あなたも仕事をなさって下さい。昼を飾り、夜を飾りなさい。癒し手は眠気を感じません。誰それさんとその名を呼ばれると、もう目を覚ましていて、声を集めて大急ぎで返事します。なんと妖術使いがあなたを捕らえにやって来ていたのです212。(冗談) Chari(C): Muk....213のこと。
Mwainzi(Mw): そう。(Muk....も)思い知るがいいよ、自分が本当に困難に見舞われているとね。 (夢の話からシームレスに唱えごとに移行) ああ、私の場合も、なんてこと!夜に、問題が起こるんです。小屋の戸が開かれて、誰かがキティティ(chititi214)を握って、占いを打ち始める。そして言います。「朝になったら、お出でなさいな。私は他の人間たちを捕らえたことはありません。お前さんだけです。」夜が明けたら、そいつはそいつのムコバ(複数1)をもって、たしかに出てきます。そいつは治療に出かけるのです。で病人は治る。それこそ私が欲していることです。でも例の悪い悪い夢ばかり見るという問題は、あなたジネ・ムァンガのせいだと言われています。私は今日、この日、あなたにあなたのンガタをあたえます。今日以降は、こうした問題から解放されますように。どうか、おだやかに。ンガタはこれです。解きほどいてください、あなたジネ・ムァンガよ。今、もう争いはございません。私はつつがなきことを望みます。この腹が便秘で膨れ上がることも、そう、解き放て。どうか解きほどいてください。 (チャリに) みんなはここ首筋にンガタを結ぶね。 Chari(C): 思い出したわ、マブィンディさんのこと。奥さんが自分の夫にンガタを結びに行ったんだって。大急ぎで出ていくと、言うことには、ああ、お前さん彼をキツく結びすぎてるよ。 Mw: ああ、私は置いておくだけって感じ。ご自分たちで上手に結んで下さいな。
Mwainzi(Mw): 今日この日に私はお話いたします。私はあなた方の父です。というのも、この者(Chari)はここに「重荷を下ろし」に参りました。彼女の母はあの者(Anzazi)です。彼女の父はこれです。どうか解きほどきください。あなた、カシディの人(mwakasidi132)、あなたカルメンガラ子神(mwana kalumengala131)、内の問題もあなたは知っている、外の問題もあなたは知っている。さて、あなたカルメンガラ子神、そもそもあなたは癒しの術はすでに与えられたのに、あなたは相変わらず争いを持っていると言われます。どんな問題を抱えておられるのか、私にはわかりません。もしかしてヴィトゥク(vituku215)でしょうか、もうヴィトゥクはあるのではないですか? Murina(M): ヴィトゥクもまだ無いし、ムロイ(muroi217)も無い。 Mw: ムロイがないって?なに?(もっている憑依霊の)仕事のどれも、彼女、まだムロイを手に入れてないって? M: まだなんだよ。 Mw: おやまあ!すると、あのムルングすら、もしそういうことなら、まだすべてが終わったわけじゃないんだね。 Chari(C): まだなの。 Mw: なんとそういうことなんだ。 (唱えごと再開) さて、私はあなたにお話いたします。あなたカルメンガラ子神、あなたカガイ(kagayi218)、この者を夜に昼に困窮させないでください。彼女は食事をすることも、もはや嫌っています。そして腹が便秘で膨満しているのです。さて、もしあなたカルメンガラ子神のせいならば。それとも、あなたはまだあなたを飾り立てるものに満足なさっていない。でもあの太陽のおかげで、この辺り一帯は二度と収穫が得られないのです。また収穫が得られません。あなたカルメンガラ子神、あなたカシディの人のことを、人々が嫌っているんだ、なんておっしゃらないでください。この身体を解きほどいていただけませんか?腹が、便秘で膨満することのないように。食べ物を見て、いかなる食用野草であれ食べ、食べたら腹は健康であれ。あなたカガイ、あなたの妻ニョエ(nyoe219)もご一緒に。どうか場所を見つけて、そこで大人しくしていて下さい。
5609 (ムァインジ氏の唱えごと、続く)
Mwainzi(Mw): もしかしてあなたはキトゥク(chituku215)の人ですか。あなたのキトゥクを手に入れられるでしょう。そう、私は今この身体を解きほどいていただきたいのですよ、あなたカルメンガラ子神よ。もしや、あなたは男性ですか。それならあなたは木でできたあなたの子供(mwanawe wa kadzihi220)を手に入れることになるでしょう。なぜなら、男性の憑依霊は、木の棒のその子供を調えてもらうことができるからです。そう、まずはこの身体を十分に解きほどくこと。そうすればあなたは調えてもらえるでしょう、調えてもらえるでしょう。でも、現在は、この地はひどい状態です、ひどい状態です。私が申しましたように、ここは凶作、そして私の子供たちも同じく収穫を得ていません。今はどうかお静まり下さい、皆様方、友よ。身体を解きほどいて下さい、身体を解きほどいて下さい、あなた憑依霊ドゥルマ人子神よ。もしンゴマでしたら、そのうちに開催いたします、そして他の残ったご要望も、すべてお応えしつくします。もし争いが多く、もしかしてあなた全能のムルング、あなたもあなたのムロイ(muroi217)を欲しておられるのかもしれません。もしそう欲しておられるのなら、あなたにもお与えします。あなたがお握りになると、あなたの子供たちもいっしょに握ることになります。さらに誰それのムロイ、誰それのムロイといった形で、それ以上の問題が起きることは、もうありません。なぜならすべての飾り立てはそこに集約しているからです。 Chari(C): そもそもムルングはそれをずっと以前から欲しがっていたもの。 Mw: わあ!そう、ムルングも(癒しの術)を続けて、その究極に至って、ムロイを求めて悩ませることがあるからです。皆さま、どうかおだやかに。争い合う者は二人、三人目が来ると、その人は仲裁者となります。今日、私は皆様方の仲裁者です。 Murina(M): 屋敷はまだできたばかり。屋敷はまだできたばかり。まだ完成していません。 Mw: あなたの薬液はございません、憑依霊ドゥルマ人子神よ。でもそこはまだ建設を始めたばかりの敷地なのです。今、あなたの仲間たちが彼らのちょっとした薬液を手に入れたとしても、それを邪魔しないで下さい。彼らにしっかりと浴びさせて下さい。この身体を解きほどいて下さい、あなた憑依霊ドゥルマ人子神よ。
施術師たちの会話についていくのはかなり難しい。それぞれのパートについて必要な説明を行いたい。
ムズカの怖さが話題になっているが、前提となっているのは、ムズカはさまざまな憑依霊の棲み処であり(ムズカの主がどの憑依霊であるかは意見がさまざまである)、そこに用もないのに入り込むのはとても危ないという認識である。しかしムズカに(妖術使いが置いていった犠牲者の「汚れ(nongo46)」を取り戻したり、ライカやシェラが患者から奪った「力(体力・生命力)221」を回収したり、あるいはムズカで行った祈願(上のような施術にも当然伴う)の成就のお礼(支払いの供犠)を行ったりと、そこに入らざるをえないことも多い。
でもそこは危ない場所なのだというのがここでの話題。水の中にいったん潜らないと奥に行けない最初の話題になっているムズカは当時チャリたちが住んでいた「ヒツジの場所」村の「的中したでしょうに」地区にあるムズカ。その奥の天井に蜂が群れていたと言う話。施術上の子供たちはびっくりして逃げ出す。でも最後に残っていた「子供」の状態がおかしい。顔面蒼白で頭が痙攣している。屋敷に帰って、ピング(pingu57)を作ってつけてやったら治ったと。 アンザジさんが、そんな怖いところにいくには「椅子(複数)」を持っていかないと、と。これは文字通りの椅子ではなく(訳文のなかでわかるようにしてあるが)憑依霊が腰を下ろすための椅子であり、いわゆるンガタ、ピング、パンデなどの護符55を意味している。それらの椅子がないと、憑依霊はそのまま犠牲者の身体に腰を下ろしてしまうので、犠牲者は大きな苦痛を味わうことになる。 ムリナは自分は「椅子」なしでも大丈夫といい、ムズカの主とすでに何度か交渉経験があり、顔見知り(?)だからと豪語する。
ここで別のムズカの話題になる。最近その上で草木を採集することが増えたキンバララという名のムズカ。そこもとっても怖い場所。近所の娘が水汲みに行って、そこにたくさん人がいたと帰って報告した。チャリはこの娘はいずれ施術師になるだろうと言う。というのは彼女がそこで見たのは人間じゃなくて、そこに棲まう憑依霊たちだったというオチ。一昨日ムリナはその娘にそこで草木をとってくるよう頼み、自分もそこに向かう。ムリナは例によって「椅子」の装着を忘れていた。するとムズカに着くなり激しい耳鳴り、そして目が突然くらんで見えなくなる。でも、ムリナは我慢して草木を採ろうとするのだが、頭皮がピリピリし、自分が逆に草木に引っ張り込まれそうになる。それを無理やり折り採り、這々の体で帰宅。手にはわずか一本の枝だけを握って。でも二度とそこに戻りたくはなかった。それ以来、一週間というもの毎晩悪夢にうなされる。ムリナを蔑む人々の列が毎晩やってきては、彼を指さして「ほら、泥棒だ」と言っては立ち去り、すぐに別の人々が来て同じことを言って去っていく。全員、小さな女性(キツィンバカジ34は小人であることを思い出そう)。
チャリの結論。そこに草木採りに行くなら、必ず護符(pingu)をもっていかないとね。ムァインジさんも同意見。
ここに集った施術師たちの共通理解では問題になっているムズカ(muzuka)は、なんらかの憑依霊の棲み処である。が、たとえば調査の初期の「青い芯のトウモロコシ」のペレの屋敷では、ムズカはまず第一には天空の至高神、雨を降らせるムルングを祈願する場所だった。1983年7月26日、ブッシュの奥深くの「カイングのムズカ(Muzuka wa Kaingu)」を見せてもらった。
(from fieldnote of 1983/7/26 アホみたいに恥ずかしいドゥルマ語と英語で書いているので日本語に直します)
雨がもしこない場合、雨をムズカで祈願する。ムルングに。 「青い芯のトウモロコシ」の人々は、カイングと呼ばれるムズカで歌を歌う。 "Chitsonzo mvula ndzo, chitsonzo mvula ndzo."和訳1 そしてムズカで黒い雌鶏を屠る
カイングのムズカはニャワ(マラウ氏らの曽祖父)によって設置されたが、もともとの目的はマサイの襲撃に対する防衛だった。マサイがやって来るたびに、人々はカイングで祈願した。すると大雨がふり、それがマサイが彼らの土地に侵入することを妨げた。 今日では人々は主として雨を祈願する。および自分たちの個人的な問題を。雨が来ないと、人々はカイングに行って、黒い鶏を屠り祈る。昨年までは雨が降らず、人々は飢饉に苦しんだ。それは妖術使いがブッシュの中に人骨(薬32を詰めた頭蓋骨)を密かに隠し置いていたためで、昨年施術師カトトがそれを発見して除去した。雨は降らなかったが、今年はカイングに祈願し、このように私たちは豊作を得ている。 もし祈願にも関わらず雨が降らない場合、人々は何が問題なのかを知るために占いに赴く。
[和訳1]: 雨よ来い、雨よ来い(chitsonzo は祝福や豊穣性など、なにかを呼び、乞い願う際に発する言葉。その言葉自体に何か意味があるわけではない。動詞とは言えないが、名詞でもないような。それとも「願い。雨よ来い。願い。雨よ来い。」の方がより正確な訳になるのだろうか。
カイングのムズカ。人々の祈願の痕跡が見られる。
この3年後にキナンゴ周辺で調査をした折りには、人々はムズカでの降雨祈願は過去の話だと語った。プーマ・ロケーション(「青い芯のトウモロコシ」もそこにある)みたいな田舎ではまだやってるかもしれないけど、と。
地区評議員をつとめていたC氏に降雨祈願の話を聞くと、すでに機能を停止して久しいドゥルマのカヤ222での儀礼の話になった。
7人の人々がカヤに入る.4人の女性と3人の呪医である.羊が屠殺され,山羊が屠殺され,最後に牛が屠殺される.一羽の鶏がカヤの森の中に残される.それは夕方,これらの準備を整えたカヤの中心で行なわれる.
小さな小屋が立てられ,小屋の屋根には3切れの布が結びつけられる.灰で作った団子(mukahe wa ivu)が用意される.羊の頭が地中に埋められ,鍋がその上におかれる.7種の穀物の種がそなえられる.
このカヤに埋葬された最初の人物はムギンド223の女性であったと信じられている.彼女には全く乳房がなかった.
この儀礼をとり行なう呪医たちは,いずれも黒い布を身につけ,頭にはターバンを巻いている.
歯の生えていない赤ん坊はカヤの中に入ることができない.またカヤの周辺では,石鹸を用いて水浴びをしてはならない.ムコネ225を用いるか,水だけで行なう.また金属製のものを身につけることも禁止されている. (1986/12/29のフィールドノートより)
「ジャコウネコの池」近辺にはチャムーニュ(Chamunyu)と呼ばれるムズカがあり、そこはかつては水がけっして乾くことのない川で、降雨祈願の後は水が満ち溢れたものだ。今日では降雨祈願はもはや行われず、水もすっかり乾ききってしまっているという(1989/11/3のフィールドノートより)。
もうすっかり降雨祈願は廃れてしまったのか、と思っていたが、1991の2年続きの飢饉に際して、人々は再び降雨祈願をやったようだ。ただ、やり方が間違っていたので雨は降らなかったと。 ニュンド老と妻ムパさん、降雨祈願の正しいやり方が守られていないことを怒る
さて、降雨祈願のためのムズカと、憑依霊の棲み処とされるムズカは同一なのだろうか。2番目に話題になるキンバララのムズカは、背の低い小人たちがいっぱい出てくる(夢にも)ということで、神ムルングの子供たちで、ある昔話によると最初は人間に代わって農作業をやってくれていたというキツィンバカジ34が、ムズカの主だったとすると、ムルングに対する仲介者として降雨祈願の対象になってもおかしくはないかもしれない。しかし最初の怖いムズカの主は、イスラム系に通じているムリナと顔見知りのイスラム系の憑依霊(ムリナによるとムギシ(mugisi226)だとのこと)、降雨祈願の相手としてはおかしい。イスラム系の霊たちはムルングを筆頭とする内陸系の霊たちの施術を好まないとされている。
しかし過去の降雨祈願について語る人は、皆、地域の長老たちが地域のムズカをすべて回って降雨祈願をしたと語っており、そもそも地域にムズカがそんなにたくさんあるわけでもないので、どう考えてもそこには、ムリナたちが言うところのイスラム系の主のムズカも含まれていると考えるしかない。イスラム系の主たちは、ローズウォーターを振りまくことを要求するのに対し、ムルングはローズウォーターや石鹸の匂いを嫌い、ヒマ油を振りまくことを要求するので、どう考えても相容れないのだが。
まあ、ドゥルマに体系化された神学があるわけでもなく、異なるプラクティスの間に整合性を求めすぎるのも意味がないかもしれないが、ムズカをイスラム系とムルング系(土着系・あるいは内陸系)に二分することにもあまり意味はないのかもしれない。どちら系であるにしろ、ムズカ自体は人間世界と霊たちの異世界をつなぐゲートのようなもので、そのときどきの必要に応じて、異世界のどことでも接続できるようになっているのかも、みたいに考えて誤魔化しておく。
実を言うと、ムズカの最も頻繁な利用者は、妖術使いたち(単に彼らの犠牲者だと思っている人がそう考えているだけと思うが)と、その妖術使いによって危害を受けていると思っている人々である。後者は実際にムズカを訪れる必要に迫られている。妖術使いは、「汚れの妖術(utsai wa nongo)」と呼ばれる妖術で他人の幸福を台無しにするのが大好きだという。犠牲者の持ち物や衣服の切れ端、毛髪などをこっそり盗んで、それをムズカに置き、犠牲者の不幸を祈願するのである。これを「汚れをとっていく(kuwala nongo)229」と呼ぶ。特に秘密の呪文の知識も、薬の知識も必要ないので、「100万人のための妖術」と呼びたいくらいである。その解除のためには妖術の施術師に頼んで「汚れを戻し(kuudza nongo)」てもらわねばならない。犠牲者はまず手近なムズカに行って、鶏などを屠って自分の「つつがなさ」を祈願し、ムズカの塵芥や落ち葉などを持って帰る。占いの指示に従って、他人の墓場の土や、市場の塵芥なども持って帰る必要があるかもしれない。施術師はそれらを用いて薬液を作り、犠牲者たちの身体を洗ってやることによって、奪われた汚れを戻すのである。
ムズカで草木を採集しようとして大変な経験をもった話から、話は夢のなかに出てくる憑依霊のトピックにいつの間にか移っていく。夢の中に憑依霊(その正体についてムリナは何も語らない)がやってきて、ムリナに多くの草木を教えてくれるのだが、それらはすべてムリナが知っているものばかりなので、意味がないと言わんばかり。ムリナは実は、イスラム系の霊を筆頭に、多くの憑依霊をもっているのだが、まだ「外に出され」ていない。でも施術のやり方、草木などについては、今さら教えてもらわなくても、すでに知っていると。ちょっと傲慢なムリナさんである。
それに対して、チャリもアンザジもたとえすでに知っていても、教えてもらったのなら、素直にその場で折り採りなさいとアドヴァイス。癒しの術は憑依霊の力を借りて初めて可能になる。単なる知識が可能にするものではない。だから本当に癒しの術が欲しいのなら、憑依霊から教えられたとおりにやれば良いのだと。アンザジも、たとえ草木を知識として全部知っていたとしても、癒しの術そのものが目的なら、憑依霊に忠実であることがまず大切と説く。
続いてムリナは特定の憑依霊(チャリの持ち霊であるジンジャ導師=世界導師)が付きっきりで(夢のなかで)ムリナに何度もクズザをさせたと言う。でもジンジャが彼に教えてくれた草木も、すでに自分が知っているものばかりだったと。
ここでムァインジ氏が、でもあなたが正式に癒しの術を外に出してもらうときには、まさにあなたが知っているその同じ草木をまた教えてもらうことになるんだよ、という。ムリナ、まるでそれには意味がないとばかりの言い方。かなり論争が興味深いフェーズに突入していく。 もし私にもっと流暢にドゥルマ語を駆使する力が当時あったなら、「外に出す」ンゴマの際にこれから施術師になろうとする者が、憑依霊に導かれて正しい草木に到達しそれを折り採ることは、単なる知識の有無を問題にしているのではなく、その手続のなかでその草木を治療のために駆使し、その草木に治療の力を発揮させる権利を、施術上の父母と憑依霊から正式に授与されることなんだよ、と議論をまとめてあげたかったところだ。(あってますか?)
アンザジさんがかなり本質に迫っている。施術に用いる草木を「知識」として知っていても、あなたはその草木で病人を治療することはできないと。それに対して、チャリさんが夫を弁護する格好で、たしかに他人は治療できないけど、自分自身の治療には使えるんじゃないかと指摘。それに対して居合わせた、非施術師の素人のおばさんが擁護発言。この一大論争は結論を見ないまま、飢饉に対する愚痴でなんとなく幕切れとなった。
でも、施術師たちの論争、とっても面白い!
次に彼らの話題は、憑依霊がいかに厄介な存在かという点に移る。わかりやすいのが、宿主の食べ物の好みを変えてしまうこと。今年になってチャリのところにやってきた憑依霊(これについては後にその経緯が話題になる)が、ドゥルマの主食であるトウモロコシの練粥ワリ(wari137)を食べるのを拒むのだ。そのせいで(?)宿主に血まで吐かせる。ここでは述べられていないが、いろいろ交渉した結果、現在のところは木曜日だけワリを食べないことで同意が成立しているらしい。
でもアンザジさんにも同じような食に対する好みの変化があったらしい。 この年(1992)の飢饉のせいでトウモロコシの粉の各屋敷の在庫はとうに底をついて、商店でも手に入れるのが難しくなっている。大人数の屋敷では食卓に出たワリは取り合い状態になる。でもアンザジさんはチャパティを一枚食べてそれで満足している。彼女についているムミアニの白人のせいだ。おまけにこの白人は紙巻きタバコを要求する。というわけで常に紙巻きタバコを用意してなくてはならない。
チャリもときどき突然紙巻きタバコが吸いたくなる。驚いたことに紙巻きタバコをおいしいと感じるのだ。これもムミアニの白人のせい。そう言えば「青い芯のトウモロコシ」の故マラウさんも白人になると(ケヤの白人だったが)紙巻きタバコの銘柄にこだわっていた。
しかしチャリがワリが食べられなくなっているのは、白人のせいではなく、今年になってやってきた憑依霊セゲジュ人141のせい。
こんな風に憑依霊のせいで食の好みが変化してしまうことで盛り上がっているなか、ムァインジさんが、最近憑依霊の訪問を受け、そこで必要な服装について細かく指示されたことを打ち明ける。その霊はマルワ・ワ・ブドゥと名乗った。ムァインジさんは明言していないが、明らかに夢の話だ。私が「憑依霊の訪問」という表現を使っているので、どうせ夢だろうと読者にはわかるだろうが、実際の語りでは現実の語りとほとんどシームレスに夢の語りに移行するので、聞いていて若干の混乱を感じざるを得ない。
その客は天井の梁の上に腰をかけていた。この辺りで、登場人物がただの人ではなく憑依霊だと気づかなければならない。さらにこの前後で文章の主語の人称が、少し変になっている。これも夢語りの特徴。さて訪問者はツギハギだらけの服を着て、手には本をもっている。客人用の背もたれのある椅子を勧めようとすると、そいつは拒み、別の小屋にある3本脚の椅子になら腰をおろそうという。さて出された椅子に腰を下ろすと、その霊は自分は(ドゥルマ語で「貧乏人」を意味する)ムガイ(mugayi149)だと告げる。ムァインジ氏は本を受け取ってそれをきちんと小屋の中に置き、さて外に出て楽しく会話しようとしたところで、はっと目が覚めたという。 今や、ムァインジ氏はムガイが手本を見せてくれた服が欲しくて仕方がない。ツギハギだらけのその服について寸法とか白いラインの装飾とか、やたらと正確な細部を覚えている。その服を手に入れれば、彼を攻撃しようとしている妖術使いが誰かを知ることができるようになる。ムァインジ氏も、ムリナ夫婦同様、自分たちが正体不明の妖術使いの攻撃にさらされていることに悩んでいた。
ムァインジさんがさらに話を続けようとしていたところ、ムリナは同様に彼らのもとを今年尋ねてきた新しい憑依霊の話(実はムズカの話の直前にムリナはその話をしかかっていた)を再び持ち出す。
新しくやってきた客人が他の連中から追い出されようとしている。マットレスで寝ていたのを草むらで寝るようにと。ムリナはカヤンバを演奏した。するとその客人は蝿追いハタキを握ってムリナのいる小屋の方にやってくる。ムリナは子供(施術上の)たちを呼んで盛大にカヤンバを打つ。客人は言う「ここにいる他の霊たちも、ろくに仕事をせず、ただダラダラしているだけだ。私は独りで仕事をするためにやってきた。布さえいただければ」。 これが、この年以降、世界導師、憑依霊ドゥルマ人と並んでチャリさんの主要憑依霊となる憑依霊セゲジュ人の登場である。
この年の8月末、やってきた私が頼まれるままにチャリたちとキナンゴの仕立て職人に依頼して作ってもらった長衣は、まさにこのセゲジュ人が要求していたものだったという訳。
キナンゴの職人に夢で指示されたとおりに注文したもの。職人はかなり苦労したようだが、なかなか格好いい。これ以降しばらく、どこへ行くにもこれを着ていた。以下はアンザジさんとのツーショット

こういう経緯で登場したのに、今や、チャリがトウモロコシのワリを食べることを禁じ始めたり、立派なイスラム風の家を要求し始めたりなど、その厄介な性格も全開になってきた。
そしてムリナの話題は、すでに以前から「外に出る」ことを迫っていた憑依霊ペンバ人と、ずいぶん以前からチャリの主要な霊の一つであった憑依霊ドゥルマ人との葛藤に移る。ドゥルマ人はずいぶん以前に「外に出され」て、チャリの仕事の重要な担い手になっているのだが、どうもイスラム系の霊たちを嫌っており、先日もペンバ人のために設置した鍋を「暴発」(ク・ウドゥラナ(ku-udulana)は「突き破る、押し破る」を意味する動詞 ku-udulaの相互形)させた、要は突然噴きこぼれさせたということなのだが、それはどうやら、イスラム系の霊の施術を嫌い、他人の鍋の前にまずは自分の鍋を独りで楽しませて欲しいという利己的なドゥルマ人の要求をかなえなかったかららしい。 さらに詳しくはわからないが、別の正体不明な霊も現れたがっている。というわけで、まずドゥルマ人に独りでその独特の「鍋」を楽しませてやった後に、その霊に対しても対処したい。どうやらムリナは夢のなかでその新しい霊の家に連れて行かれたようだ、すばらしい家だった。というわけでその霊のための家をさっそく建て始めた。 ムリナさん、キリがないですよ、そんなことやってたら。
はっきり口には出していないが、ムァインジさんもちょっと呆れた様子。
というわけで、たくさんの霊をもっている施術師のところには、次から次へと新しい憑依霊がやって来て、新たな要望を突きつけてくるようだ。おまけにその要望は、突きつけられた方にとっても、なんとなく魅力的、素敵な服(それを身につけるとその新しい霊のもっている能力--例えば妖術使いの正体を知る、みたいな--も手に入れられる、とか魅力的な家、そこでは癒しの術がますます繁栄するみたいな。新しい霊の到来は、厄介なのだが、施術師にとってもちょっと惹かれるものがあるのだ。でも大変だ。
と、雑談ばかりしているようだが、この日の目的はチャリの病気の治療に関係していた。まずチャリの血を吸い続けている、妖術使いが送り込んだジネ・ムヮンガを、すこし大人しくさせるための椅子(護符)の差し出しである。その唱えごとだが、基本はどの施術師のも似ているようでもあり、独自でもある。ムァインジさんの唱えごとの場合、途中でなんの断りもなく冗談に移行し、「な、なにを言ってんだ」とびっくりしていると、そのまま何もなかったかのように普通の唱えごとに戻るといったことをする。 こんなのもありなのだ。普段、真面目一筋のチャリやムリナの唱えごとばかり聞いているのでちょっとびっくり。
そして最後は、チャリの持ち霊のなかでも、実に扱いの難しい憑依霊ドゥルマ人だけに対しての個別の唱えごと。基本は、他の霊たちが治療を受けてもそれを妬んだり、邪魔したりしないで下さいというお願いなのだが、ムァインジさんは、これだけ長く憑依霊ドゥルマ人やムルングなどの大物霊をもっていると当然、それらに差し出されていてもおかしくないムロイ(muroi217)がまだであることを知り、それを差し出す約束をすることで、唱えごとを締めくくっている。 ムリナさん、チャリさん、まだまだやること多いみたいですよ!
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tsovyaの別名とされる「内陸部のスディアニ」の絵 ↩
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まだ上部の枠組みが未完成。下部の支柱の様子がよく分かる
草葺きを取り替える作業中で屋根の骨組みの様子がよく見える。これは家の短辺の側からの写真。最後に、骨組みに対して、水辺に生えるカンエンガヤツリ草の束をぎっしりと詰め結んでいく。
キドゥルマ・タイプの家の全体像。その裏手での記念撮影。意外と大きいことがわかるだろう ↩
壁面は木材を組んだものに、水で捏ねた土を打ったもの。屋根材は、草葺き(カンエンガヤツリ草)、ココヤシの葉の屋根材(makuti)、トタン板など。 ↩
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