(from diary 1989/12/18 (Mon) kpwaluka)1
朝8時にチャリのところでmburugaの録音。チャリとタブが作ったチャパティをご馳走になる。その後、キナンゴへ...
クライアントは40代くらいの男性。妻の不調についての占い。原因は憑依霊とされ(ムルング、ライカ、シェラ、憑依霊ドゥルマ人)、出産祈願の瓢箪子供についての指示、ライカのキザ(chiza2)その他の治療の指示を受ける。さらに、この治療が終わった後ということでイスラム系の霊(とりわけ夫妻のそれぞれがもっているスディアニ導師によるトラブル)に対する治療も指示される。妻の不調についてはチャリは、一貫して憑依霊についてのみ語り、妖術の話は排除していたが、その後、一転して屋敷の人々の人間関係に目を向け、屋敷の人々を仲違いさせ、屋敷を経済的にも破綻に導いたとして妖術フュラモヨの存在をあげ、その治療が指示される。
パラグラフ冒頭の数字をクリックすると対応するドゥルマ語テキストに飛ぶ。戻る際にはブラウザの[戻る]で。
以下、Cl=クライアントの男性、Mm=Chari, muganga wa mburuga、M=Murina、H=浜本
Mm: ところで彼(カタナ君)の父の姉妹のところには、あなたたち行くの? H: いいえ。そもそも彼も行ってないんです(アポイントメントをとるために)。 M: 彼が行かなかったってことは、まだ準備ができてないってことさ。 (占い開始) Mm: さて、まずは祖霊にクハツァ(kuhatsa6)しましょう。さあ、ご傾聴くださいと申しましょう14。 Cl: ムルングの。 Mm: さあ、祖霊に祈りましょうね、今。私はキマコ(chimako15)に驚いています。そしてそのキマコは悪いわ...(聞き取れない) Cl: タイレ14。 Mm: 炉16よ、あなたご存知よね? Cl: 炉は知ってますよ。女性のことです。
Mm: 病人は5じゃないわ。ねえ、病人は炉なのよ。 Cl: わかってますってば。 Mm: さらに炉にも二種類あるの。言葉をしゃべる炉もあります。そして背中に負われている小さな炉もあります。私には、言葉をしゃべる炉そのものが与えられたわ。 Cl: タイレ。 (占い歌 nasirima mimi..) Mm: ご傾聴ください。 Cl: ムルングの。 Mm: うまく歩けない人、身体の不調を訴える人ね。 Cl: タイレ。 Mm: さらにこの頭痛、あなたに話してる? Cl: 話してくれたことがあります。でもかなり前です。
Mm: この目眩については? Cl: 言ってました。 Mm: 以前って、なに、今は彼女、家にいないの? Cl: いますよ。私の妻なんですよ。 Mm: この腹のことは、彼女言ってた?私には見えるんだけど? Cl: それこそが、私を立ち上がらせて、ここまで来させたものです。 Mm: この腹こそがあなたを家から出てこさせたものなのね? Cl: それ以外の何物もありません。 Mm: でもその「それ以外のもの」もお腹の中、身体の中にあるわよ。 Cl: そのあなたがおっしゃった別の場所っていうのは... Mm: 頭の中がそうでしょ、あなた。それと目眩もあるでしょ。さらに胸も、彼女語ってない? Cl: それはタイレです。
Mm: 胸のところが重苦しい。そして背中の真ん中あたり、石を置かれたように(重苦しい)わ、あなた。さらにこの寒け、ときには... Cl: そう、そうなんですよ。その石と、その腹... Mm: 両脇、肋骨がときに押しつぶされる。 Cl: まさにそうなんですよ。 Mm: でも腹がとりわけ病気だわ。 Cl: それこそ私をここにもたらしたものです。 Mm: 腹は空っぽね。中に人(胎児)はいない。 Cl: 私の見るところ、なにもないです。 Mm: なのに中で何かが動き回っている。
Cl: その動き回っているものをよく見てくださいな。それが人なのか、物なのか。見えるんでしょう? Mm: 病気よ。腹が切られるよう(に痛い)ってこと、奥さんはあなたに言った? Cl: 言ってました。 Mm: 腹が(なにかで)一杯になっている18感じ。 Cl: 便秘19ってことでは、便秘してます。 Mm: 便秘、一杯になっているということはそういうこと。 Cl: まさにそのとおりですね。 Mm: そしてこの両の腎臓のあたりが重苦しいのよ、あなた。何かに噛み潰されている20のよ、あなた。 Cl: タイレです。 Mm: この下腹部21も。噛み潰されている。 Cl: まさに、そのとおりです。 Mm: 重苦しい。もし違っていたら、違うと言ってちょうだい。間違いだと。
Cl: 私は否定の仕方なら知ってますよ。でも、あなた、私はタイレだと申しているのです。 Mm: 下腹部が重苦しいわ。そしてここと、このあたり、針で刺されるような痛み。感じているかしら。これから別のことも言いたいんだけど、あなたは私に分別がない(人前では口にできないことを口にする)って言うでしょうね。 Cl: ああ、言ってください。 Mm: でもね。 Cl: 私の見解はこうです。もう(あなたの指摘に)私はうなずいたじゃないですか。私が嘘をつくとでも?病気を隠したいと思っているとでも? Mm: まずね。(性器から)水が溢れてくるという、ちょっとした異常(kajama)22ね。 Cl: 今日もありました。 Mm: さらに掻きむしったりもする。 Cl: 挙げ句に、表皮が剥けてただれました。 Mm: 挙げ句に、表面がただれたのね。 Cl: 私は隠さずに申しました。
1159 (歌 nasirima mimi)
Cl: 病気は恥ではありません。病気は。 Mm: 掻きむしって、ただれ、ただれてるのね。ほんの少し歩いただけで、ね、すごくただれる、もう。 Cl: さあ、まさにこれじゃないですか。でもそれらからはときほどかれました、すっかり。 Mm: ただれは収まった。かと言って、すっかりなくなったわけじゃない。一時、退いただけね。 Cl: じゃあ、そこに行きましょう(詳しく見てください)。 Mm: さて、でも今は腹だわよ。ここ腰が断裂する。 Cl: タイレ。
Mm: 腰が切り離される(みたいに痛い)、この腹部。さらに、例の女性の事柄(maneno ga chiche: ここでは月経のこと)、ときに順調に見える? Cl: あなたが調べてください。恥ずかしがらないで。病気です。ただ、お話しください。 (チャリ、占い歌を口笛で) Mm: それの日数が長引いてしまうこと、あなた見たことない? Cl: タイレ。 Mm: 終わったと思ったら、その後で、例のモノが戻って来る。 Cl: タイレ。 Mm: そしてお腹が痛い。刃物で斬られるように。ここのところが斬られる。腰が切り離される。両腰の腎臓のある辺りが、噛み砕かれる。 Cl: そのとおりです。 Mm: もう痛くて泣いているばかり。その挙げ句、月経(maada)が終わると、彼女、まるで真っ白(貧血で蒼白)に見えるでしょ?
Cl: まさに、そのとおりです。 Mm: もう、病気がいっぱい、全部。ときに心臟が心配で破裂する。 Cl: タイレ。 Mm: ときどき、両腿の付け根がバラバラになる。果ては、両脚で踏みしめることも難しいほど。さらにこれらの脚のこと、彼女、それらが痛くなるってまだあなたに話していないかしら?脚が縦に裂き割られるみたいに? Cl: ああ、しょっちゅう聞いてます。 Mm: 両足が縦に裂き割られる。そして火がつく(熱く感じる)。ここ足の内側も、ときに火がつく。 Cl: タイレ。 Mm: そしてこの身体も、ときに燃える(火照る)。 Cl: タイレ。
Mm: ねえ、病気は一つ所だけってことはないのよ、あなた。わかる?この病気は、一箇所だけじゃ済まないの。この腹部こそが、あなた方を驚かせたものでしょ。 Cl: 私自身も、とっても苦しんでるんですよ。それにあの水、あなたが見たあれですが、どうしても完全には去ってくれないんですよ。他の、あなたがこれから見ようとおっしゃる他の問題の方が、まだましだというくらいです。 Mm: (それらの問題は)終わってるのでは? Cl: それらの問題なら、そう私は取り除きました。それらは。 Mm: あなたそれらを注射で取り除いたの? Cl: わかりません。 Mm: なに、彼女病院にも行ったんでしょ。 Cl: ああ、一回だとでも?(何度も行きました) (チャリ、占い用のマラカス(chititi23)をひとしきり振る) Mm: あなた、簡単な仕事(字義通りには「小さい仕事」)で悩んでいるだけよ。 Cl: 簡単な仕事ですって?
Mm: だって、病気だから。 Cl: あなたはそれが簡単な仕事だって言うんですか? Mm: この腹に、「人(mutu)」が入り込んでる、腹が唸るでしょ。 Cl: それはどういうことなんでしょう?その「人」、私はあなたにそいつを調べてくださいと申します。腹の中にいるその「人」、あなたがおっしゃるその「人」って、あなた、いったいどんな「人」なんですか。 Mm: さらに、この排便についてだけど、しばしば、ほんのちょっとでしょ。 Cl: 少なすぎます。 Mm: 腹は唸る、唸る。そう、この子宮(dzumbani24)のあたりで、あなた、ヴーッて(風が吹くような)音をたてている。 Cl: タイレ。 Mm: ときどき、ここ胸郭の胸骨の内側あたりに(mbavuni tsanga mumu25)入ってきた「人」、まるで内側からこんな風にこすってくる。そして息ができなくなる異常、ときどき彼女経験してるんじゃない?
Cl: タイレ。 Mm: ときには、このお臍、ここが、そう拗られる、お臍が。ときにはそれ(「人」)は、ここ心臟をつかんで、ムカムカ(tsivu tsivu), まるで嘔吐しそうな感じで。どうでしょ?でも、そう、お腹よね。 Cl: タイレ。 Mm: お腹に火がつく。お腹が一杯になる。便秘そのもの。 Cl: そいつ、その「人」、その動き回っている「人」、そいつがときにしでかす奇妙なことがあります。そのことについてお聞きしたい。 Mm: さて、ときには、ここ陰部のあたりに、なにかがやって来てたかっているみたいな。 Cl: タイレ。 Mm: ときには、彼女はまるで軍隊アリの群れに噛まれたみたいに。 Cl: タイレ。
Mm: ときにはトゲがジュウと刺しこまれる。 Cl: ああ、タイレ。ああ、あなたは私を仕留めました(私の聞きたかったことをすべて当てました)。 Mm: あなた、難しい仕事よ。 Cl: あなた簡単な仕事って言ったじゃないですか。私は言ったでしょう。問題が私を驚かせている(途方に暮れてさせている)とね、あなた。 Mm: おしっこもね、ときに燃えるようなのが出るでしょ、おしっこ。かと思うと、ときにひっきりなしに出る(頻尿)。挙げ句に、気がつかないうちに彼女、寝床のなかで排尿しちゃう。 Cl: タイレと言いいますよ、あなた。 Mm: かと思うと、出るのは少しで、色も変わっている。まるで黄疸のおしっこみたいな。もし私があなたに、彼女が膿を排尿すると言ったとしたら、私はあなたに嘘をつくことになります。でも膿のような水が出てくるわね。 Cl: 私もすでに見ています。その水についてあなたによく見て欲しい、だってその... Mm: その水ときたらね、膿みたいに白濁しているのが出てくるのよ。
Cl: その水には異常があります。 Mm: ときにはね、まるで紐のようなものも混じっているの。まるで鼻水みたいなね。 Cl: タイレ。 Mm: そしてその水はおしりの方に流れていくの。 Cl: タイレ。病気ですよ。過ちではありません。 Mm: ねえ、腹は焼けるわ。 (チャリ、歌うnasirima mimi) Cl: 恥ではありません。話してください。病気は恥ではありません。 Mm: まずね、ときには身体が痒くなるでしょ。 Cl: タイレ。
1167 (チャリ、占い歌を歌うmwalimu jinjaの1バージョン)
私は憑依霊を扇ぎます、ジンジャ導師です 我が子ジンジャは癒やし手 ジンジャ導師がいます ジンジャ導師は癒やし手 私は海岸部にもいます、内陸部にもいます 私はここにいます、私本人、仕事をしましょう 我が子ジンジャは癒やし手 今日、蝿追いハタキをください、(妖術使いを)探し出しましょう (歌終わり) Mm: まずね、この下腹部、ときどきなかに痼り(kahe)があるでしょ。 Cl: タイレ
Mm: そこがとっても固くなって、こんな風にすると、まるで痼りのよう。おまけに、ときどきそれは動いていく。 Cl: タイレ。 Mm: 本人が自分はモノ(chitu)を入れられたと言うこともある。ときには、なかにモノがあって、それが出てくる...(聞き取れない) Cl: タイレ。 Mm: もしかして彼女はまだあなたに言ってないかもしれないけど、そう、あなた... Cl: もう彼女から聞いています。私はあなたにすべてお話しますよ。もし彼女がまだ私に話してくれていないなら、私は言ったりしません。 Mm: ときには、痙攣もね。 Cl: タイレ Mm: この腹がぴくぴく痙攣する。ピクッ、ピクッ、ピクッ。ついには彼女本人が言うことには、私、本当になにかを入れられちゃったわって。
Cl: タイレ。ピクッとするってだけじゃないですよ。痙攣のことだけ考えていたんです。でも、「ちょっとここをつかんでみて、よく感じて(字義通りには「耳を澄ませて」)」と言うんですよ。 Mm: つまり腹の中で、例のモノが息をしている、ってことでしょ。 Cl: タイレ。私はもしかしたらツァンゴ(tsango26)かと言ったほどです。 Mm: こんな風に、トゥ、トゥ、トゥってね。そのモノは、そんな風にしているかと思うと、やがて止まるのね。そしてあなたが手を除けると、手のなかにはなにもない。すると例のモノは火がつく(熱くなる)。 Cl: タイレ。 Mm: そして、ときどきそいつは脇腹(胸郭(mbavu25)の中に入ってくる。そいつ(ro dude27)は胸骨の内側25に入り込む。そして次に、ここ(心臟のあたりを指して)に腰を下ろす、このモノは。あなた、わかる? Cl: タイレ。
Mm: それはたかってくる。彼女は、もうまるでアリ(adudu28)にたかられている人みたい。ときにはそれは熱い。最後にそのモノはこの子供が生まれてくる場所から、外に出てくる。 Cl: タイレ。 Mm: このトゲ。一箇所だけじゃないわ。だって病気なんだもの。でもここ水の問題が、とりわけ酷いわ、あなた。この水、この。 Cl: お母さん、思うに、この腹、水には全く空きがないんでは。それで彼女が病気になっているんです。 Mm: 出産経験もある歴とした女性なんだけどね。 Cl: 彼女には何人も子供がいます。 Mm: でも今は(ウシのように)追いたてられて、子供を産むのを止めようと考えるほどに、追いつめられてるのよ。 Cl: (腹は)すでに子供を産むのを止めていますよ。止めて欲しいとは言いますまい。でもすでに止まっているのです。だって現状は...
Mm: とんでもない。彼女はまだ止まってないわ。 Cl: 止まってますよ。だって最後に(子供が)出てきてから、随分経ってます。 Mm: すでに随分経ったと。でも、対処されることが必要な場所が、依然としてあるのよ。 Cl: それはけっこうじゃないですか。さあ、それこそ私は探しているんですよ。 Mm: 腹の中が痒くなるという症状は? Cl: タイレ。そのとおりです。 Mm: あなた、もう後は彼女を苦しめているモノを、教えてあげるだけね。 Cl: さあ、彼女が何に苦しめられているのか、言ってください。 Mm: さてさて、あなた急ぎすぎよ。 Cl: ああ、あなたにお話しするのに疲れてしまいました。 Mm: 疲れないでよ。
Cl: あなたは、小さいことだ(小さい仕事だ)とおっしゃったじゃないですか。私は、その小さなモノですでに苦しんでいるんだと考えます。私がそれを食べれば、それはすぐ静まりますよ。 Mm: ときに、彼女は血を洗い流してしまう(血を失ってしまう)。 Cl: タイレ。私に、この人には血がないと言わせるほどです。 Mm: でも血はあるよ。 Cl: まるでハアハアと息を切らしたようになることも、あります。 Mm: ときに、少し咳き込むのがみられるんじゃない? Cl: あります。でも長続きはしません。 Mm: 咳をして、挙げ句にえずく。ときに脇腹(肋骨)が押しつぶされる。 Cl: タイレ。 Mm: そして、睡眠のちょっとした癖(kajama ka kulala)はどう?ちっちゃな子供みたいに突然なにかにびっくりしたみたいに目を覚ます。そんなことはなかった? Cl: ああ、そもそも彼女の異常な癖ですよ。異常な。
Mm: 夢と話をしているみたいな。ときには何かを食べているみたいに口をむしゃむしゃ。 Cl: ああ、私本人がその場にいるんですよ。見ていますとも。 Mm: 彼女には(解決すべき)いろんなことがあるわね、あなた。 Cl: ああ、あなたが見たものをすべて言ってください。もしもっと見たものがあるなら、言ってください。 Mm: 不安でいっぱい。ところで、あなた...(小声で聞き取れない)...。憑依霊(shetani)についてのことは全部、調えたの、最後まで。 Cl: やりました。でも最後までかどうか知りません。全部終わったかどうか、見てくださいよ。 Mm: 終わってはないわね。 Cl: 私はやりましたと申しましたが、すべて終わったとは言ってません。やりましたと言っただけです。 Mm: 瓢箪子供(mwana wa ndonga30)は彼女に与えたの? Cl: 瓢箪子供、彼女はまだ瓢箪子供は受けていません。
Mm: まだ彼女に子供をあたえてないの? Cl: いいえ、まだです。そもそも... Mm: ところであなたは子供はほしいの? Cl: 私自身の子供ですか。 Mm: そうよ。 Cl: ああ、私が彼女を急かしたとして、いったい何になるでしょう。子供をもうけるまさにその場所が(病気に)捕らえられているんですから。そこが捕らえられているとすれば、私になにが出来ましょう? Mm: 彼女がどうであれ、彼女には可能よ。でも、今はそんな具合。憑依霊ドゥルマ人42の鍋5はまだ据えていないのかしら? Cl: ああ、それなら、私はまだ鍋を据えたことはありません。まだ(そうしろと)言われたこともなかったのです。
Cl: こうしなさい、ああしなさいと言われたら、私は言われたとおりにいたします。あるときなど、(占いに)見てもらい指示されて、そのとおりにして、太陽があれくらいの時(朝8時くらい)、妻の様子を見ると、もう完全に健康。人も、この女性は健康そのものだと言うほど。 Mm: ああ、彼女のこの病気はね、...そもそも、朝あなたが出かけるときには、彼女は健康そのもので、あなたが帰宅すると、病気の彼女をみることになる。 Cl: そう、まさにそんな感じです。 Mm: 逆に、朝、別れるときには重病人そのもの、でも帰宅してみると、しっかり目を開いている(元気そのもの)44。 Cl: まさにそのとおり。 Mm: さて、私は、こんなふうには言うつもりはありません。「さあ、行って施術師をさがし、10000シリングの料金をおはらいなさい。何千シリング。彼女の重荷を下ろし(kuphula mizigo)102してあげるためにね。」あなたはンゴマを開き、重荷下ろしをする。なのに病気は相変わらずそのままでしょうね。
Mm: 私はあなたにほんのちょっとした課題だけをあげるわ。それであなたはここに戻ってきて、私に握手を求めることになるわよ。まず、ムルング子神(mwanamulungu33)の鍋(nyungu5)を彼女に据えてあげてちょうだい。 Cl: ムルング子神の鍋。 Mm: それとムルング子神のキザ(chiza2)。 Cl: それとムルング子神のキザ。 Mm: わかった? それとシェラ50と憑依霊ディゴ人109の「戸外のキザ(chiza cha konze)」 Cl: シェラと憑依霊ディゴ人の。 Mm: それとライカ・ムズカ(laika muzuka59)本人の。奥さんが鍋の湯気を浴びて、終わったらこのキザ(ムルング子神の)を浴びるのよ。この(ムルング子神の)キザを浴びたら、まずは彼女はよくなるから。このキザを浴び終わったら、彼女はあっち(外)に行く。(搗き臼は)上手に模様を描いてある(灰の白、炭の黒とオーカーの赤で)。(赤、白、紺三色の)布切れをこんな風にね。ムコネの枝を2本こんな風に(搗き臼の上に)渡してね、カンエンガヤツリ草122をこんな風に差して、搗き臼に向かってこちら(北)を向いてね。とっても気にいるわよ。奥さん自身も。ここ(小屋の中)で鍋の湯気を浴びて、終わったらそちら(小屋のキザ)で浴びる。
そちらが終わったら、彼女はあちら(外のキザ)に行く。それが済んだら、また小屋に戻って煎じ薬(muhaso)を飲む。鍋が終わるまで。7日間で終わります。さあ、中身は捨てて。さあ、憑依霊ドゥルマ人の鍋を置きなさいね。 Cl: この彼女が湯気を浴びるのはムルング子神の鍋ということでしょうか。 Mm: ムルング子神のです。 Cl: で、あちらで浴びるのは。 Mm: 池(ziya3)はムルング子神の池です。あちらの方には、ライカ57・ムズカ59とシェラ(shera50)と憑依霊ディゴ人(mudigo109)いっしょのキザです。 Cl: あちらの外れのほうの? Mm: そう。さて、彼女が湯気を浴びて、終わったら、そちらで水浴び。そちらで水浴びして終わったら、あっちの方で水浴び。で、終わりよ。 Cl: 7日が終わるまで。 Mm: 7日が終わると、このドゥルマ人の鍋を(施術師が)設置に来ます。奥さんは良くなるわよ。
Cl: 鍋を設置に来る。そしてタイレと? Mm: さらに、そんなふうに彼女が(ムルング子神の)鍋の湯気を浴びる際に、こちらに瓢箪(chirenje)、まだ口を開けていない瓢箪を。 Cl: うまく立たせておくのですか。 Mm: ここ、(ムルングの)キザのところによ。で唱え手に唱えてもらいます。「私は、この腹が小康を得ることを望みます」って。小康を得るってことは、治ることよ。腹が治るのを見ることは、腹に子供を見ることよ。その腹を見ても(妊娠がわかっても)、この子供(瓢箪)の口は穿ちません。それからは、寝台の脚のところ(gunguhi)に置いておかれます。その子供(瓢箪)にはこれ(占いに用いる瓢箪のマラカス(chititi))みたいに3連程度のビーズを巻いておくだけよ。それは寝台の脚のところに置いておかれます。この子は口を穿ちません、脚をもった(人間の)子供が生まれるのを見るまではね。そのときにこの子の口を穿って、彼女に二人の子供(生まれてきた人間の赤ん坊と瓢箪子供)を与えるのよ。この鍋の湯気を浴びて、このムルングの鍋が終わったら、施術師を連れてきて、彼(彼女)にこの子を寝台の脚のところに置いてもらいます。でもこの子を寝台の上に上げてはだめよ。
Cl: 上にあげたらだめ? Mm: (施術師に)寝台の脚のところに、こんな風に置いてもらいます。この子はそこにずっといます。ときどき、見てあげます。それはそこにいます。奥さん本人も、ときどきその子を見てあげます。 Cl: ああ、自分でもその子を見るんだね。 Mm: ああ、そうそう。まずね黒い布(nguo nyiru=ムルングの布。実際には色は黒というよりも紺色)を手に入れて、その上に置いてあげる。石(このあたりにみられる平たい粘板岩)があれば、そこに置いてあげる。そこに座らせておく。以上よ。あなたは(奥さんの病気が治ったと言って)私に握手を求めに来るでしょうよ。それから憑依霊ドゥルマ人の鍋を置きます。ドゥルマ人に鍋の湯気を浴びさせるのよ。12日間。ドゥルマ人の鍋を差し出す際には、ほんの少しばかり歌を用意してね。 Cl: 歌を用意しておく? Mm: さらにいっそう祈願するのよ。つつがなきことと、子供が生まれることをお願いするのよ。 Cl: (徹夜のじゃなくて)昼間の(カヤンバ)でも?
Mm: 昼間のでも。ちょっとした歌よ。でも(本当の子供が生まれた後で、正式に)瓢箪子供を与える日にはね、夜の歌(カヤンバ)といっしょに与えられるんだけどね。というのも瓢箪子供は昼に差し出すものではないから。そうされる場合もあるけど、施術的にはちょっとね。瓢箪子供といえば、ンゴマを打ってもらうこと。その日の早いうちに、瓢箪子供の口を穿ちます。そしてンゴマが明け方のひんやりする時間まで打たれます。夫婦がその子作りに励む時間ね、その時間に瓢箪子供は差し出されるんです。おわかり? Cl: わかりました。 Mm: でも祈願すること、それなら、昼間で大丈夫。そのときこそね、しっかりこの子を(ムルングに)お示しするのよ。私はこの子に口を穿ちませんって。 Cl: はっきり口に出して言うんですね。私はこの子に口を穿ちませんって。 Mm: 私はこの子に口を穿ちません。脚をもった子供をこの目で見るまでは。彼女が憑依霊ドゥルマ人の鍋を終えますね。そうしたら、彼女に憑依霊ペンバ人(mupemba123)とスディアニ導師(mwalimu sudiani74)の「飲む大皿(kombe ra kunwa77)」を描いてもらってね。
Mm: もしかして、彼女夜ごと夜ごとに夢で見るものがあるんじゃない? Cl: そのとおりです。 Mm: スディアニっていうのは、ペーポームルメ(p'ep'o mulume73字義通りには「憑依霊男」)のことよ。彼女にこいつのンガタ(ngata36)を結んであげて。そう、たくさん(ンガタを)やっても、それは無駄ね。でも、ジネ・ムァンガ(jine mwanga83)のンガタは... Cl: スディアニ導師。 Mm: ツォヴャ(tsovya86)..さて、ンガタを結んであげて、それとズカ・ボム(zuka bomu125)のも。3人よ、そいつら。そいつらのンガタを結んであげて。スディアニ導師の、憑依霊ペンバ人の。大皿を欲しがるイスラム教徒たちよ。あなた、スディアニ、スディアニ、スディアニ・マッカ(メッカのスディアニ)って聞くでしょ。スディアニってイスラム教徒なのよ。大皿を欲しがるの。ああ、スディアニは憑依霊ペンバ人で、ロハニ(rohani129)で、憑依霊アラブ人でもあるの。 Cl: たしかに。
Mm: だから、「飲む大皿(kombe ra kunwa)」と「浴びる大皿(kombe ra koga)」77を手に入れてね。彼女(の月経の不調)は相変わらずで、小康を得ないままだったり、小康を得たり。彼女が買い求めた薬(madawa 通常の医薬)をつづけて、結果、小康を得ることも。でもあなた方が出会う(性的関係をもつ)日がくると、また出血が戻ってくる。もしかして、彼女自身は、まだあなたに話していないかしら? Cl: ああ、しっかりと。ああ、私自身がそれをよく知ってます。 Mm: あるいは、あなたがあなたのすることそのものを行うと(性交をすませると)、例のもの(精液)が外に出てしまう。 Cl: ああ、さあ、握手してください。 Mm: 私は握手するつもりはないわよ。 Cl: あなたはずばり的中した。私を射止めました。 (チャリ、nasirima mimi歌う)
Mm: そして、あなたがたくさんすると、その最後には、あなたは奇妙なことを目にするでしょうね。...(聞き取れない)... Cl: 病気を私に隠さないでください。病気を話してください。 Mm: 私は話してますよ、あなた。もし間違っていたら、すぐに違うって言って。 Cl: あなたの話す言葉がそのとおりだったら、私は即そのとおりですと言います。もしそのとおりでないなら、私はそれを否定します。だって... Mm: さて今、あいつらはあなたを駄目にしかかってるわ。あいつら憑依霊たちは、あなたを駄目にしようとしています。だって、あなたの中にも憑依霊がいっぱい、彼女の方にもいっぱいなんだもの。この頭痛だって、あなた自身しばしば経験するでしょ? Cl: まさにそこですよ。すでにそれで倒れた(寝込んだ)ほどです。そこですよ。他には... Mm: その頭痛でも、頭のこの辺りが痛むやつ、ときどき経験しない? Cl: 昨日も起きているあいだじゅうそれでした。
Mm: そしてこの心臟が破れて、不安がいっぱい。と思うと、なにもかもにうんざりする。 Cl: 一晩中ですよ。 Mm: そしてあなたのお金についてもね、たとえ手に入ったとしても、それらがどちらの方面に行ってしまったのか、あなたにはわからない。 Cl: ほらここでも、あなたはいっそう私を射止めた。ええ、私は私のお金の使い方がそんなふうなんだと言ってたくらいです。 Mm: 憑依霊ペンバ人(に必要なもの)は、そのコフィア(kofia130)、カンズ(kanzu131)、杖、キシバオ(chisibao132)、飲む大皿と浴びる大皿、その椅子、それにピングを二つばかり。これらの憑依霊は、あなたの一族の(なかで継承されてきた)憑依霊たちですよ。 Cl: それらは始祖たちのもっていた133憑依霊です。今、あなたはそれらを知らないのでは? Mm: 誰を? Cl: 私が、それらの霊を知らないって言ってるんですよ。
Mm: それらを知らないって、あなた何者?怠慢じゃないの134。なに、(言われたのは)ここが初めてなの? Cl: 問題を経験していることですか?ああ、起きている間じゅう経験してますよ。 Mm: でも、それに専心する(信心する)ってことでは、専心していない135。 Cl: でも目眩の問題なら、私は目眩の問題をもってますよ。でもまだ、本当にそれに苦しむにはなっていない136、というか、お前には、これこれのモノがあると指摘されていないんです。 Mm: 憑依霊ペンバ人本人、それとスディアニ導師。あなたのもっているスディアニは女性よ。あなたの妻がもっているスディアニは男性。ときどき、あなた夢で少女が出てくることない? Cl: しょっちゅうです。 Mm: そして、ね、あなた夢をみて、その女性と寝るでしょ、本当に。 Cl: たしかにそうです。 Mm: 夢のなかで喧嘩して、あなたが負けることは? Cl: そもそも未だかつて人に倒されたことはありません。
Mm: (夢のなかで)空を飛ぶのは知ってる、あなた? Cl: はい。 (チャリ、歌うnasirima mimi) Cl: だって、それをして、目が覚めると、すごく力がみなぎっている感じがするんです。 Mm: え、何を感じるって?私に噛み煙草をちょうだい、食べたいの。あなた、人が自殺にいたっちゃうこともあるのよ。怠慢のせいで。 Cl: 怠慢で? Mm: あなた、血のおしっこをさえ出すことになるわよ。 Cl: 私自身がですか? Mm: そもそも、ときどき、あなた下腹部が重苦しく感じる異常があるでしょ。 Cl: タイレ。 Mm: そしておしっこを出すとき、おしっこがすごく重くなっている。 Cl: タイレ。
Mm: おしっこが重くて、量もすごく少ない。 Cl: タイレ。 Mm: そしてヒリヒリ痛む。 Cl: いいえ。生まれてこのかた、そんなことはありません。 Mm: でも、とても長時間歩くと、おしっこの色が変わるんじゃない? Cl: ヒツジの尿の色に。よく見ると、まるでヒツジの尿みたい、おしっこ。 Mm: でも、ヒリヒリ痛いって言うと、間違ってるわね。 Cl: はい。もし、私にありとあらゆる症状があったとしても、私は水(がこぼれ出ること)は未だかつて経験してませんし、他になんであれ、この病気は、そう、私は未だかつて経験してません。 Mm: 私だって、あなたが水の問題をもってるとも、何をもってるとも言ってないわよ。水が溢れ出すのは、あなたの奥さんよ。 Cl: それは確かです。それはタイレです。
Mm: でも、あなたの行為の異常さといったら。あなたがそれをするとしたら、それで子供ができるようにという期待からでしょ。でもしばしば、そこに到達したと思ったら、それははねつけられるのよね。 Cl: その場で出てきてしまうんだよ。この目で見たよ。翌日になったら出てくるっていうんじゃない。もうその場で。彼女がこう言うくらい... Mm: さて、この期待っていうのは何なんでしょうね。あなたは私のことを分別がないとおっしゃるでしょうね。 Cl: ああ、心配しないで。話してくださいよ。 (チャリ、歌う。manasirima we anangu) Mm: 彼女はあなたの幸運すら握ってしまったのね。 Cl: タイレ。 Mm: まずね、あなた自身が(報酬として)受け取ったシリング(お金)を、奥さんに渡すでしょ、それでもうげんなり。 Cl: タイレ。
Mm: あなた自身、場所のことを考える。寝る場所。しかじかの場所でのあなたの旅。でも心があなたを捻じ曲げる。結局、あなたはそこに行かないことになる。(浜本注: 婉曲表現なので直訳してもわからないが、夜、妻と性交渉を持つことを考えるが、結局、気が変わってしないですませる、ということ) Cl: 結局彼女のなかには行かない。 Mm: かと思うと、些細な言葉で喧嘩。癇癪をおこす。心臟が火で燃えるのを感じる。 Cl: タイレ。 Mm: あれら(憑依霊たち)のために調えておあげなさい。「大皿(kombe77)」もいいわね。もし描いてもらうなら、お二人いっしょに描いてもらいなさいね。「飲む大皿(kombe ra kunwa)」と「浴びる大皿(kombe ra koga)」よ。でも、最初は何をしたら良いでしょうか。憑依霊たちに、唱えごとをしてもらい、彼らを称えてあげないとね。でも、ムルングの鍋とムルングのキザ、そして屋外のキザを据えてもらわないと。(ムルングの屋内のキザの薬液を)瓢箪子供といっしょにお浴びなさい。鍋を(7日間の湯気浴びが終わり)空けたら、その瓢箪子供はあちら(夫婦が寝る寝台の下の空間)に置きます。憑依霊ドゥルマ人の鍋を据えてちょうだい。カシディ(kasidi44)、こいつカシディよ。そもそも、彼女には、ときどき自分がすぐに死んでしまうみたいに感じるという異常があるでしょ。
Cl: まさにその通りです。 Mm: 本人が恐怖心にとらわれてるのよ。 Cl: まさにその通り。それはタイレです。 Mm: というわけで、彼女はありとあらゆる場所が、健全じゃないの。私はそれが薬(muhaso137)のせいだとは言いません。けっして。 Cl: 私自身もそれは薬のせいじゃないかと疑ってました。だって... Mm: 私は薬のせいだとは言いません。私は憑依霊のことだけお話します。ライカ(laika57)のこともお話しましょう。... でも、こうしましょう。一番最後にね、つまり、あなたがこれらの問題をすべて調えた。そしてそれが終わった。さらにあなたの妻も治った。そうしたら、逆毛の鶏と、白い雄鶏と、黒い雌鶏を手に入れてね。 Cl: 私自身でですか? Mm: ええ。そしてあなたはフュラモヨ(fyulamoyo138)をクブェンドゥラ(kuphendula139)してもらうのよ。 Cl: 私自身がですか?
Mm: そうよ。ねえ、(そのフュラモヨは)ずっと以前に掛けられた妖術なのよ。あなた方全員に掛けられたもの。あなた一人だけに掛けられたものじゃない。男全員が掛けられたのよ。商売をしている人も、何も利益を手に入れられないようにとね。 Cl: 私は今、そいつ(妖術使い)の正体がわかりました、もう本当に。 Mm: フュラモヨ。あなたフュラモヨそのものにやられている。憑依霊のフュラモヨよ。 Cl: そこも同じくタイレです。だって、これが初めてじゃないんです。とってもタイレです。 Mm: あなた方は嫉妬されているのよ。フュラモヨ、挙げ句にはあなた方の関係がうまく行かないようにとね。あなた方、いっしょに暮らしていないし、お互いを訪問し合ってもいないんでしょ。 Cl: タイレですよ、それは。 Mm: あなた方、分裂しちゃったのよ。各人が自分勝手に。そう、これこそフュラモヨ。もしそれに対処しなかったら、そうそのうち誰かが自分自身を憎むようになって、「俺の心はいったい何なんだ、俺は」って言って。 Cl: 「自殺したほうがましだ」って。
Mm: 入水かもしれないし、ロープかもしれない。だってジメネ(dzimene140)そのものだから。 (チャリ、キティティ(占いのためのマラカス23)を振り鳴らす) Mm: あなた方がお互いの言うことに耳を傾けなくなるようにとね。 Cl: そしてまさしくそんな感じなんですよ。 Mm: 一人ひとりが、自分をわかってもらいたいと嘆く。 Cl: まさにそのとおり。 (チャリ、歌う。manasirima we anangu) Mm: ところで、あのキザ(chiza2)なんだけど、子供たちもいっしょに浴びさせてね。 Cl: あの戸外のキザですか、それともここの(屋内の)ですか? Mm: 戸外のだよ。鍋は、彼女、独りで湯気浴びさせなさい。ムルングのキザ(屋内のキザ)も独りで浴びさせて。ンガタは、彼女も子供たちといっしょに結んであげて。もしかして小さい子供で、身体を固くして丸まってしまう感じの子供がいるんじゃない?
Cl: もう、その通りです。 Mm: ときおり夢(祖霊?)と話をしている(寝言を言っている)。 Cl: 本当です。 Mm: よく歯をごりごりする。また歯ぎしりする。 Cl: その通りです。 Mm: 健全じゃないわね。そう、みんな健全じゃないわね。 Cl: 全員、健康じゃない? Mm: そうよ。ときどき自分自身で燃える(高熱を出す)でしょ。 Cl: タイレ。 Mm: 食事していないみたいな感じだし。 Cl: タイレ。 Mm: もし子供たちがとっても痩せてると言えば、それは嘘になるわ。 Cl: タイレ。
Mm: でも、状態は良くないわ。彼女、子供たちの母親が、子供たちを苦しめているのよ。最後の子供、一番最後の子供がいるでしょ?その下の子供がまだ生まれていない子供が? Cl: います。 Mm: 女の子でしょ。 Cl: ええ、いますよ。 Mm: ときどき、独りで突然癇癪を起こす。怒りっぽい、怒りっぽい子。あなたは、おそらくその子には分別が欠けているんだと言う。そして落ち着きがない子だと。ときどき、やって来ると、そのまま通り過ぎていく。その子の母親の(に憑いている)憑依霊たちのせいなのよ。彼女、随分以前に風(peho)を持ち去られているのよ。一回でも彼女をクズザ(kuzuza51)したことある? Cl: いいえ。クズザしたなら、私がそれを見るはずじゃないですか? Mm: あなたがたぶんまだ注意して見ていないだけじゃない? Cl: 私は注意して見てますよ。でも見てません。
Mm: それにしても、なぜまたこの人、ムズカの主のライカのキブリかね? (チャリ、キティティを振る) Mm: じゃあ、私に施術師たちを探してきてちょうだいね141。 Cl: 施術師たち。あなたに施術師たちを今すぐに差し出しますよ、あなた。 (クライアント、外のブッシュに生木の枝を取りに行く。それと入れ替わりにムリナ氏小屋に入ってくる。) Chari(C): 人間って互いに傷つけあうのね142、あなた。仲間を苦しめる者(妖術使い)が、一人いるのよ。 Murina(Mu): そいつは仲間を追い払おうとしているのさ。 C: 仲間を苦しめる者が一人いるのよ、あなた。 M: そいつはすでに仲間を屋敷から洗い流しているのかい143? C: そうよ。このフュラモヨよ、この。 M: 彼、フュラモヨを知ってるのかい? C: いいえ、男(妖術使い)がもっているのよ。 M: 人間の心(roho)っていうやつは... (クライアント、生木の小枝を数本もって戻って来る。ムリナ退出。)
1196 (チャリ、生木の小枝を一本、一本、臭いを嗅いで、その都度頭をかしげたり、頷いたりしながら、会話を続ける)
Cl: 薬(muhaso)。欲しければ、もう買うだけのこと。そのつもりなら、それをもって... Mm: ただのカメネ(kamene144)だわ。 Cl: それをもって、試みてみる、そしてうまくいく。 Mm: でも、まだうまく行ってないわよ。 Cl: うまくいったから、こんなざまなんですよ。それは人々を困まらせてます。 Mm: でも誰もまだいなくなってないわね。 Cl: まだ誰も死んでないです。でも、今こそ頑張らないと。頑張らなかったら、それを放置しろと.. Mm: 男らしくね。男らしさは屈服しないこと(chilume ni k'ani)って言うじゃない145。私、あなたに言わなかったっけ?まず、眠りの異常について話したわね。 Cl: タイレ。 Mm: ビクッとして目を覚ます。 Cl: タイレ。
Mm: 死体の夢を見る。 Cl: まさにそのとおりです。 Mm: さらに彼女、蛇の夢を見るわね。 Cl: タイレ。 Mm: (夢のなかで)彼女、水の中に連れ去られたりするでしょ。彼女には行けない場所なんてないの。病気も、いたるところなの。 Cl: 私は彼女が病気だと言いました。だって、もしあなたが私に会いに来たら、私がいきなり立ち上がって、さあ、私は今から人に悪口を言いに行こうと言う(とします)。私は、たしかに病気でしょ?私は陰口をきいたりしません。人は健康で、為すべきことをもっているものでしょ。 Mm: 彼女の腹は健全じゃないわね。でも、あなた自身のモノの問題、あなた自身がそれをしようと思って、あなたには欲望があって、なのにそれ(精液)はその場で外に流れ出てしまう。それはスディアニ導師のせいよ。あなたのもっているスディアニと、彼女のもっているスディアニが嫌っているからなの。あなた自身も嫌っている。だって汚くない?
Cl: 汚いです。 Mm: 精液(mikojo146)だからね。そもそもそいつ(スディアニ)は徹底してきれい好きなのよ。その後も、ぬるぬるした感じが続くからね。 Cl: 私がやりすぎたせいかも。 Mm: ところで、あなたについてもね、あなたがもっているそいつ(スディアニ)も嫌いなのよ。あなたの(スディアニ)もおなじように子供が嫌い。あなたのもっているそいつもね。というわけで、あなた方ふたりともそんな状態で止まったまま。子供が生まれない。そもそも、あなたが日時を決めて、そのことをやりたいと思っても、惨憺たるもの(あなたのモノが役に立たない)。 Cl: まさにそのとおりです。 Mm: まるですでにやり終えた後のようにね。 Cl: それ、まさに本当ですよ。たとえ、彼女が試みても、怒ってしまう。 Mm: ところで、ときには....(ささやき声で聞き取れない)
Cl: それ、まさにその通りです。 Mm: ああ、さて私は言うことは終わりです。あとは言ったことを調えなさいね。でももしこのまま病院の薬(dawa)に頼り続けたら、彼女にさらに病気を注ぎ込むことになりますよ。 Cl: さらに病気を注ぎ込むことになる? Mm: それらの薬は腹のなかで嫌がられてるのよ。彼女に望まれているのは、鍋(nyungu5)でしょ、それと煎じる薬(mihaso ya kujita)、それと憑依霊の布切れ、憑依霊のンゴマよ。あなた、私に握手を差し出しにいらっしゃるわよ。あなたも、すっかり治るでしょうよ。 Cl: 彼女も治るでしょう。 Mm: 彼女もすっかり治るでしょう。そして、二人そろって「飲む大皿(kombe ra kunwa)」と「浴びる(大皿)(ra koga)」を描いてもらいにお行きなさい。各人が、それぞれ二つずつのピング(pingu37)を手にお入れなさいね。彼女も治りますように。そしてあなたもすっかり治りますように。そしてあなたの稼ぎも良くなりますように。 Cl: 本当?
Mm: 今は、あなたは現に稼いでいる通り、稼いでいますよ。私はあなたが何ももっていないとは言わないでしょう。でも、あなたは来客のための鶏を用意するのさえ、できなくなるでしょう。彼ら(憑依霊たち、それとも妖術使い?)があなたをがっちり捕らえているからです。鶏は卵を落とし、産み続けていきます。でも子供たちがお金を奪っていく。 Cl: そもそも私、お金を見ることすらない。 Mm: たとえお金が入ってくるのを目にするとしても、お金はとどまらない。人間は、手に入れないということはありません、でもたとえあなたが手に入れたとしても、お金は全然あなたをつかんでくれない。 Cl: 握手しましょう。 Mm: まだよ。お金はとどまりません。そして、あなたがこんな状態のままで、友人のところに行って、トウモロコシ一袋のための10シリング私に貸してくださいと言っても、その友人は、そんな金はないよ、と言うのです。 Cl: タイレ。 Mm: でもあなたは、お金があれば、(貸してあげることを)躊躇しないわね。
Cl: いえいえ、もう即ですよ。そもそも、あれこれ言い訳されるのは嫌いです。 Mm: 信頼の心をお持ちなのね。 Cl: あれこれ語られるのは嫌いです。これは良いことだと見ると、もうただちにそれを行います。私自身は、ええ。 Mm: (憑依霊の)コフィア(kofia130)ね。この目眩の症状ね。 Cl: コフィアね。(目眩と言えば)その場で倒れてしまいそうになったほどです。 Mm: ときには、目がまったく闇で覆われる。ときには、目覚めるとまるで目ヤニが大量に出てるように感じる。 Cl: ああ、夜通し...そもそもね、顔を洗いに行って...自分(の目)を何度も何度も、ここまで拭って... (ここまでチャリは、クライアントが持ってきた小枝を一本、一本、嗅ぎながらチェックしていたが、ついにそのうちの一本を選び出して、クライアントに差し出す) Cl: (チャリから受け取った一本の枝を手にとって)この人が、私の妻を治してくれるだろう私の施術師ですか、この人が? Mm: ええ、奥さん本当に治りますように。 Cl: それでけっこうです。
Mm: でも、ライカのところでは、子供たちを除外しないでね。さらに、奥さんをクズザしてね。 Cl: 彼女のクズザをするのは、順調であると見てのことですよね。 Mm: 彼女は治るでしょうって、あなた、私お話したわよね。指示した事柄を、すっかり終わるまで、従ったらね。まず、終えていること、治るのはその後よ。あなたが話したことのいくつかを忘れてしまうこともありえます。もし忘れてしまったら、後戻りすることになりますよ。 Cl: いやいや、私は遂行しますよ。だって私がお話したように... Mm: でも、あなた、あなた、もし言われたあれらのこと、あれらをしなければ、あなたは打ち倒されて、「女され」てしまうわよ147。だって、あなたは人妻と寝ようと考えたりするからね。 Cl: そもそも、そうしたトラブルはもう卒業してますよ。 Mm: 心に捻じ曲げられて、あれこれ考えること。別の方に目を向けて、(夜通し)あれこれ考えて、(眠れなくなり)いつ夜が明けるんだろうと。 Cl: 外に出て腰を下ろさせてください。外で腰を下ろしたいだけ。ありがとう、ありがとう。
1203 (前庭の木の下の日陰での雑談、最初は施術師の選択について)
Mm: (Cl がもってきた小枝が代理していた施術師たちについて)施術師たちは女性も男性もいたの? Cl: 全員、女性の施術師でした。 Mm: 全員女性ばかりだったのね。 Cl: あれらは皆、女性でした。 Mm: (全員ちゃんとした)施術師よ。でも先頭にいたのは... Cl: ああ? Mm: みんな施術師よ。でも先頭にいた者。全員施術師よ。私はその人たちが施術師ではないとは申しません。 Cl: でも先頭にいた者こそ、施術師だと?ウシ148は何と言ってますか?[phiga]ですね、これ。 Mm: 3つのカヤ(kaya tahu149)の癒やしの術よ。 Cl: 結構なことです。 Mm: ふむ。
Cl: さて、思いますに、(占いの)施術師が(差し出された)ウシ148を受け取るのを見たら、施術は終了したと言えます。この病気とともに巡り歩いていたきましたが、今、こうして一息がつけました。私の心の内では、私がここにたどり着いたことは、目的にかなったものでした。占い(mburuga)を見に行こうと。そう、この施術師、この人は問題を明るみに出してくれました。言葉はまさしく正しいものでした。私を徹底的に射止めました。私の辿った道筋すべて。さらには、私のこの苦々しい思いもつまびらかにしてくれました。私は、この人こそが私の癒やし手であれと、決めました。私の道筋におけるこの苦々しさのゆえにです。しかし、私がお話するように。どうか聞いて下さい、まず、私がその道筋にそってお話しすることを。 さて、私がここに来て、あなたは占いを打ち、終わり、そして施術師を探してくるように私に言った。私は、施術師として、まず、あなた自身を、そして他の施術師たちを握りました。そしてこのように、彼女は自分自身を施術師としてつかんだのです。というわけで、打ち合わせしましょう。仲良くなりましょう。だってあなたが私に述べられたことは、素敵な言葉(字義通りには「甘い言葉」)だけだったのですから。私は感謝しています。 Mm: あなたは感謝するけど、病人はまだ治ってないのよ。
Cl: 私は感謝しています。私は一つのことに感謝しています。つまり占いに行って、あなたが見た意味ある話そのものを聞かせてもらったことに。そう、この占いは、真実の占いです。 Mm: なあに、どの施術師も同じよ。 Cl: いいえ。他の施術師たちは。あなた、私はもう何度も占いを打っています。他の施術師のなかには、行ってみると、当てずっぽうです。(あるいは)あなたが占い師を動かさないといけない(誘導尋問をする)。「ねえ、これは何でしょうか。」そう言って相手を動かす。でもここでは、あなたは私を徹底的に射止めた。 Mm: あなたがどうやって占い師を手助けするって言うの? Cl: あなたは別の(問題)領域へ(占い師が目を向けるように)手助けするんですよ。 Mm: (トピックを)増やして、あなたが話して上げる。 Cl: だって、普通は、占い師が質問して、あなたがそれに答えるんですよ、あなた。 Mm: 占い師が尋ねる。占い師の方から話すだけなのよね。
Cl: さて、占い師はあなたに問いかける。(問題をかかえている)その人は女性じゃないかい、その人は?さあ、あなたは何て答えます?病人は確かに屋敷にいる女性です。あなたは「はい」と答えるんじゃないですか?でもあなたはさらに、この男(nzigamba ya mulume)と言った。この男は炉について驚いていると。そしてそれも正しい。たしかに私は、私の妻について驚き途方に暮れていた。そして(あなたは続けて)この人は大人だね(と言った)。それも真実だった。自分で言葉をしゃべる(成人)。さらに今、私は彼女が寝ているのを置き去りにしてきた。彼女は腹のせいで起き上がることすらできない。さてさて、これがコケコッコーです150、これが。そして考えてください。今もなおコケコッコーなのです。というわけで打ち合わせましょう。あなたが(治療に当たる施術師として)つかまれたのですから。占いの結果でもあるのです。私は隠し事は嫌いです。(違う人が良ければ)「私はこの人は嫌だ。別の施術師にします」と言います。仲良くなりましょう。良いことです。私たちの合意は、幸運でもあります。だってイスラム系の施術師も、この屋敷にはいらっしゃるんだから(ムリナ氏のことを指している)。私には、この人で申し分ありません。とっても申し分ありません。そもそもこの人のやり方も。さて、私は... (チャリ、クライアントの語りを手で制して、私に向かって) Mm: さ、終わりましたよ、カリンボ。あとは雑談だけ。
別項で述べたように、占い(mburuga)は、憑依霊の施術師にとってもっとも核心となる能力である。憑依霊の施術師としてのキャリアは、最初にムルング(ムルング子神(mulungu, mwanamulungu))を「外に出す」ンゴマを通過することから始まる。そこでは3つのテストが課される。その日の明け方に授与されるムルングの「瓢箪子供」は、主宰する施術師の一人によってブッシュに隠され、施術師候補生はそれを憑依状態で自力で見つけ出さねばならない。これが第一のテストである。次に課されるのが、同じく憑依状態でブッシュに赴き、ムルングの草木を自ら探し出して握らねばならない。これが第二のテスト。そして最後のテストが占い(mburuga)である。
これ以降、施術師は自分がもっている他のさまざまな憑依霊たちを「外に出し」ていくが、そうしたンゴマではテストとしては、その憑依霊の草木を自力でつかみ取るテストのみが行われ、瓢箪子供を見つけ出したり、占いをしたりのテストは以後二度と行われない。ムルングを「外に出し」なおすンゴマをもう一度受ける、つまりゼロからやり直す必要が生じない限りは。
しかし、施術師としての危機は、多くは「占い」ができなくなるという形をとる。チャリ自身も、最初にムルングの「外に出る」ンゴマを受けて施術師となるが、6ヶ月後彼女の癒やしの術は封印されてしまう。つまり占いができなくなってしまったというのである。彼女を苦しめていた病気もぶり返した。憑依霊ドゥルマ人と世界導師のせいだったと後に明らかになったというのだが、彼女が再度、ムルングとともに、ドゥルマ人と世界導師を外に出し、施術師としての活動を再開するまでに4年以上がかかっていた。
多くの施術師が、「外に出た」ものの占いがうまくいかず、あるいは何年か経って占いができなくなり、施術師の仕事をやめている。
1991年にチャリが主宰して「外に出す」ンゴマを受けたトゥシェさんは、「外に出る」以前は「発狂」したり、施術的に意味のある夢(草木を夢のなかで示されるなど)を見たり、有望な新人だったのだが、その後、なかなか自信をもって占いができず(チャリは臆病なだけだと語っていたが)、結局施術師の仕事を続けることはできなかった。1990年に「外に出す」ンゴマで施術師になったムニャジさんも、最初の頃は占いに自信がなかったようだ。占いに訪れた客から逃げたりしていたそうだから(1991/11/02のフィールドノートより)。でもその後は、施術師として大活躍していた。そんなムニャジさんだが、2017年に一ヶ月だけドゥルマを訪問した際に、癒やしの術を放棄してしまっていると噂に聞いた。彼女の癒やしの術が封じられてしまった(占いができなくなった)ことが理由だという。噂では妖術によって駄目にされたとも言われている。今ではすっかり痩せて、かつての面影はないそうだ(2017/08/18のフィールドノートより)。
ここで取り上げた占いは、子供出産祈願のための瓢箪子供(chereko)を差し出す「鍋(nyungu5)」の手続きを具体的に指示している占いの例として訳出したものである。そこでは部分訳だったが、ようやく全訳(及び改訳)した。チャリの占いの施術師としての腕前が遺憾なく発揮されているのがわかるだろう。
これはあまりにも幼稚な愚問で、そもそも答えなどなさそうだが、ドゥルマの施術師たちの占いに同席していて、どうしても考えてしまう問いだった。人間の知らない情報も熟知して、自分が宿主にしている施術師に教えてくれる憑依霊が実在している、というのが一番簡単な説明だが、それは一応除くとして、正反対の味も素っ気もない合理的な説明から始めよう。
施術師のほとんどが長期にわたるさまざまな病気(体調不良)に苦しんできた者である。いろいろな身体症状、精神症状に慣れ親しんでいる。自分の身体をベースにした、疾患の感覚的経験的データベースをもっている。さらに施術師のもとには、さまざまな苦しみや問題を抱えた人々が、その解決のヒントを求めて毎日のようにやって来る。というわけで、ドゥルマ地域の人々が苦しむ諸問題や身体・精神症状についての、一般人にはもてない大きなデータに通じていることになる。したがって、問題を抱えている人が誰であるか、性別、年齢層などがわかると、そうした人が苦しむ可能性の高い問題領域はある程度絞り込まれる。
憑依霊の施術師の行うムブルガ(mburuga)タイプの占いは、相談に来た者は病人(あるいは問題を抱えている人)本人であるよりは、その関係者であることが普通である。さらに相談者は、自分からは誰が病人で、その症状がなんであるかを明かさない。そこから占いの施術師自身に語らせるのである。「キマコには脚が二本のキマコと脚が四本のキマコがある」と述べるところから占いは始まる。前者が人間、後者が家畜にかかわる問題である。それがクリアされると今度は「炉」、あるいは3のキマコ(女性)か、5のキマコ(男性)か。さらにそれが「炉」(女性)のキマコであるということになると、「口をきく、話をする」キマコが「背中に背負われている」キマコかを当てていくことになる。
この段階での間違いは(私の観察では)けっこう起こるが、簡単にクリアできる。つまり「5のキマコですね」と言って、この占いにおけるように相談者の反応を見て、「5が驚いている。5は炉のキマコに驚いているのだ」と言えば、一貫して正しい指摘をしていたことになる。キマコ(chimako)という言葉は、「驚き、途方に暮れる」を意味する動詞ク・マカ(ku-maka)の名詞で、驚き途方に暮れるような問題そのものの意味とも、家族のそうした状態を見て驚いている関係者の反応の意味とも、どちらともとりうるからである。
いったん患者が男か女か、赤ん坊か、子供か、成人かがわかると、例のデータベースに基づいて、彼らが直面している問題もある程度絞られる。病気であることが明らかになれば、施術師は患者の頭から順番に、身体の各部分をたどりながら、症状を指摘していく。「頭痛がしたことはなかったか」と問われて、頭痛を経験したことなどありませんと答えることができる人などめったにない。こうして少しずつ、正しい指摘を重ねていくと、おそらく相談者の反応から、身体的問題の核心に達することも可能だろう。
ああ、つまらない分析。でも、ある程度はそのとおりに違いない。実際、1987年に近所のおっさんに連れられて、最近「ジャコウネコの池」にやってきためちゃめちゃ当たる占いの施術師がいるから、体調不良気味の私のパートナーについて見てもらいに行こうと尋ねたのがチャリであった(その時は名前も知らなかったが)。その顛末は別項で簡単に紹介しているが、ほとんど何の手がかりもない異国の客を相手にチャリはいかにもやりにくそうで(個人的感想ですが)、その占い結果も私にそう強い印象を与えなかった。
相談者は、ご近所ではなく離れた場所に住む占いの施術師を求める。ご近所の施術師は、最初から相談者の抱えている問題が何であるかを知っている可能性があり、それを言い当てたからといって、占いの能力を示したことにはならない。とはいえ、流石に日本ではあまりにも遠すぎたのだろう。
しかし占いの施術師の能力が、こうした地域の人々が直面しうる諸問題のデータベースを元に、若干の当て推量と論理的推論によって、相談者が印象付けられ、納得できる物語を生成しているのだと考えてしまうことは、単につまらないだけではなく、実態にも反している。 それは占いの施術師にとって自らの健康にもかかわる、突然占いができなくなるという経験を説明できなくする。記憶喪失でも仮定しない限り、占い師がこうしたデータベースを喪失するとは思われないし、論理的推理能力を失うとも思われない。もし上記の説明が正しいなら、占い師はそう簡単に、その占いの能力を失うはずがないのである。
さらに、施術師自身が語る占い時の経験がある。たとえばチャリは、占いの際に自分は憑依状態になっている(ku-golomokpwa)訳では無いと主張する。普段通りだ(「素面である(matso mafu)」)という。「mburuga17の際、nyama151はmuganga156に実際にしゃべって教えてくれるのだという。右耳の後ろの方で声が実際に聞こえる。あるいは頭の中で実際に声が聞こえる。」(1990/01/08のフィールドノートより)のだそうだ。
もちろん「素面である」という言葉は額面どおりにはとれない。四六時中、右後から見えない誰かがひっきりなしに話しかけてくる、なんていうのは全然、普通ではない。おそらく占いのキティティ(chititi23)を目を閉じて耳元で振り鳴らしたり、伏せた箕の上に広げ撒いた灰に左手の中指でなにやら模様を描いてそれを注視するといった、占い特有のセッティングで、声が聞こえたりするようになっているのだろう。でも本人にとっては、まだ普段通りの感覚なのだ。たぶん。
とは言うものの、調子が良いときには屋敷にやって来るクライアントの姿を見ただけで、どういう件でやって来たのか、何が困難の原因であるのかまで教えてくれるので、占いを開始したときには、ほとんどすべてが分かっている、などとも言う。かなり誇張も入っているのかもしれない。しかし占いにおける事実究明が占いの施術師の能動的な営みであるというよりは、受動的な経験として捉えられていることは否定できない。
だからこそ、憑依霊が語る声が聞こえなくなってしまう、つまり占いができなくなってしまうということが起こりうるのだ。しかもかなり頻繁に。なにか憑依霊たちを怒らせるようなことをしてしまっている、と解釈され、いろいろやってみて、しばしば成功し、再び占いができるようになる。こんなことを繰り返している。あくまでも憑依霊など実際にはいない。占いは施術師がもっている膨大な住民悩みごとデータベースに基づく推論プロセスの産物であるという見方に拘るとすれば、データへのアクセスも、推論も、本人の意識的な営為であるというよりは、「前意識的」なプロセスに近いものであると考えるしかないだろう。
占いの語りは、前もって厳密に定まった筋書きやプランに従って展開するわけではない。が、すでに述べたように、一定の流れはある。冒頭で、問題を抱えている人の性別、年齢層などを確定した後に、施術師は頭から始めて、身体の各部を順番に「見ていく」。そして箇所ごとに「見え」た、「聞こえ」たことを語る。憑依霊はしばしば「嘘をつく」ので、本当かどうかをクライアントに確認しながら進んでいかねばならない。
こうしたプロセスのなかで、占いは一気に核心に向かって進んでいく。さて、これを私が真似しようとしてもできるわけがない。なぜなら私には、何も聞こえてこないし、見えないから。できるのは当てずっぽうの推量しかない。当然、まったく当たらないことになる。見えてきたり、聞こえてきたり、というのは、実際に見せてくれたり、教えてくれたりする憑依霊がいないとすれば、上で提案したような、意識でダイレクトにアクセスできないデータベースへの前意識的なアクセスとしか考えようがないだろう。こう説明したからと言って、何かがわかったわけではないけれど。
予想していなかった思いがけない方向への転換がしばしば見られる。こうして思いがけない症状とそれに責任があるエージェントが次々に登場してくることになる。このケースでは当てはまらないが、当初しばらくは、妖術の可能性はないとしておきながら、途中から妖術も原因の一つに挙げられる、といった首尾一貫しない展開も、普通に見られる。このケースでも、最初は「簡単な仕事」だと告げておきながら、途中から「難しい仕事」に変わってしまったり。
最初に下腹部の症状、病変にたどり着き、すぐに月経の異常の指摘へと進み、そこで「簡単な仕事」と断定したものの、すぐに患者の腹の中をまるで動き回っているかのような「なにか」が見えてくる。それこそが彼女の妊娠をさまたげている、カシディの病気44の主、憑依霊ドゥルマ人である。
そこで提案されるのが、 (1)憑依霊によって引き起こされている不妊に対する標準的対処 子供を養う瓢箪子供チェレコ(chereko30)を望んでいるムルング子神に瓢箪子供を約束するための7日間の「鍋」である。 その際に口を開けていない瓢箪が用意され、ムルングに対して示され、屋内のキザの脇に置かれて、患者とともに薬液を浴びさせるように指示される。 「鍋」は薬液(vuo)を入れたキザ(chiza2)あるいは池(ziya3)とセットになっているが、鍋の蒸気を浴びたすぐ後に浴びる「屋内のキザ」はムルング子神のためのもの、その後外に出て浴びる「戸外のキザ」は、ムルング子神の子供たちであるとされる池系の憑依霊キツィンバカジ、ライカ、シェラ、憑依霊ディゴ人のためのものである。 7日間の鍋が終わると、瓢箪は寝台の脚元に置かれる。 無事妊娠し、出産すると、瓢箪子供は口を開けられ、中に「心臟」と「血」と「内臓」を入れて完成され、徹夜のカヤンバを通じて、ムルングに正式に差し出される。これについては詳しくは別項参照のこと。
(2) その後同じく、彼女の妊娠を妨げて、より厄介な問題にしている憑依霊ドゥルマ人のための12日間の「鍋」。(占いの中では言及されていないが、ドゥルマ人のための鍋も、同様にドゥルマ人のための薬液とセットになっている。
(3) 上記の指示を与える直前に、チャリは患者の女性の睡眠時の奇妙な癖について触れていたが、上記の指示を与えた後に、チャリはイスラム系の憑依霊に対する大皿施術を指示する77。彼女が夜ごとに夢で見るもの、と婉曲的に表現されているのは、夢の中での若い男との性交である。憑依霊スディアニ導師、またの名をペーポームルメ(憑依霊男73)、さらに別名ツォヴャ(tsovya86)は、自分の宿主の女性と夢のなかで性交し、そのせいで彼女は夫とちゃんとした性交がもてなくなる、さらに極度に潔癖な霊とされ、母親の衣服の排尿する幼児を嫌い殺してしまう習性ももつ。大皿とンガタ(ngata36)はこれらのイスラム系の霊のための応急施術である。 さらに厄介なことに妻が男性のスディアニ導師をもっているだけでなく、クライアントである夫の方にも女性のスディアニがいる。そして彼も夢の中に現れる美女と寝ていることが判明する。そして最後には、二人が夫婦としての性行為をちゃんと営めていないことが明らかにされてしまう。ときとして夫は性的な不能に陥りさえしている。こうして夫婦の不仲まで、チャリは明らかにしてしまう。これらの問題は、大皿の施術を必要としている。
(4) しかし、まずはムルングの鍋とキザ、そして憑依霊ドゥルマ人の鍋である。大皿はそれからでよい。
(5) このように結論づけたときに、チャリにはすでに全く別の問題が見えている。それは屋敷全体にかけられている妖術の問題である。いったい何をきっかけにして彼女にこの問題が見えたのか、まったく見当もつかないが、彼女が指摘した通り、屋敷を構成するすべての男性が互いに不和になり、ばらばらになっていることが判明する。これにはフュラモヨ138の妖術に対するクブェンドゥラ(kuphendula)139が必要だ。
(6) 最後に、チャリは母親のもっている憑依霊のせいで、彼女の子供にまでトラブルが及んでいることを指摘し、ムルングの鍋の際に、戸外のキザは子供たちにも浴びさせるようにという指示で占いを終える。
締めくくりは、施術にあたる施術師の選択である。クライアントは5本の小枝を持ち帰った。チャリはそのうちの一本を選び出すが、偶然にも、それはクライアントがチャリのつもりで折り取った小枝であった。
すっかりチャリの占いに「やられ」てしまったクライアントは、チャリを激賞する。
占いのこのような展開を、いったい誰が予想できるだろうか。チャリの占いだけがとりわけよく当たるわけではない。施術師は自分で自分を占うことができないので、チャリたちは自分たちに降り掛かった問題の解決のため、頻繁に他の占いの施術師を諮問する。それにも何度かつきあったが、どれもけっこうよく当たるのだ。 こうした占いの力は、結局は占い師のもっている憑依霊の力である。占いは、憑依霊の実在性の源泉のかなり強力な一つであるという気がする。
↩
↩
↩ ↩ ↩
↩ ↩
tsovyaの別名とされる「内陸部のスディアニ」の絵 ↩ ↩ ↩
↩
↩ ↩