別項でも述べた通り、「ジャコウネコの池」でのチャリ夫婦と近隣との緊張は、二人による隣人に対する偽装された妖術告発によって頂点を迎えた。その後、私はフィールドを離れたが、半年後に再び訪れたときにはすべてが終わっていた。私が危惧していた通り、夫婦はこの地域から出ていかざるを得なくなり、チャリを信奉する「施術上の子供」たちの誘いで、彼らの住む地域「的中しただろうに」村にゲストとして屋敷を構えていた。フィールド入りした8月23日にそのことを聞いた私は、滞在に必要な家具や食料を調達し調査の体制が整った8月26日に、教えられた彼らの新しい屋敷を訪問することにした。そこで早速、彼らの施術に同行することに。それはライカ1のキザ(chiza48)を据えることがメインの施術だった。私の調査は毎回こんな風に唐突に始まる。この年の調査は抗妖術施術師バラバラによる妖術師狩りが近隣で猛威を振るった年で、私の調査もやがてそちらに集中することになった。
(Aug. 26(wed), 1992 kpwishaの日誌より)80
朝、ムリナたちの移転先の屋敷に挨拶に行こうと道を走っていると81、途中で本人たちがやってくるのに出会う。今から「そこにありますよ」村でuganga45をしに行くと言うので、そのまま同行することに。途中でチャリから新しいnyama82がやってきて悩ませている、marinda87,chiremba88,chirahu89を要求しているとの話。このnyamaこそ例のchiryomo90を喋るnyamaだという。muganda91かと問うとMusegeju96だとのこと。ムリナによるとmugandaとmusegejuは仲間なのである。占いを打つのはギリアマのpini92で、nindahendadzeの歌は実はpiniの持ち歌。 「そこにありますよ」村のBarochaの屋敷で彼の妻Mwakaのためにライカのchiza cha konze, chiza cha nyumbani48,ムドゥルマのvuo50とmihaso9を処方する。 そうそう、途中Ka...の結婚式で会ったMw...の屋敷に寄る。足が不自由。何でも今年ついに、あのgari ya gandini97が横転し、多くの死者やけが人を出した。Mw...も運悪くそれに乗っていて重傷を負ったのだという。未だに歩けない。 Barochaの屋敷にはチャリと二人で行く。ムリナはそのまま私の自転車でGandini98へmarashi99を買いに走る。 uganga午後2時半には終了し、ムリナの来るのを待つ。めたくそに腹がすいていたので、4時ごろ出されたwari100とmaphwa101をがっつく。 「そこにありますよ」村は以前(1983)カタナと一緒に歩いて通ったときにはボロ小屋のhoteli102が一軒あっただけだが、今はmaduka1033もありhoteliもある。ちょっとした町になっている。そこでコーヒーを飲み、タバコを買って帰宅。 「そこにありますよ」村でもバラバラ104の話でもちきりで、昨日バラバラにつかまったム...がmutsai105の嫌疑を否定したため、今朝キラボに行き、捕らえられてしまったということで、皆沸いている。
キザ(chiza)という特別な名前で呼ばれてはいるが、要するにライカの草木(葉)を用いた薬液(vuo)である。それと煎じる草木(mihi ya kujita)の処方。憑依霊治療の基本の第一歩とも言える。施術に際してどの草木を用いるかは、治療の対象となる憑依霊ごとに違いがある。今回は、必要な草木はすでにチャリたちは用意しており、いつものように行く道すがら採取する形をとらなかったので、用いる草木の名前を確認して、草木リストをアプデートする機会はなかった。 ライカに対する施術の後、例によって、田舎者のくせにいつも特別扱いを要求する憑依霊ドゥルマ人に対する説得の唱えごと。
施術の途中で来客があり、その来客が施術を見たいと言って腰を下ろし、いろいろ雑談に興じたため、全体に緩い雰囲気が支配した。
雑談は雑談で、思いがけない話題が展開したりして興味深いのだが、施術の本筋とはずれるのでどこまで紹介すべきか、迷うところ。
患者: Ba...の妻Mwaka 彼女は、チャリの唱えごとのなかでも「この子供」と言及されているように、「ジャコウネコの池」時代からのチャリの「施術上の子供(mwana wa chiganga106)」の一人。長期に渡って身体の不調に苦しんでいる。
施術師: Chari wa Malau
(from fieldnote of Aug. 26(wed), 1992)115 Ya...のBa...の屋敷で彼の妻Mwakaのためにライカのchiza cha konze, chiza cha nyumbani, ムドゥルマのvuoとmihasoを処方する
Mwaka117
p'ep'o83 mwakani118 → vurini119 患者はvuriniの方位を向いて座る ndiko aendako nyama(nyama82が向う方向)
Vuri120
p'ep'o vurini → mwakani 患者はmwakaniの方向を向いて座る
(Sept.30, 1991のフィールド・ノートより)
njira ya mutu mubaya(悪い者の通り道) カタナによると、p'ep'oがvuriniからmwakaniへ移動する際の通り道に当たる場所で、そこに屋敷を建てると病気や不幸が続く。特定のp'ep'oではない。しかし強力なp'ep'o。例えばtunusi58(kutsunuka121する)としか知らない。 私がすべてのnyamaはvuriniから来てmwakaniへ行き、また戻るのだという話をすると、カタナは初耳だと言う。kayambaでmuweleがvuriniの方向を向いて座るのはそのためだと言うと、カタナはさっそくMemulongoを捕まえて質問。彼女はなぜmuwele122がvuriniを向いて座るのか理由は聞いたことがない。p'ep'oがやってくる方向だという話をすると、そういえばvuriの季節にはなぜかvitswa123などが多い。Mwakaには収まる、などという。

屋外に設置された「外のキザ(chiza cha konze)」舞台装置。灰で描かれた「道」に導かれてライカやキツィンバカジが北の方角からやって来て、キザの薬液を浴び、その後、再び北に向かって帰っていく。
makokoteri125 for mihaso9, ubani129で燻しつつ 持参した草木(煎じる草木)に対する唱えごと ドゥルマ語テキスト原文 (DB 5010) chiza cha nyumbani、草木(葉)をしごきとって水のなかで揉み砕きつつ 屋内のキザを用意する唱えごと ドゥルマ語テキスト原文 (DB 5011-5012)
薬液の浴び方についての注意 ドゥルマ語テキスト原文 (DB 5013-5014) ただし、途中に場違いな来客による撹乱あり

「屋内のキザ」(炊事用のスフリア130に用意)、小屋の北西隅に置かれる。小屋の北東セクションには炉があり、その上部が穀物庫(chitsaga131)になっている。
患者をchiza cha nyumbaniの前に座らせて makokoteri 薬液の水を右手ですくって長声、(njerenjere134)を挙げながら、4回患者の頭に振り撒く。続いて左手を患者の頭において唱えごと 「屋内のキザ」での唱えごと ドゥルマ語テキスト原文 (DB 5019-5022)

「屋外のキザ」は小屋の戸口の先、前庭の端に設置される。冒頭のスケッチにあるように、キザの周りに憑依霊がやって来る道が灰で描かれ、搗き臼の前にはカンエンガヤツリ(mukangaga135)がたてられ、道の両脇に灰で作った団子(mukahe wa ivu)が置かれている。ライカはこの道に導かれてキザまでやって来て、そこで患者といっしょに薬液を浴び、灰の団子を食べて、また北の方角に帰っていく。
患者を外に連れ出し、chiza cha konze で makokoteri 「外のキザ」での唱えごと ドゥルマ語テキスト原文 (DB 5023-5029) endani kpwenu と言いながらvuriniに向けて灰をまく nyamaはこのchizaで水浴びしてvurini119の方へ帰る
[翻訳1] 「あなた方の出身地にお帰りください」
患者の左上腕にlaikaのngata装着
小屋の中で患者の頭にmavumba ga mudurumaで十字を描く

憑依霊ドゥルマ人の香料を頭頂部に塗りつける
muduruma141にmakokoteri
憑依霊ドゥルマ人に対する唱えごと
ドゥルマ語テキスト原文 (DB 5030-5032)
各パラグラフの冒頭の数字をクリックすると対応するドゥルマ語原文に飛びます。 5010 (ムルング子神に対する唱えごと・途中から)
Chari(C): ...胸が重たい、背中の中心が石で打たれる、腰(下腹部)が裂ける、脚が折れ壊れる、身体中がどうしようもない、腹が唸る。でも、ときとして(それらは)あなた方、世界の住人の皆さまのせいだと言われるのです。 世界の住人とはほかでもありません。あなたムルング子神です。あなた、あなたムァムニィカ(mwamunyika145)、あなたヴンザレレ(vunzarere146)。あなた、あなたこそが、人を悩ませている張本人だと言われているのです。あなたの子供たちといっしょに、人を苦しませているのです。なぜなら、シェラたち13がいるところは、あなたの子供たちがいるところ、ライカたち1がいるところは、あなたの子供たちがいるところだからです。誰がいるところも、どこでも、そいつらは皆あなたの子供、全員あなたの眷属なんですから。 さて、今日は、私はムワカのためにムルングに祈りにまいりました。私は癒やし手ではありません。本当の癒やし手はムルングです。私のすることと言えば、進んでムルングに祈るだけ、そして平安の手を置いて、小指の爪に退き、そこに座って大人しくしていることです。今日、今、私はこの子供にこうして、これらの薬液と、煎じる薬と、ンガタを置いてやると申し上げます。私という人間は、ムルングによって、ターバンを身に着けさせられました(治療する資格を認められました)88。というのも、ムルングが望むと、私はすぐに癒やし手になったからです。私は、この者たちの祖霊たちと私どもの祖霊たちが、一つ場所でともに眠らんことを願います。この者が治りますように。 (唱えごと終了。そばにいる女性に) C: さあ、椅子を出して。油を塗ってあげて。憑依霊ドゥルマ人のね。
5011 (薬液を用意しながら唱えごと)
Chari(C): ビスミラーヒ、ラハマーニ、ラヒーム...147 ふぅ。おだやかに、おだやかに148、世界の住人149の皆さま。私はお話しいたします。こんな時間にお話しすることもなかったでしょう。私がお話しするとすれば、それはムワカのためです。ムワカは病気です。ムワカは病気ですが、それは昨日、一昨日に始まったのではありません。でも本人が言うには、「私は病気といっしょに生きていくだけです。でもそれを味わう(痛い思いをする)のは私です」と。でも誰でもその日がくれば死ぬと申します。そう、たとえ昔に始まった病気でも、それ以来、彼女のその日は、まだだったのです。あなた方がいらっしゃって調えてもらえれば、それですむ日だったのです。でも、そのためのお金にしても、稼ぎ手次第。彼が施術師を呼ぶとなったら、もう、すぐにでも呼びます。だって、治療は、彼に属する者に対することだから。でも肝心のそのお金が、全然足らないのです。まったく。なぜなら、そのお金とは穀物庫(そこに収穫物があること)にほかなりません。 しかしながら、今ようやく、そう私は皆さま方にお静まりください150と申します。私たちは今日、皆さま方のことを思い出したのです。どうか、自分たちが忘れられていたなどとはおっしゃらないでください。また、私たちが拒んでいるわけでもありません。人々は、拒んだりしません。人々はそうしたいのです。でも、人が望んだだけでは十分ではありません。ムルングが望まない限りは。 さて、おだやかに、私は北の皆さまに、南の皆さまに、東の皆さまに、西の皆さまに、さらにブグブグ151の方々に、ニェンゼの小池の方々に152、子神ドゥガ153の皆さまに、子神トロ154の皆さまに、子神マユンゲ155の皆さまに、ムカンガガ135の皆さまに、池に蔓延るキンビカヤ156の皆さまに、お祈りいたします。あなたムルング子神マレラ157、ムルング子神・ムルングジ158、憑依霊サンバラ人子神もご一緒に。
5012 (唱えごと続く)
Chari(C): そして私がお話しするとすれば、そう、私はあなたムルング子神に、ジャビジャビ159の皆さまに、お話いたします。ングラ・ナ・ングラ160、母の場所ゾンボ161、サンブル162のムガマーニ163で戦っておられる皆さま、ンディマ164に会おうと家にお帰りになると、ポングェのカヤ165が壊れている。あなた方のせいだと言われています。どうかおだやかに。 私はおだやかにと申します。そう私がおだやかにと申すとすれば、私はムワカのためにおだやかにと申しているのです。私は薬(muhaso9)の束を差し出します。この薬はあなたムルング子神とあなたの子供たちのための薬です。私はンガタ(ngata26)をお結びします。ンガタは、他の誰のものでもありません。ンガタはライカ1のものです。ライカには他に母はいません。その母とはあなたです。シェラ子神(mwana shera13)にも他に母はいません。その母はあなたです。さらにはディゴの女性(muchetu wa chidigo21)も、その母はあなたです。デナの方々(ano madena73)、ニャリの方々(manyari74)も、全員そうです。 さて、私は断言します。こうしてこの薬とあれらの薬液(mavuo50)をお置きすれば、夜が明ければ水くみに出かけ、水くみが終われば畑仕事に行くことを、ムワカが学びますようにと。ヴリの小雨季が始まろうとしています。私たちは頭痛も、目まいも、背中の真ん中も、この悪寒も、胸の重苦しさも、背中の真ん中を石で叩かれることも、肋骨が内側に押しつぶされることも、腹が唸ることも、腹がトゲで刺されることも、腹に火がつくことも、こういった苦痛を感じることを望みません。さらに、両の腰(腎臓のあるあたり)が噛み砕かれることも、(性器から)水が溢れこぼれることも、皆さま方がおやりになることですね。脚が折れ潰される、腰が裂ける、皆さま全員がこうしたことをなさいます。今日、今、私はこの者とともに、、御主人様どうか!と申します(心からお願い申します)。私の「御主人様どうか(心からの願い)」とは、皆さま方が小指の爪にお退きになり、そこに腰を下ろし、大人しくしてくださることです。 (唱えごと終了)
5013 (ムワカに)
Chari(C): さあ、御婦人。私ね、ねえ、御婦人。この薬液(vuo50)を差し上げます。でもその浴び方をしっかり知っておいてほしいのよ。もし忘れてしまうようだったりしたら、浴び方を熟知しなかったってこと。この薬液を差し上げるけど、でもあちらの薬液を浴び終えるまで、こちらの薬液は浴びちゃだめよ。このンジェレ(njele166)は、人のを借りてきたものなの。もし何日もかかるんだったら、悪いわね。 Mwaka(Mw): いいえ、問題ないわ。 C: こちらの薬液(のための草木)もあげるわね。いっしょには浴びないでね。 (来訪者あり、定型の挨拶) male Guest(G): いらっしゃいます? People: おりますよ。 G: さて、おじゃまします。施術師の皆さん、ご傾聴ください(taireni167)。 People: ムルングの。 G: ごきげんいかが? People & Chari: 何もございません。あなたはどうですか? G: 何もございません。 People & C: それはけっこうです。 C: (立ち上がって場所を譲る)さてさて、ここをお通りください。ようこそ、おかけくださいな。 Mw: あなたのおじいちゃんよ、ねえ。 G: お前を鞭打ってやろうかね、お前。 Mw: (チャリに)どうやら、この人、人が喋っているのを聞いて、施術師だな、じゃあ、お前さんたちの施術師を見せてもらいに行こうってね。だからそのまま座っててよ。 C: 悪いことじゃないわ。だって分別がそう言うんでしょうから。(客に)ねえ、あなたご存知?あの気の触れた人、あなた。あの人、妖術を掛けられたんだって、あの人達に。 G: なんとね。
Chari(C): 私、気の触れた人を治療しに行ったことがあるのよ。で、私言ったのよ。ああ、あなたの父上(Murinaのこと)は、もう気が進まなくなってたわ168。私は言ったの。施術師は施術に嫌気がさしちゃあだめ。考えても見て。ここから「どうぞ拒絶なさいな」村くらいのすごく遠いところに行って、何もせずに戻って来てしまうなんて。そんなのだめよ。病人は「施術師に見てもらえるように、出てきなさい」って言われる。彼は「ああ、施術師、施術師、施術師。なに?その人、ムルングのターバンをもってるのかい(資格を認められた人なのか)」って言うわけ88。 Guest: 「ムルングのターバンを、お前さん、もっているのかい」ってね。 C: ムリナはもう怒っちゃった。(スワヒリ語で)「荷物まとめて、もう行こう」って言うの。私は言ったわ。「ああ、あなたそれじゃ施術師じゃなくなっちゃうわよ。だって、施術師って医師みたいなものでしょ。」(スワヒリ語で)「家に帰ってしまおう。私はそいつの言うことが食わない。」私はちょっと外に出てきますといって、その場を離れました。そして外に私のキザ(chiza48)を設置して、(病人が)はたして来るか来ないか見ていたの。かなり離れたところにね。そして私、独りでそこで歌っていたら、ほら、その病人がやってくるじゃない。「ヘロ、ヘロ(ハロー、ハロー)」って。私は彼に言います。「さっきあなた私に『お前はムルングのターバンもってるか』って言ったわね。 G: 「あなたは、どういうつもりでそれを言ったの?」ってね。 C: カリンボ・ワ・ムェロ!169 私、火を踏んづけちゃった! Hamamoto(H): ああ、お気の毒に、お気の毒に。 C: 火は気持ちがいいわ。身体ごといなくなってしまいそうだったわ、あなた。やれやれ。 (このハプニングで、上の話題は結末がないまま途切れてしまった。チャリは訪問客が現れる以前のトピックに戻り、ムワカに向かって話す) C: 私が言いたかったのはこうよ。もし葉を用いたあちらの薬液を浴びたら、あなたは完全にまったく身体が乾くまで待たないとってこと。もし葉を用いた薬液に触れたら、(身体が乾いて)葉が(身体から)落ちてしまわないと。そうなってからこちらの薬液をお浴びなさい。ああ、急ぐことはないのよ。私が(こちらの)薬液を調えて、唱えごとをしてあげます。それまではこちらの薬液はほっておいて。あちらの薬液を終えるまではね。あちらが終わったら、さあ、薬といっしょに(こちらの薬液を)お浴びなさいな。 Mwaka(Mw): はい(わかりました)。
Guest(G): (置いてあるンジェレ166を指して)ところでこれって、ここに置いておくものかい、これ? Mwaka(Mw): ええ、ここのよ。 G: もしかして今日にでも、捨てちゃったほうがいいんじゃないかい?(邪魔になると示唆) Ba...(Mwakaの夫(B)): 薬液が入るんだよ、ちゃんと。憑依霊ドゥルマ人は倒すものじゃない(怒らせちゃならない)。 G: そいつかい!じゃあ、そう、調えなさいな。 Chari(C): キリスト教徒なの?(憑依霊の問題を軽視していることを皮肉って) G & B: どこにキリスト教徒がいるってんだい。 G: ああ、(万一蹴躓いて)足をくじくとしても、まずは彼女(ムワカ)だろうし。 B: おや、お前、土(ライカのンガタに入れるための彼女の影から採った土)を持ってないのか。 Mw: わあ、私ってすぐ忘れちゃうわ。 C: ほら、これよ。あれ(憑依霊ドゥルマ人の香料(mavumba46))も紙に包んでおいてね。紙を探して、包んでおいて。薬(煎じる草木の束)のところにあるでしょ、それ(香料)は。 Mw: 匂うわね。 G: 全部潰すんだ? C: ほんとに匂うでしょ。 B: その香料、身体につけたら一週間はもつよ。 Mw: ああ、もし人があなたを見たら、ああ、この人なんだとすぐわかるわね、ええ。 C: そもそもね、身体にすり込んだら、あなたを見る人には、この人は憑依霊ドゥルマ人の鍋をもっている(の鍋治療を受けている)ってすぐわかるわ。 G: それって、ブバ(buba170)かい、それともカキリ(kachiri171)っていうやつ? C: ブバとカキリよ。でもそれぞれをそれだけでは... G: 混ぜ合わせるのかい?
Chari(C): ブバだけだとね、あなた、意味ないのよ。あなた、もしあなたが施術師で、なのに香りのある草木をブバだけに頼っているなら、あなたは偽物よ。ブッシュにはね、香りの高い草木がいろいろあるのよ。 Guest(G): ブッシュに? C: まず第一にムランゼ(muranze172)、そして第二にンダゴ(ndago173)、次にその他の草木よ。さて、あなたはこれらを挽いて粉にすることもできます。さらにあなたはムランゼは入れたけど、すべての物は入れなかったかも知れません。あなたはブバを入れたかも知れません。でも、そもそもブバだけに頼ったら、ブバだけだと生臭いわよね。 G: ああ、そのとおりだね。 C: そうよ。さて、あなたはあなたの草木をつき潰します。こんな風に匂いのある草木を大量に削って削ります。そしてつき潰します。それが済むと、あなたはブバをほんの少しだけとって、加えます。なのにブバだけを使う連中ときたら、あれらの草木... G: ブッシュの草木たちには目もくれない? C: ちがうの。目もくれないんじゃなくて、それらの草木を知らないのよ。 G: おお。 C: 私ね、このキナンゴのあたりじゃ、もうディゴ人ばかり見るわ。 G: おお、はあ。 Mwaka(Mw): お父さんの(小屋の)穀物庫のところにもあるわよ(椅子が)... Ba...(B): ねえ、彼女は(屋内の)キザに向かって座らせる必要があるんですね。 C: そうよ。
Ba...(B): その椅子は、まともじゃないよ。 Guest(G): 彼女は、どちら側が倒れるか知ってるよ。うん、ちゃんと座れるよ。 Mwaka(Mw): つまり、私はここで椅子に座らないといけないの? Chari(C): ここ、椅子にね。 B: ああ、あなた方、自分たちの椅子を(もってくるのを)忘れちゃったんだね、お母さん。 G: 倒れないよ。 C: 忘れちゃったわね。もし倒れたら、完全に憑依しちゃうでしょうね。彼女は憑依霊に倒されちゃったと言われるわ。でもなんと、自分で倒れちゃっただけ(笑い)。さてさて。もう一つの私の椅子は外にあるの? G: ああ、ねえ、この椅子で事足りるよ。 C: まあ、施術師は唱えごとをするには息が切れてるわ。 B: お座りなさいな。仕事をしましょうよ。 G: はあ、お父さん、こちらの板にお座りくださいな。 B: ああ、私は一先ずここで立っていますよ。 C: ムルングの布はもってますか? G: 彼女はもってないよ。 C: あらまあ、お父さんまで唱えごとを始めるのね。まだ(ムルングの布を)買ってないのをご存知なのね。ともかく、そのワンピース(rinda87)を脱いでね、御婦人。ワンピース着て唱えごとは受けられないのよ。脱ぐのが無理なら、(ドレスを)こんな風に下に下げて、さて、その布をとってエッガ174に巻きなさいな。ワンピースはみんな好んでいるんだけど、伝統的な施術としては(chiganga cha chenyeji イスラム風に対して土着風(ドゥルマ風))好ましくないのよ。
Guest(G): (通りがかりの人物に呼びかける)ローチャ! Rocha(R): ヨォー175! 以下、自分たちの屋敷に関する会話。ここでの施術には全く関係がないため省略
Chari(C): ヒリリリリ、ヒリリリリ、ヒリリリリ、ヒリリリリ。プッ! C: ご静聴ください。さて、施術師の皆さん、ご傾聴ください。 People: ムルングの。 C: 祈られる者は誰? People: ムルングです。 C: 大地は池のように? People: 冷えますように。 C: 良きことを望む者は People: 来たれ C: そして悪しきことは People: 去れ C: 施術師たちに妖術を掛ける者は People: 死にますように C: 施術師の助手(ateji176)に妖術をかける者は People: 死にますように C: うう、さて。おだやかに、おだやかに。私はお話いたします。こんな時間にお話しすることもなかったでしょうに。私がお話しするとすれば、私はムワカのためにお話しするのです。ムワカは病気(mukongo)です。ムワカはその父とその母とから生まれました。美しい息をもって。でも外の冷気に打たれると、人は病気(maradhi)とまみえざるを得ません。病気とは何でしょう。憑依霊(mashetani84)の病気です。そう、ムワカは困難に見舞われています。それは昨日始まったものでも、今日の朝に始まったものでもありません。随分昔に始まったものです。本人も、病気とともに生活する様になりました。病気は、こんな風に続いていき、ついに今や(憑依霊たちが言うには)「ああ、私たちはどうやら、何も調えてもらえなさそうだ。この者を本当に本当に病気にしてしまったほうがマシだ。」今や、あなた方は彼女を病人そのものにしておしまいになった。そして彼女本人も、「なんと、こいつたちは私を完全に壊そうとしているんだ」と思い至ったのです。
Chari(C): さて、おだやかに、私のキョウダイたち。あなたがたにお話します。私のためにどうかお受け取りください。私のためにどうかお受け取りください、北の皆さま、南の皆さま、東の皆さま、西の皆さま、ブグブグ151の皆さま、ニェンゼ152の小池の方々。私はあなた方にお祈りいたします。子神ドゥガ153、子神トロ154、子神マユンゲ155、子神ムカンガガ135、キンビカヤ156、池に蔓延っておられる方々にお祈りいたします。ムルング子神136・マレラ157、ムルング子神・ムルングジ158、子神憑依霊サンバラ人178もごいっしょに。私は皆さまにお祈りいたします。ジャビジャビ159の皆さま、ングラ・ナ・ングラ160、お母さんの場所ゾンボ161、サンブル162のムガマーニ163で争われている皆さま、ンディマ164に会おうと家に帰ると、ポングェのカヤ165が壊されている。皆さま方のせいだと言われています。どうかおだやかに。 私はあなたムルング子神に、おだやかにと申します。ペーポー(憑依霊アラブ人)83、憑依霊バラワ人179、サンズワ93、憑依霊バルーチ人180、憑依霊クァビ人181、天空のキツィンバカジ2、池のキツィンバカジ、地下世界のペーポーコマ182、池のペーポーコマ、皆さまもご一緒に。あなた憑依霊ガラ人189、憑依霊ボニ人190、憑依霊ダハロ人191、憑依霊コロンゴ人192、憑依霊コロメア人194、ドゥングマレ56、ジム197、キズカ198、スンドゥジ186、憑依霊ドエ人187。憑依霊ドエ人は、あなたムリマ・ンガオ199、奴隷またの名を憑依霊ンギンド人193。そのなかにはあなたデナ73とニャリ74、キユガアガンガ200、ルキ201、ムビリキモ76、カレ202とガーシャ203、レロニレロ78、子神プンガヘワ204もごいっしょに。憑依霊ディゴ人21もいます。あなたこそシェラ13、あなたイキリク16もご一緒に。私は皆さまにお静まりくださいと申します。あなたお母さん、ニマディワ23。あなたお母さんムジタコマ20、またの名をあなたディゴの女(muchetu wa chidigo)22、あなた方にお静まりくださいと申します。私は皆さま方にお静まりください(pore150)と言っているじゃないですか。「お静まりください」の言葉は、お聞き届けくださらねば。
Chari(C): おだやかに、おだやかに、あなたジネ・バラ・ワ・キマサイ205もいます。あなたゴロゴシ206、またの名をンガイ207。ンガイはあなた憑依霊カンバ人208、憑依霊カヴィロンド人196、憑依霊マウィア人53、憑依霊ナンディ人195、憑依霊マニェマ人209、私はあなた方に、おだやかにと申します。私は皆さまにおだやかにと申します。あなた、ライカ・ムェンド61、風とともに進むライカ、ライカ・キブェンゴ210、ライカ・ムカンガガ211、ライカ・ヌフシ4。ヌフシは、あなたパガオ5。パガオはあなたライカ・ムズカ3。ライカ・ムァニョーカ65もいます、ライカ・ムァフィラ64もいます、ライカ・ズズ212もいます、ライカ・ドンド67もいます、ライカ・キフォフォ66もいます。ライカ・キフォフォはあなた、ライカ・トブェ63もいます。私は皆さま方におだやかにと申します。ライカ・マジャロ213、私は皆さま方にお静まりくださいと申します。「お静まりください」の言葉は傾聴されるべきです。ライカ・ムクセ62もいます。私は皆さま方にお静まりくださいと申し上げます。 御主人様方、私どもはあなた方の脚下に身を投げ出しております。争いはございません。争いは一昨日、昨日のことでした。争い合うものは二人、三人目がやって来ると、その者は仲裁いたします。今日、私は仲裁者、争いを仲裁いたします。私は癒やし手ではありません。本物の癒やし手はムルングです。私のすることは、乞い祈ること、そして平安の手を置き、小指の爪に退き、そこに座って大人しくしていることです。私はつつがなきことを望みます。私はこのムワカのつつがなきことを欲します。彼女がこのあなたのキザ(chiza48)を浴びましたら、あなたヴンザレレ146、あなた偉大なる蛇、あなたバラ・ナ・プワニ(内陸部と海岸部(bara na pwani)214、私はあなた方にお静まりくださいと申します。そしてこの「お静まりください」の言葉が小指の爪を薙ぎ払いますように。御主人様方、私どもはあなた方の脚下に身を投げ出しております。彼女の(治療のための)資金提供者(通常は夫)自身も、今は、「私の妻218は病気なのだ」という事実を思い出しております。今日、私は彼女のために調えます。私たちはつつがなきことを欲しています。私どもは、つつがなきことを欲します。さらに子供もまた。子供が双子、双子で生まれてきたとしても、私たちはそれを拒んだりはいたしませんよ。
Chari(C): ですが、お静まりください。頭痛も、めまいも、背中の真ん中の痛みも、胸が重いことも、肋骨が内側に押しつぶされることも、腹が唸ることも、両腰の腎臓の辺りが噛み砕かれることも、無し。どうかおだやかに、下腹部が重いことも、心臟が破れることも、心が心配になることも、腹が唸ることも、無し。身体が燃えることも、無し。腰が切断されることも、無し、両足が折れ壊れることも、無し、まったく無し。 私が祈っておりますものは、つつがなきことです。それといっしょに、小さき者たち(子供)がたくさんたくさん欲しいのです。だって彼らこそが、この婦人を調えて差し上げに参るだろう者たち、皆さま方の使用人なのです。 (唱えごと終了。チャリは指の関節を鳴らそうとする) C: この腐った指たち、いんげん豆。でも弾けない。 (沈黙) C: ホーフィ(ため息)。かまわないで。まずはちょっと休ませてね、御婦人。すぐに外に行って、あなたに唱えごとしてあげるわ。まだ、唱え残りがあるの。(それも一気に済ませていたら)きっと疲れ切ってたと思うわ。 Ba...(B): 何をさらに言うことがあるのですか、あなた。 (チャリ、唱えごとの残りをさっと済ませる) C: さて、今、そう、つつがなきこと、それが私が欲していることです。施術師は、ノーと言われること、なし。私は望みます。この者がここに暮らし、そして彼女の施術上の母が「ヒツジの場所」219にいるということを覚えていますようにと。「ヒツジの場所」の商店地区221近くの「的中しただろうに(Nge....)」村にいるということを。 (唱えごと終了。Gに向かって) C: Nge...は憑依霊の名前じゃないよ。商店地区の「的中しただろうに」村。 B: あなた方が住んでいるところ。 C: そこには大きなムズカ(dzizuka40)があってね。そのムズカに着いたらね、そこに着こうものならね、さてさて(お前がそうとうタフじゃないと、大変な目にあうよ)。 Guest(G): ええ。 C: それが商店地区の「的中しただろうに」村さ。ホーフィ。
5023 (「外のキザ」での唱えごと。冒頭部分録音失敗)
Chari(C):...病気。ムワカは昨日始まったわけではありません。今日の朝に始まったわけではありません。ムワカの病気は昔に始まりました。でも本人は、その病気とともに暮らしておりました。 さて、私は皆さまにお静まりくださいと申します。私は皆さまにお静まりくださいと申します。すでに申しましたように、私がお話しするとすれば、それはムワカのためにお話しするのです、私のキョウダイたちよ。今、私はムワカに「外のキザ」を差し出すことをお告げします。屋内の(キザ)はお差し出しいたしました。屋内のキザは、追い越してはなりません。なぜなら(ムルングは)ライカには追い越されないからです。ライカはムルングの子供です。シェラもムルングの子供です。誰もがムルングの子供です。さらには、彼らイスラム教徒(の憑依霊)たちもムルングの子供たちです。はては、モスクに行く者もムルングに祈るのです。ムルングの子供なのです。 でも、今は、私どもは薬液(mavuo50)と、煎じる薬(mihaso ya kujita9)を、なんであれ「池」のあるところで、差し出します。私は皆さま方に申し上げます。私のキョウダイたちよ、お聞き届けください。私は皆さま方にお話いたします。私は皆さま方にお祈りいたします。それも、何度も(お祈り)いたします。5人なのです。ムワカのつつがなきことを祈り、そしてムワカの子供たちが、多くの病気に見舞われることのなきようお祈りいたします。
5024 (唱えごと、続き)
Chari(C): 北の皆さま、南の皆さま、東の、西の、ブグブグ151の皆さま、ニェンゼ152の小池の方々、皆さま方全員にお静まりくださいと申します。ジャビジャビ159の皆さま、ングラ・ナ・ングラ160、お母さんの場所ゾンボ161、サンブル162のムガマーニ163で争われている皆さま、ンディマ164に会おうと家に帰ると、ポングェのカヤ165が壊されている。皆さま方のせいだと言われています。どうかおだやかに。皆さま方におだやかにと申します。川(にお住まい)の皆さまにおだやかに申します。池(にお住まい)の皆さまにおだやかにと申します。溜池(にお住まい)の皆さまにおだやかにと申します。大きな木々(にお住まい)の皆さまにおだやかにと申します。キンベブォの池の皆さまに、マレレの森の皆さまにおだやかにと申します。皆さま全員、お下りくださり、この池(屋外のキザのこと)にやってきて来て、お浴びください。そしてここを通り過ぎて、皆さまの出身の地にお帰りください。キンガンギーニ222の池の皆さまも。皆さま全員お聞き届けください。マカンガ223の皆さまも、全員お聞き届けください。 私は皆さまに申し上げますが、私はこのンガタ26をムワカに与えます。このンガタは皆さま方の椅子です。どうか皆さま、ムワカを押しつぶさないでください。 さらに、もしかして「嗅ぎ出し」してもらいたがっていると言ってよいライカもいらっしゃるかも知れません。でもお金がないのです。お金とは稼ぎ手しだいです。というのも本当に本当にお金がないのです。お金は、即、食料です。ですがこれから、そう、もし順調に進んでトウモロコシが熟したら、お金は手に入ったら、家の中に残ってくれるでしょう。私は皆さま全員に、おだやかにと申し上げます。私のキョウダイの皆さま。私はあなたにおだやかにと申します、あなたライカ・ムェンド61、あなた風とともに進むライカ、ライカ・キブェンゴ210、ライカ・ムカンガガ211、あなたヌフシ4、ジネ・パガオ5、ムズカ3。ライカ・トブェ63、またの名をライカ・キフォフォ66。私は皆さま方にお静まりくださいと申します。
5025 (唱えごと、続き)
Chari(C): 私はあなたにお静まりくださいと申します、あなた「世界(dunia215)」、あなたバラ・ナ・プワニ(bara na pwani214)。あなた方、バラ・ナ・プワニは同じく偉大なるムルングです、でもイスラム教徒(mudzomba225)だと言われています。というのは、内陸部(の草木)と海岸部(の草木)を使うからです。私はあなたディゴゼー(digozee75)に、ムビリキモ(mbilichimo76)ともども、お静まりくださいと申します。さらにあなたタリ導師(mwalimu tali226)にも、私はお静まりくださいと申します。私はお静まりくださいと申します。あなた憑依霊バルーチ人180、あなたブルサジ(bulusaji227)、皆さま方におしずまりくださいと申します。おだやかに、私のキョウダイの皆さん、どうかお聞き届けください。あなた奴隷(mutumwa230)、奴隷、またの名を憑依霊ンギンド人193。皆さま全員、望みをおかなえいたします、私のキョウダイの皆さん。すでに皆さまにこの薬液を差し上げました。どうか皆さま、これをお浴びになって、ムワカを自由にし、彼女を健康にしてください。 ムワカ、胸が切り割られること、なし。ムワカ、背中の中心が重くなること、なし。脇腹が潰されることも、なし。ムワカ、(あなた方憑依霊が)彼女の腹の中に入り込む、腹が唸る、腹がトゲで刺される、腹に火がつく、すべてなし。これらのことすべて、なくなる(立ち去る)よう私は願います。 腰が切断される、両脚が折れ潰される、心臟が破れる、(あなた方憑依霊が)彼女に悪い悪い夢を見させる、彼女を水の中に連れていく、犬たちを見せる、牛たちを見せる、ありとあらゆる物を見せる、果ては死体まで見せる。私は皆さまにお静まりくださいと申します。そしてさらにこの「お静まりください」(と言うお願い)は、昨日、一昨日のことではありません。どうかおだやかに。 つつがなきことこそ、私たちが欲していることです。小雨季(vuri)が今や始まり、人々はンジェンガ237にはもううんざりしています。今は、そう彼女がつつがなくありますように。さらに、私は(彼女の)腹のなかにもう一人の子供がとてもとても欲しいです。それも女の子。あちらに行って、喧嘩しましょうね。ムヮカイ(一族)がムァニョータ(一族)を嫁取りするとしたらね。239。 (唱えごと終了)
5026 (施術と無関係なやり取りにつき、訳出省略) ....
Chari(C): もしガンディーニ98のあの人(Murinaはガンディーニにローズウォーターを買いに行った)のことがなかったら、もっと早くここを去れたでしょうにね。 Ba...(B): おお。 Woman(Mwakaの夫Ba...の母): さてさて、痛みよ引け、痛みよ引け、私は息子の妻(ムワカのこと)が治って、私のために小雨季の畑仕事をしてくれることを望みます。 Mwaka(Mw): (チャリから手に垂らされた瓢箪の中身について)身体に擦り込むの?
Chari(C): 食べなさい。身体にすり込んでどうするの?蜂蜜なのよ。 Ba...(B): 舐めなってば。そうそう。 C: これらの瓢箪はキブリの瓢箪11じゃないわよ、これらは。キブリの瓢箪はオオヤスデ(majongolo240)が素材で、すりつぶしたものだそうよ、御婦人。キブリの瓢箪こそ、オオヤスデをすりつぶした薬が入っているやつ。 B: ところで唱えられるとき、中ではそいつら(オオヤスデ)は何しているんだい?(冗談) C: ああ、何も言わないで。(冗談) Mwaka(Mw): J(子供)は、居眠りしてるわ。 B: 唸りつづけるだけで、欲しいものについて告げない? C: (スワヒリ語+ギリアマ語で)じゃあ、さっさとマンゴトレ(mang'otole、ギリアマ語で「硬貨」の意らしい)を寄越しな。 B: 何? C: 硬貨のことよってば。
Ba...(B): (笑いながら)私は、それ(マンゴトレ)の単位とか知らないですよ。もう。 Chari(C): その単位がわからない?私あなたに言わなかった? B: あ、ああ。昨日のお話ですかね。それなら... C: だって、この憑依霊(憑依霊ドゥルマ人)は未開人(mshenzi=スワヒリ語でnative, uncivilized personの意)なのよ、あなた。 B: はいはい。 Mwaka(Mw): ねえ、こっちにおいでなさいよ。 C: これからそいつに唱えごとするのよ。そいつに唱えごとする仕方なんだけど、(施術の代金の)お金をもらったら、そいつのための2シリングはここにないとだめなの。それをもって立ち去るわけにはいかないのよ。受け取ったお金から取り分けて、そいつに与えないといけないの。 B:ああ! C: そんな風に私はそいつに唱えごとするわけ。 B: ではご傾聴ください。 C: ムルングの。 B: あれらの問題を私たちは昨日話し合い、終わらせました。 C: むう。 B: でも、私は行き着けませんでした。 C: 血が出るまで宥めすかす。後はそうするしか。 B: 私は行き着けませんでした。 C: あなたも、遠すぎるのよ。 Mw: ここにお座りなさいな。 B: 私は行き着けませんでした。
Chari(C): そして、あなたは遠くにいる。 Ba...(B): たしかに私は遠くにいます。このことはすでに以前お話しました。そしてすぐさま、私のお金をとっておいてくれている友のところに行ったんです。私が着いたときには、彼は不在でした。でも、こういう事態は望んでなどいませんでした。そうなんです。 C: そうね。じゃあ、私はこの人に差し上げる2シリングをどうやって出しましょうか、それじゃないとしたら。 B: 私には今全然ありません。 C: あなた10シリングもってない、カリンボ? Hamamoto(H): ああ、ありません。 B: この先のあの長老はどんなでしょうね。うう、もしかしたらね、彼が小銭をもっているかも。でも私は... H: ええと、今ここで何シリングが必要なんでしょうか? C: この人に残しておかれる2シリングが必要とされているのよ。 H: おお。10シリング硬貨だったらもっていませんが、2シリングだったら、私もってますよ。どうぞ。
5030 (憑依霊ドゥルマ人に対する唱えごと)
Chari(C): おだやかに、あなたドゥルマ人、あなた、めったにお目にかかれない凶兆、あなたカルメンガラ142、あなたマゲンデーロ(magendero244)、内の問題も外の問題も知っている、あなたカルメンガラ。あなたはまたの名をカシディ143、あなたムルング・マランボ245、あなたは子供が嫌い。あなたは美しくあることが好き。あなたまたの名をレロ・ニ・レロ78、またの名をマンダーノ77、またの名をムガイ246、またの名を貧乏人247。 そんなわけで、あなたは、あなたという人はムワカと出会われた。そしてムワカは今、あなた、道をさまよい歩くもの、ブッシュを彷徨し、世の中を彷徨する。彼女は世界を彷徨い歩きながら、治らない。あなたこそが、こうした仕業の張本人だと言われているのです。あなたカルメンガラ、あなたです。あなたの出身地がゴブォ248なのか、私は知りません。あなたの出身地がサカケ248なのか、私は知りません。さらにはニョンゴロ248なのか、私は知りません。キザヤ248なのか、私は知りません。でも人とは、語り合い、互いを知り合い、そして挨拶し合うものです。今日、今、私たちは挨拶しあいましょう。 なにを挨拶しあうのでしょうか。このムワカのことです。そう、ムワカは悪寒の病気です。ムワカは病気、心臟が破れる、ときには心臟がぶらぶらする。測ることができないほどの空腹を感じる。ムワカはこうした状態を知っています。日中ずっと空腹を感じる、それはあなたの仕業ですね。そしてときには腹に火を注ぎ込む、果ては腹が唸る、まるで腹になにかモノを入れられたかのように感じる。あなた、こうしたことをご存知でしょう。そして腰が切断される、あなたがまさに得意としていることですね。あなたカルメンガラ、あなた。あなたは内の問題も知っている、外の問題も知っているとおっしゃる。そしてときにあなたは人を苦しめる。
5031 (唱えごと、続き)
Chari(C): 今日、私はあなたに薬液(vuo50)を差し上げます、私の友人よ。私はあなたに煎じる薬(mihaso ya kujita9)を差し上げます。あなたが、小康をご覧になることを。小康とは治ることです。あなたが小康をごらんになれば、さらには、なんとあなたのための歌(wira wenu112)も、あなたはお受け取りになることでしょう。でも今は私はあなたにその日時を約束はいたしません。さらにもしかしたら、あなた方の鍋もお受け取りになることでしょう。でも日時は約束いたしません。でも、そう、つつがなきことこそ私が望むもの。私はムワカにつつがなきことを願います。私は、今、本当に本当に、つつがなきことを願います。まずは腹から頭まで、胸と背中の中心、腰が切断されること、両脚、両手。この者が健康でありますように。知性(分別)がかき乱されることも、心臟が不安でいっぱいになることも、なし。もし本当にあなたのせいであるなら、あなたがこの者から手を挽いてくださることを望みます。私はあなたに身体に塗るためのあなたの粉薬(chirumba250)を差し上げました。私は煎じる薬も差し上げました。 「私は品物を与えられたが、食べていない」などとおっしゃらないでください。私はまずはあなたを脇に置いておきます。まずは、あなた方を脇に置かせてください。あいつら、葉っぱの連中、あいつらにまず彼らの葉っぱを浴びさせてやって、それが済めば、あなたのことをいたします。まさにここであなたの上々の香料と、あなたのとてもとても素敵な薬をです。さて、じゃ今は私たちは何をいたしましょうか?私たちは病人が治ることを見守っています。そう、もしかして歌(wira)をあなたに差し上げるということでしたら、あなたに歌が差し上げられますことを。でも今は、どうかおしずまりください、私の友人よ。彼女に困難を引き起こさないでください。あの連中が、彼らのあれらの薬液を浴びるのをお見逃しください。まずはムルングこそがドゥルマ人ではないでしょうか。彼らが浴びるのをほっておいてください。その後であなたもあなたのをお浴びになるでしょう。あなたの薬液は置いておかせてください。だってあなたは他の人といっしょにできない人なんですから、あなたドゥルマ人は。おだやかに。 (唱えごと終了) 以上、ひっくるめて、本当に終わったわ。
Ba...(B): これで、終わりましたか? Chari(C): まずは首尾よく終わったわ。 B: では、今のところ草木を探してくるのが仕事ですね。でも、草木がここにあれば、ことは急いで進みますね。 C: ふう。大変なのは草木よ。草木っていうのは、たとえそれが「象の場所」地区であっても、採りに行かないといけないのよ。もし、すぐに調えられるって言うとしたら、無知のせいね。 B: ええ。 C: 自分で自分に恥をかかせてるだけ、で患者はなおらない。とんでもないわね。草木を私がもって行っても、(そんな大変なことは)その人にはわからないでしょうね。 B: たしかにね。 C: ねえ、私の嗅ぎタバコ入れ(chiko)をもって来てくれない?奥さん。外のあそこよ。 B: その木の下だよ。
限られた時間で、粛々と進行する施術とはちょっと違って、気心の知れた者のなかで、思いがけない興味本位の来客までも登場する、こうしたゆるい施術のなかでは、誰もが冗談交じりの雑談に興じつつ出来事が進行し、私が何かにつけあれこれと質問する雰囲気でもなく、全員が知っているだろうコンテクスト情報を共有しない人類学者にとっては、交わされる雑談そのものもが厄介だ。インタビューでの問答とは異なって、暗黙の共有されたコンテクストを前提とする日常の雑談のなかで、それを共有できていないがゆえに何が話されているのか見当がつかなくなってしまう、という経験は人類学調査あるあるネタではないだろうか。それとも私の空気読めない力が遺憾なく発揮されていただけの話なのだろうか。
まあ、そんな感じで今回はドゥルマ語テキストを日本語訳するのにも、やたら時間がかかってしまった。
それはともかく、この憑依霊ライカに対する基本施術であるが、屋内のキザ(chiza cha nyumbani)と屋外のキザ(chiza cha konze)と呼ばれる二つの薬液がペアになっている。当然一つの疑問が浮かんでくるだろう。なぜ一種類の憑依霊に対して、二つのキザが用意されるのだろうか、という。たしかにほとんどの憑依霊の場合、施術のための薬液は(そこでどのような草木が用いられるかという点で)一つだ。なのに、ライカら水辺系の霊には二つのキザがいる。
この疑問は、このページでの紹介で解決するだろう。読めばおわかりのように屋内のキザは実は、憑依霊の筆頭でもあるムルング子神(mulungu, mwanamulungu)のためのもの(そこに「世界の住人全員(arumwengu osi)」もまとめて招待されてはいるが)である。 二つのキザが必要であるのは、単にムルング子神が筆頭者であることが理由ではない。それならライカ以外の憑依霊についても同じことが当てはまるだろうから。 ムルングに対する冒頭の唱えごとのなかや、薬液作成中の唱えごとで述べられているように、ライカやシェラなどの内陸部の水辺の憑依霊は、ムルングと母子関係にある。他の憑依霊が男女それぞれいるのに対し、ムルングのみが女性のみで男性のムルングがいない。ムルングは、他のすべての憑依霊の母親であると主張する施術師もいるが(チャリ自身もその一人である)、はっきりと母子関係にあると語られ、その施術においてそれが示されるのは、水辺系の霊であるライカやシェラである251。屋外のキザに対する唱えごとに述べられているように2つのキザを浴びる順番は、ムルングとライカやシェラとの母子関係なのだとわかる。「ライカはムルングを追い越すことはできない」のである。順序にこだわるところは、いかにもミジケンダな感じだ(詳しくは、浜本2001『秩序の方法』参照のこと)。
ところで、この患者の病気を複雑で厄介なものにしているのが、メインとなるムルングとその子供たち、とりわけライカたちに加えて、おじゃま虫の憑依霊ドゥルマ人がここでも介入している点である。イスラム系(海岸系)の霊は別として、その他の内陸系の霊たちはムルングやライカたちとキザ48、あるいは薬液50を共有することができる。それぞれが異なる草木をもっているとしても、それをいっしょに混ぜることができるのである。しかし憑依霊ドゥルマ人は、厄介なことに、他の憑依霊たちといっしょになることを拒む。それでいて他の憑依霊たちの治療が先に行われると、自分を無視していると言って怒り、治療を邪魔して、より重い病気を注ぎ込んできたりする。田舎者の「未開人(mshenzi)」で、それでいて傲慢で、他の憑依霊のように頭に手を置いて唱えごとをすることを許さない。なんで俺の頭をつかむんだ(なんで私の頭をつかむのよ)というわけだ。他にもいろいろうるさい奴らで、でもンゴマではちょっとコミカルなところも見せる。
それはともかく、このドゥルマ人が絡んでいるために、もう一種類の薬液(vuo50)をそのために別途、用意しておかねばならない。この薬液を浴びる際の注意が、会話の中に入ってきていて、一連の会話の流れを、ほんのちょっと理解困難なものにしている。 ドゥルマ人は、薬液を入れる容器にもこだわり、アルミの鍋(sufuria130)やプラスチックの盥(beseni252)などはとんでもない。今では日常生活ではあまり使われなくなった、瓢箪(カボチャのようにくびれのないタイプの瓢箪)を半分に割った容器ンジェレ(njele166)を要求する。その薬液は草木の根や茎、幹と香料が主成分なので、葉っぱが主成分の他の薬液と混ざることを許さない。というわけでチャリが浴び方の注意で述べているように、ドゥルマ人のための薬液は、屋内のキザと戸外のキザ(これは、唱えごとのなかで述べられているように、まず屋内のキザを浴び、その後で戸外のキザを浴びるという順序である)が7日間の全行程を終えた後に、日を改めて開始するか、どうしても早めに浴びたいときは、すでに浴びたキザの水が身体からすっかり乾いて、葉っぱをすべて払い落とした後で浴びなさいよ、という指示になっている。チャリは後日、あらためてドゥルマ人の薬液を調えて唱えごとも行うというやり方を勧めている。
別稿でも繰り返し指摘しているが、憑依霊の病気の患者が病気に苦しまないために身につける護符(という用語はちょっと不適切なのだが)は、患者を憑依霊の攻撃から守る、攻撃を撃退するといったものではなく、むしろ憑依霊たちに差し出される「椅子」であるという点に注意しよう。椅子がなければ、やって来た憑依霊たちは患者の身体に腰を下ろしてしまうので、それが患者にとっての苦痛になる。というわけで椅子を用意してやれば、憑依霊はそれに座るので、患者は苦しまずに済む。それは結果として患者から苦しみを取り除くが、その表だった目的は、やってくる憑依霊に対する「歓待」の一つの形なのである。
同じことはキザについても当てはまる。戸外のキザが、同時に「池(ziya)」と呼ばれていることからもわかるように、それはカンエンガヤツリやゴバンノアシ(この日にはなかったが)といった水辺の草木を周囲に配し、好物の灰で作ったケーキまで用意した、池の住民である池系の憑依霊たちが気持ちよく水浴びできる場所として設置されている。北(vurini)に向かって座った患者がその薬液を浴びるとき、灰で描かれた「道」に誘われてやってきたライカたちもその薬液を浴びている。そして終わると、今度は憑依霊が帰っていく北の方角に向けて、灰を巻きながら、お家にお帰りくださいと唱えられる。この手順そのものが、憑依霊に対する饗応になっているのだ。
この戸外のキザ、「池」が、キブリ戻しのクズザ(kuzuza12)の際に、屋敷の前庭に設置される搗き臼のキザとそっくりである(あるいはほぼ同じものである)ことにも注意したい。クズザの場合に、それをキブリを捕らえる「罠」と見る見方があることを紹介したが、こうした極端な見方を別にすると、例えば施術師ムニャジが語っているように、このクズザの際の搗き臼のキザを、キブリを奪ったライカを引き寄せるものととらえる見方も広く見られる。施術師チャリがあっさり認めているように、それはライカについての「大きな応急治療(hamehame bomu)」である「池」と同じものだということになる。

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tsovyaの別名とされる「内陸部のスディアニ」の絵 ↩
我が愛車鳳凰号で自転車の練習をするカタナ君の妹
キナンゴの町の青空自転車工房 ↩
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