(from diary of 1991/9/8 Sun, kurimaphiri1)2
Murinaの父親のk'oma3に訪れられたという話。どうやらhanga ivu12を要求しているらしい。この件で急遽mulamulo16を打ちに行くことに。 キナンゴに行く途中でチャリがMurina相手に、詳しい夢の内容を話し始めたので、途中からだが録音させてもらう。...その足ですぐにムラムロを打つMwadalu氏のところへ行く。キナンゴといってもハズレの方で、ずいぶん遠い。Kad....のムラムロと同じ種類のもので、地面に棒を置き、灰をまく。口の中でもごもご唱えごと。棒の両端に灰をつけ、一方の端を胸の乳房の内側辺りにつけ、腕をのばして棒をそれに沿わせる。MurinaとChariの説明を聞いて、棒を数度、宙を切るように振り、その一方の端を胸に当て、もう一方の端が掌のどの位置に達するかで、イエスかノーになる。かなり作為的な操作が可能にみえる18。 それはともかく、祖霊の話はほとんどそっちのけで、妖術の話が中心。困ったのはMurinaが、Ponta(pseudonym)氏とその妻を妖術使いとして訴えようとしているらしいということ。実際に一旦このステップが踏み出されてしまうと、もう事はどちらか一方が破局を迎えるという形にしかならない。できれば止めて欲しい。
(from fieldnote of 1991/9/8)19
棒を腕の付け根にあて、腕に沿って延ばし、もう一方の先が掌のどの位置に届くかでyes/noの答えがでる。 棒の先が掌までしか届かなければulongo21、指より先になったらkpweli22
という訳で祖霊が夢に出てくる話だと高を括っていたのだが、話がなにやら不穏な方向に向かっていて、戸惑う。おまけに、ここでは深入りしないが(おそらく別ページで扱わざるを得ないだろう)、チャリがムリナに抱いている不信感にまで触れることがあって、この後どうなるのか困ってしまった一日になったのだった。
最初、挨拶を交わしてそのまま世間話をしているのかと油断していたら、いつのまにかムラムロが始まってしまっていた。という訳で、途中からの許可を得ての録音である。
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Murina(Mu): 問題がどっと出てきている。問題は山積み。病気(の問題)は後ろの方。でも病気の問題だというのなら、それもOK。ああ、話し始めて下さいな。 Mwadalu(Mw): あなた、匠の方、いったい何の問題なんでしょう。なぜ問題がどっと出てきているんでしょう。病気とその他の問題が拮抗しています。 Chari(C): じゃあ、私が説明しましょうか? Mu: 要するに、それらの問題を見てきたのは、他ならぬお前だものね。私の、私の方は一応脱している。私が対処して以来、奴らが今どのあたりにいて、何を考えているかだね、私の問題は。奴らは、今のところまだ私からは手を引いている。私の問題と言えば、そんなところ。でも私は、お前の方の問題が心配なんだよ。 Mw: なんとなれば、あなたは心配だからと。あなたは言う。いいや、行って見てもらおうと。なぜなら、あなたの気がかり、あなたの心配。 C: 私たちは二人そろって心配があるのよ。二人とも混乱まではまだ目にしてません。でもいろいろなことが、不調なのよ。
Murina(Mu): あの連中がもう手を引いたのか、それとも、あのびっこ(gbwidi23)のように(ムリナの反撃のせいで脚を引きずりつつも)、この先さらに攻撃しようとしているのか。 Mwadalu(Mw): (妖術は)立ち去ったよ。あの連中は臆病者たちだ。 Mu: (私に対する攻撃を)さらに増やしたのでは? Chari(C): 先日も、何日か留守にしたあいだに、彼はやって来て屋敷の外れに(妖術の薬(muhaso24))撒き散らしをしたのよ。 Mu: ほらそこに、もう薬そのもの。私も私の対処術を施しましたよ。それが役に立ったか、役に立たなかったか、わかりませんがね。 (女性が立ち寄り、挨拶を交わす。ムァダル氏はムラムロの棒を操作する。口の中でもぐもぐと何かを問い、ムラムロの棒を振ってはその先が手のひらのどの辺りに届くか確認している)
Mw: 奴らは今ごろがっくりきているよ。ずいぶんやったのに。あなた方は3人になってたでしょ?(浜本を施術上の)子供にしたんでしょう?その事が奴らの頭を悩ませています。奴らは言っています。「あいつを打ち負かすことはできないんじゃないか」と。奴らはとても苦々しい思いでいますよ。今ごろ。 C: (ムリナに向かって)ねえ、私あなたになんて言った?(ムァダルに向かって)たった今、この人にそう言ったばかりなのよ。
Mwadalu(Mw): この人(浜本)もその場にいる。彼は何のツタを掴もうとしているんだろうね25。私はその場にはいないけど。 Murina(Mu): (妖術使いたちに)問題が引き起こされたときから、今に至るまでね。 Mw: 今も、連中はがっくり来てますよ。あなたがたを駄目にする良い方策を求めているところ。でもまだ(手に入れていない)。 Chari(C): 駄目にする方策をまだ探し求めている、この人(浜本)が心変わりしてしまうようにと。 (ムァダル氏、ムラムロの棒を操作する) Mw: この人はここに留まろうと言っていますね。彼は朋友を手に入れた。 (ムァダル氏、ムラムロの棒を操作) Mw: だから、連中は脚をつっぱらせて痙攣している。 C: そもそも、彼の家は別の場所なのよ。私たちのこの土地には、ただやって来ているだけなの。 Mw: じゃあ、やって来るところを見られたのかい? Mu: でも、今住んでいるところは、私たちのこの土地なんだよ。
Mwadalu(Mw): なるほど、彼は自分の住む場所をもっている。そして、もし彼が施術師と仲良くなると、お前さんは何かを乞うことになるだろうと見られている。連中は、そういうのが(そのようにしてお前が利益を得るのが)気に食わないんだね。だって、彼が来て、お前さんがなにか困っていると見ると、彼は助けてくれないだろうか? Chari(C): それはそれはよく(助けてくれるわ)。 Mw: その助けてもらえるってことが、連中には気に食わないんだよ。 Murina(Mu): 気に食わない、気に食わない。 (ムァダル氏、ムラムロ棒を操作) Mw: そこで連中はツァムラ(tsamula26)を、フュラモヨ・ジメネ(fyulamoyo27 dzimene28)、つまりンザイコ(nzaiko29)を置いたのさ。人々が順調に仲違いするようにとな。ツァムラはな、お前さん方がこちらをつかむなら、つかませてやる、でも事はうまくは運ばない、というものだ。 Mu: さて、(フュラモヨについては)私はすでにそれを始末した。ところで、私はできたのだろうか、それともフュラモヨに負けてしまったのだろうか。 (ムァダル氏、ムラムロ棒を操作) Mw: ねえ、お前さんがそれを見たとき、お前さんもショックだった。 (再度、ムラムロ棒を操作)
Murina(Mu): 私はその日のうちにそれを始末したよ。そいつ(フュラモヨ)は翌日を迎えることはなかった。わたしに(そいつの始末が)できたのか、それとも失敗したのか?というのも、妻が先日(dzuzi30)危うくロープで首をつるところだったのを、この目で見たんだ。ああ、この人は、(妖術の薬に)捕らえられていたよ。 Chari(C): うう、うう。私は捕らえられなかったわよ。 Mu: ああ、なあ、それ(フュラモヨ)は、どんな具合いだい?...しかし、この人は縄を自分に括りつけていた。(フュラモヨ)は彼女をしっかり捕らえていたんじゃないかい? Mw: (ムラムロ棒を操作し続けながら)彼女はやられてしまっていた。やられてしまっていた。やられてしまっていた。薬液(vuo32)は浴びたかい、彼女。 Mu: それどころか、昨日はマヴァンダ(mavanda33)で彼女をなんども打ってあげたよ。つまりその不安を鎮める(字義通りには「冷やす」)ためにね。 Mw: 彼女の心臟は上がっていた(上の方にあった(u dzulu34))のかい? Mu: そう。 Mw: ああ、この奴らのフュラモヨは、人々が互いを悪い奴らだと罵り合うようにするものだ。なぜなら、もしお前の連れ合いがお前を叩くと、お前は腹をたてて、それこそしたたかに相手を殴るだろうから。
Chari(C): あのね、昨日あいつらがここ(チャリたちの屋敷に)いるんだけど、私が眠っていると、彼らは夜通し死んだ人間たちに殴られてました。私は彼らを叩かなかったわ。彼らはこの人の母親に叩かれたの。でも昨日の昼間は、彼らは屋敷にはいなかった。 Mwadalu(Mw): (ムラムロ棒を操作した後で)女性二人だね。 Murina(Mu): あいつらは別の(妖術の薬(muhaso))を探しに行ったんだ。でも徒労におわるだろうね。だって、彼らがやって来たとしても、すぐに私がそれ(その薬)を冷してしまうからね。 C: そもそも先日、一人(二人の女性の夫=ポンタ(仮名)氏)が、二人(彼の二人の妻)相手に話し合っていたのよ。あいつらは彼らの「口(mulomo)35」(悪口=後出の「チャリが死ぬだろう」発言)を述べたの。私が思うに、その人(ポンタ(仮名))は以前から聞かされていたのよ。でも先日は、あいつらは(ポンタ(仮名)に)あからさまに口に出して言ってました。彼らには私が見えなかったから。 Mw: 「あの女、あの女」あいつらはその女にどこに行って欲しいのかな?彼女はその夫と暮らしているのに?
Murina(Mu): 別れの挨拶をしようと?それとも、必要な品(妖術を掛けるのに必要な、犠牲者の持ち物の一部など)をもって立ち去ろうと?それが何か、私にはわからないが。 Chari(C): 今こそ、私は知りたいわ。「あなたはここキナンゴで死ぬでしょうよ。たとえ嫌でも」と、どうして彼女が言えるのか。さらに(私の)身体に彼らが注ぎ込んだ薬(妖術の)は何か。それを(その薬を)私は壊せないのか。あるいは、彼らは他の攻撃をいまだに探しているのか。というのも、あいつらは一昨日言ったんだもの。「お前はここキナンゴで死ぬでしょうよ、たとえ嫌でも」って。「こうして暮らしている今も、私は彼女が必ず死ぬって見ているわ」って。というわけで、(薬を)まだ探しているのか、それともその薬はすでに身体のなかに入っているのか。死ぬのは人間の定めと知ってるけれど、それは怖いことでしょ? Mwadalu(Mw):(ムラムロ棒操作後)そいつは今(妖術の薬を)探しているところだよ。でも今のところそいつには無理だ。 Woman(Mwadalu氏の家族の(W1)): そいつは愚か者よ。だって友人に向かって「あなたは死ぬだろう」と言うなんて。人がいつ死ぬのかなんて、人にはわからないものなのに(ムルングじゃあるまいし)。 Mw: (ムラムロ棒操作後)ああ、この人は死なないよ。この人は。 C: そして彼(ムリナ)もね。
Murina(Mu): さて、じゃあ、そいつが(その目的を達することが)できるだろうか。 Mwadalu(Mw): (ごく短時間のムラムロ棒操作)お前さんが素早いからね、そいつは何もつかまないだろうね。 Chari(C): ところで、私は? Mu: 私はあの女を捕縛して、思い知らせてやる。そして必ず食べさせてやるよ(キラボ(chirapho36)を)、そいつに。 W1: その女をもし捕まえれば、彼女はそのまま(キラボを)食べに行くことになるわよ。 C: ああ、ああ、あなたは「あなたはキナンゴで死ぬ」(発言を)見たの? Mu: だって、彼女自身が一昨日私にそう言ったんだよ(そう言っているところを私は聞いた)。彼女には私はぜんぜん見えていない。彼女が見たのはこいつ(チャリ)だよ、私は後ろの方にいたんだ。 C: その「口」(うわさ話、悪口)が述べられたときに、連中は言ってます。あの白人(浜本)は占いを求めにやって来るよと。 Mw: (ムラムロ棒操作の後に)(妖術使いたちの言葉)「よし、奴(浜本)が遊び半分なら(無防備なら)、彼を痛い目にあわせてやる。そこにやってきて、奴が遊び半分なら、奴は痛い目にあうだろう。」
Murina(Mu): 彼は傷つかないよ。彼はしっかり(妖術に対する)防御を施されているから。 Chari(C): だって彼女(妖術使いの女)は、あの晩、死んだ女性から杖で二回もぶたれたのよ。 Mu: 彼(浜本)は傷つかない。だって、彼自身が言ってるように、彼はモノ(妖術)に捕らえられないからね。 C: そいつは私の貧しい子供(浜本)を殺したがっている(妖術で)、と噂されてたわ。 Mwadalu(Mw): (ムラムロ棒を操作した後に)そいつの日はもうすぐだ。今の進行具合だと、そいつの日はすぐだ。だってそいつ(その女妖術使い)は、モノ(ムリナの愛)を巡って争っているんだから。手に入れる確信もないのに。 Woman(W1): 何を巡って争ってるって? Mw: そりゃ、お前... C: ああ、彼女は男がほしいだけよ。 Mw: まさにそういうこと。私は彼女がモノを巡って争ってるって言ったろう。そして...
Murina(Mu): 彼女がその男(ムリナ)を好きになるがいいさ。彼女がその男に言い寄ったりすることはなかった。 Chari(C): ああ、そいつ(彼女)が「あいつ(チャリ)は死ぬだろう、そうすれば嫌でも私がこの場所を支配するわよ」って言ったとすれば。 Mu: 私は(彼女なんかに)用はない。 C: 「彼女は死ぬ、そしたら嫌でも私がその場所を支配するわ。」そうしたらあなたはどうするの? Mu: 私なら、彼女をチェアマン(cheamani37)のところに連れて行くさ。まず最初にふん縛ってやるが。その後で、チーフの法廷に、チーフの許可をもらってキラボ(chirapho36)に。彼女を妖術使いだとしっかり告発してやる。お前は私の妻を殺そうとしている、お前は。私は言うよ。彼女は何も言わないかも知れないが、私自身は言うよ。彼女とともに(キラボを)食べるのも、私本人だ。
Mwadalu(Mw): (ムラムロ棒操作の後に) もし彼女(その女妖術使い)が先に進めば、(キラボに)捕えられるよ。彼女に同情してしまうくらいに。 Murina(Mu): 同情なんかするもんか。 Mw: お前さんが彼女を告発しさえすればね、彼女はもう血を流すことだろうよ。 Chari(C): いえ、いえ、妖術で彼女を告発することはね、妖術に関しては、彼女を告発する必要はないわ。彼女は、彼女の発した罵りの言葉だけで、もうアウトよ。「彼女はここキナンゴで死ぬでしょう、たとえ彼女が欲さなくても。彼女の病気は死ぬまで治らないわ39。」の言葉でね。 Mu: 「死ぬまで治らない、とはどういうことだ?お前はいったい何(どんな妖術の薬(mihaso24))を設置したんだ?なぜだ?私の妻が治ることはないというお前の言葉は、私の心を動転させる。お前のこの罵りは、...」(ムリナはここで、その女妖術使いを問い詰める様を自演している) C: さて、私は(この土地を)たち去るよう願われているのね。もしたち去らないとしたら、死ねばいいのにとね。つまり、彼女が欲しがっているのは、空きスペースよ(チャリがいなくなってムリナの妻の場所が空く)。 Mw: (ムラムロ棒を操作しながら)さて、彼女は人(ムリナ)を欲しがっている、そしてその人(ムリナ本人)は、気にもとめていない。
Murina(Mu): はあ、このつきまとい、なんだってんだよ。 Chari(C): 果ては、死んだ人たちに叩きのめされることになる。 Mwadalu(Mw): (ムラムロ棒を操作した後に)お前さんは、同意していないんだよな。 Mu: 私にはなんの関係もない。なぜなら彼女になんの用もないからだ。 Mw: (その女妖術使いが)もしこの人(チャリ)を僚妻(wawe40)と呼ぶことになったら、(それでも)同意しないのかい?(つまりチャリとその女性を二人とも妻とする可能性について尋ねている) C: 彼女が、私を僚妻と呼ぶようになるって? Mu: そもそも私は彼女が嫌いなんだよ。彼女はだめだ。ほとんど私の人生を駄目にしそうになったんだから、彼女という人は。あんた、そもそも私を嫌ってるだろう、私をとことん嫌ってるだろう。 Woman(W1): つまり、以前、あなたの妻だったの、それとも? Mu: いつどこで俺の妻だったてんだよ!まったく何の関係もない人だよ。 W1: おお。私、あなたの昔の奥さんだと思ってたわ。もしかして最近離婚したとかと。
Murina(Mu): ああ、言うなら魔物(majine41)だよ、あんた。 Woman(W1): (大笑い) Mwadalu(Mw): (ムラムロ棒を操作の後)この、僚妻(wawe yuyu)だけど、そいつ(女妖術使い)は、自分でそこに入り込もうとしている。つまりお前さん(チャリ)をこの人(ムリナ)と仲違いさせてね。でもこの人には彼女にとりあう気はない。 Chari(C): いえいえ、その仲違いにしてもね、私は自分の心(roho43)を鎮めるわ。仮に二人が好きあってるとしてすらね。でも、私は何も心配してないわ。彼女が私にすることなど何もない。私、普通、妻が夫を護ってあげるものなの?私の心(roho)こそ私が護ろうとするものよ。 Mw: (ムラムロ棒をごく短時間操作)でも、この人(ムリナ)にはその気がない。なんとなれば、仮にその気があるなら、そう、私は... C: ところで、あの(妖術使いの)仲間たち、夜通し(ムリナの母に)叩かれていた連中、あいつらだけど、例の青年(muvulana)、私たちが以前その施術上の子供だと言った人のことなんだけど、彼は彼女(女妖術使い)と友だちになった(性関係も含意)のよ。全員やって来て、やつら全員、ぶちのめされたわ。
Murina(Mu): その若造がどの場所をもっているかって?同じ一味だよ。全員であの世に行けさ、あいつら。(妖術の)薬も、夫が調達している。 Chari(C): さらに、すぐに身分証明書の件がやって来る。皆、クワレ(Kwale44)まで行って身分証明書を受け取りに行く。そこに行って奴らと出遭ったら、そのまま場所(法廷)に突き出すわ、あいつらを。 Mu: 身分証明書はどこに行った? Mwadalu(Mw): (上のやり取りはスルーして、別の問いをムラムロ棒に諮る)さて、私たちの癒しの術は、後退するんだろうか。(ムラムロ棒操作)さらに、かれら二名は自分たち同士で口論する。 Mu: 奴らは罵り合うのか? Mw: お前さんは、お前さんの行こうと望む道を歩めば良い。お前さんの望むように。つまり、そいつを訴えたければ、お前さんはそいつをがっちり引っ掛けるさ。 Mu: そもそもそいつは法廷には現れないよ。出頭しないだろうよ。
Mwadalu(Mw): (ムラムロ棒を操作しつつ)もしお前さんがそいつに来るようにと、まずは人を遣ってそいつに、チェアマンのところに来るように(白黒つけるために)と、言ったら、まあそいつはとっても怯えるだろうね。 Murina(Mu): その女(妖術使い)がかい? Mw: その女さ。来れば、チェアマンの(話し合いの)場で、問いただされることになる。もし拒絶しないとしても、論争は終わりにしましょうというだろうね。 Mu: もし彼女が拒めば、私はキラボに行こうと彼女に言うさ。 Chari(C): その件ではいろいろ話されているのを知ってるわ。彼女が言うには、ジラ(人名)のところに訴えられたなら、行きませんと。カンガ・ワ・ニャワのところでも、行きませんと。 Mu: 私としては、彼女を訴えるとしたら、彼女を逮捕して、彼女を連れて行きたい。私にとって重要なのは、真実を知ることだ。彼女を逮捕するさ。全部いっしょに。手錠で彼女を連れて行くのは、そいつ嫌がるよな。 Mw: 彼女が同意しなくても、もう行くだけだね。
Murina(Mu): そいつの相棒も一緒にだな。あいつ、「ムリナは妖術使いだ。奴は彼女に『不思議のヘビ(nyoka wa tambo45』の妖術を仕掛けた」などと吹聴しているやつ。ああ、私は彼ら全員を、手錠で連行してやる。バス(taransipoti)に乗るときもな。というのも、万一奴らがチェアマンのところで勝ったとしても、私はやつらをチーフ(chifu)のところに連れて行ってやる。 Mw: そもそも、お前さんがこの問題を話しに行けば、やつらは、ここ屋敷内で話し合って終わりにしようと言うだろうね。 Mu: いや、いや、私はそれは嫌だ。チーフの所まで行く、そして次いでキラボ36に行かせよう。 Mw: (ムラムロ棒を操作)キラボはやつら避けるだろうね。やつらはキラボを嫌っている。なぜならもし自分たちがキラボに行くと、自分たちが捕まるとわかっているから。 Mu: ああ、だからこそ私はやつらをしっかり縛ってやりたい。私はなにがなんでも、やつらが私の妻に何をしたのか知りたいんだ。 Mw: お前さんが奴らを縛ったら、お前さんはやつらを仕留めたことにはなる。
Mwadalu(Mw): (つづき)なぜなら、かれらはきっと一連のごたごたと手をきるからだ。もしお前さんが、やつらにお前さんを恐れるようにしたいなら、お前さんの言ったように、お前さんは頑張るだろう、そう頑張れば良い。果てはやつらが(牢屋に)ぶち込まれ、罰金を課されるようにも。やつらはますますお前さんを憎むことになる。なぜなら、人(妖術使い)がお前さんを追い求めているなら、そいつはお前さんの力を見定めるために追い求めているからだ。やつらは、この人(チャリ)との愛を破壊したがっている。 Murina(Mu): 私は、やつらが雇った施術師たち(実際に妖術攻撃をした妖術使いたち)に用がある。私がやつをキラボに連行したとしたら、私もいっしょにキラボに行くよ。やつらが(キラボに)捕らえられたら、私はやつらに問いただすさ。やつの(が雇った)術者たちのことを何もかも。口頭で喋らせてやる。その後は、それらの術者をやってやる。 Chari(C): でも彼らは呼ばれた(雇われた)だけの連中だ。あなたの(敵の)妖術使いは、彼(ポンタ(仮名)氏)よ。 Mw: (ムラムロ棒をちょっと操作した後) あれらの術者たちは入ってこないだろうよ。そうじゃなくて、お前さんの敵はあいつだよ。
Mwadalu(Mw):(つづき) お前さん、もし私がお前さんに薬(muhaso24)(妖術に用いることができる)を所望したとする。私はあなたに言う。(その薬を)私に下さい。私は家に帰って、その先のことをします。私はお前さんにお金を差し出さないだろうか?お前さんも、お前さんにとって、その薬に何の用があるかというと、それで代金が得られるということじゃないかい?さて私はお前さんにお金を払い、立ち去る。私は自分の所(あるいはキラボの場)で、捕らえられたとする。私がこちらにやって来て、(薬を売ってくれた者に対して)何ができるっていうんだい?彼は(手に入れた代金の一部で)軽食堂(hoteli46)でお茶でも飲んで、ただ立ち去った。それだけだろ? (チャリは黙ってムァダル氏に3本の小枝を差し出す) Murina(Mu): さあ、私はね、今ややつらをとことん訴えてやりたい。チェアマンのところでやつらを訴えたい。そして、チェアマンのところが終わったら、私はチェアマンにすっかり(すべての経緯を)述べるつもりだ。 Mw: (ムラムロ棒を操作し、3本の枝のうち2本を示しながら)こいつとこいつ、お前さんがこの二人を捕まえたなら、二人は互いに罪をなすりつけあうよ。最後には、やつら、仲違いしてしまうんじゃなければ、続いていくかも知れない。でも、二人は二度と良い関係にはならないだろう。こいつとこいつは、こいつとも関係は良くない。
Murina(Mu): じゃあ、もし私がやつらにそうしたら、そこ(牢屋や処罰)を終えた後に、やつらはまたその道に戻ってくる(再び私たちに妖術を掛ける)のだろうか?教えて欲しい。 Mwadalu(Mw): (ムラムロ棒を一度だけ操作)言っただろう?やつらはやって来て「何が悪かったのか教えてください。終わりにしましょう」って言う。お前さんにすでに言ったじゃないかい? Mu: 誰に間違いを詫びようって言うんだ?私は妖術使いと友達関係になるつもりはない。 Mw: (彼らは言うだろう)「お父さん47、もう終わりにしましょう。私が間違ってました。もう終わりにしましょう。」 Mu: いやいや、あいつら弟子たち(anamadzi48)は放っておけ。私は妖術使いの連中を問題にしている。 Mw: なに、妖術使いがこいつなんだよ。お前さんの(施術上の)子供と、この女性と。お前さんの弟子だった(施術上の)お前のこの子供。お前はそいつにモノ(自分たちに妖術を掛ける際に用いる媒体)を教えたんだよ。そしてこいつ、ここで最初にお前さんにわたしが与えた(妖術使いだと指摘した)こいつ(ポンタ(仮名)老人)。さらに、こいつも、密かな企みを裡にもっている。なぜならこいつこそ、連中のなかの男なんだから。そしていまでは互いに二度と口も聞かなくなってるよな。
Murina(Mu): あの長老本人? Chari(C): そしてそいつは(薬、おそらくは妖術攻撃から身を守る薬を)しっかり噛み締めた。 Mu: 今のところ、私はこの女性、こいつをひねってやりたい(告発の被告にしたい)。この女をひねって、そして叩いてやりたい。 Mwadalu(Mw): お前さん、この女(ポンタ(仮名)氏の妻の一人)を捕まえるなら、こいつがこの人(ムリナ)にまとわりついていた張本人なのかい?まだ年若いガキじゃないか。 C: そいつよ。 Mw: (ムラムロ棒を一回だけ操作)おしゃべりな女。さてこいつと、こいつ。 C: こいつはその屋敷にいる息子の嫁、そしてこちらはあのトタン屋根の小屋にいる女。 Mw: 先日結婚式が行われた場所? C: そうよ。
Mwadalu(Mw): (少しムラムロ棒を操作した後) ああ、この長老はあまり良い人じゃないな。 Murina(Mu): 全然、良い人なものか。 Mw: 見るといつも白いターバンを巻いている。危険な奴だ。(さらにムラムロ棒を操作する) でも奴らはお前には敵わないよ。奴らと対峙したら、奴らはお前さんを恐れるだろうよ。なぜなら、誰かがお前に危害を加えようとするのを見たら、「お前がそれ(大便)を出すときには、それを握ってはならない」諺解題って言うじゃないか。 Mu: なぜならもはや妖術ではなく、あとは互いに敵対しあうだけっていう訳? Mw: 奴らは、「あなたはどうなさるおつもりですか」と言う。「ねえ、その土地は他人に切り分けられるものでしょうか?(反語)」と59。 Chari(C): やつら死んじゃえ、死んじゃえ、死んじゃえ! Mu: 私がこだわっているのはたった一言だよ、ムァダルさん、「お前はここキナンゴで死ぬだろう、そして(その病気は死ぬまで)治らない」という言葉だ。
[諺解題]:「なにか事を起こそうとするなら、躊躇してはならない」という意味の諺だというのだが、なんだか汚えなあ。
Mwadalu(Mw): それこそが奴らの言いぐさだよ。 Murina(Mu): その言いぐさによって、私ムリナは奴らをふん縛ってやる。私は絶対放っておかないぞ。私は問い詰めるぞ。それがたとえディストリクト・オフィサーの法廷であっても、私はそいつを問い詰める。たとえ(クワレの)治安判事裁判所であろうと。やはりそいつを問い詰めてやる。 Chari(C): 私の今の状態を理由にね。 Mu: 私自身は、妻の治療に専念しているけど、一向に良くなる気配もない。夜明けのたびに、彼女の口にするのはそれ(「私は死ぬでしょう」という言葉)だ。夜明けのたびに口にするのはそれだ。お前はいったい彼女に対して何をしたんだ!もし彼女がお前に負債があるというのなら、彼女が何を借りたんだ?言えよ。私がお前に払ってやる。なぜならこの人の主は、他ならぬ私だからだ。 Mw: (ムラムロ棒をひとしきり操作した後) ところで、お前さん、お前さんの心のなかでは、どのあたりのことを考えてるんだい。自分がそこにいるだろうという場所(これから住もうと考えている引っ越し先)、それはいったいどこだい? Mu: ああ、私のこの心は、いまだに、あちこち彷徨っているよ、キョウダイ。まだ模索しているんだ、だって...
Mwadalu(Mw): そのこと(移転)について話していたのは、お前が感じている苦々しさのためだろう? Murina(Mu): でも私自身はまだ模索していたんだ。 Chari(C): 私自身としては、私を太らせてくれる太い太いキャッサバができる場所が、いいかな。 (以後、移転先のさまざまな選択肢についての語りがしばらく続く。翻訳は省略。他の父系クランの土地であっても、親族のつながりがあれば候補地に残っている。それぞれの地域に一長一短がある。DB2856~DB2858ではムリナの一族の土地も候補に挙がる。そのくだりは、ちょっと面白いので訳しておく。) 2856: Mwamoko周辺 Mwadalu(Mw): (ムラムロ棒を操作しつつ) お前さん、そちらの方は好まないのかい? Murina(Mu): どこのこと? Mw: お前さんたち一族の土地だよ。 Mu: あちらの私たちの場所なら好きだよ。でもその場所はね、そもそも、そこに行ったら長い年月そこに腰を据えて住むことが望ましいね。 2857 Murina(Mu):(つづき)長い年月腰を据えて住むということは、お前は自分の手でにぎる畑地をもっていなければならない、それでやっとそこに腰を落ち着けることができる。そこがすごい荒蕪地(nyika)だって知ってますか? Mwadalu(Mw): 人から聞いて知っているだけです。 Mu: いやあ、あの辺りはイボイノシシの都会(tauni)みたいなもんですよ、あそこは。 (どうやらムリナさんは田舎すぎるところは嫌みたいです。イボイノシシたちの都会ってイメージ、私は好きです。以下雑貨屋が手近に(イメージとして徒歩1時間以内に)あるかどうかのような話が続く。以下省略。)
Mwadalu(Mw): (移転の話、つづき) というのも、移転先がどこも、良いところだとは思っちゃいけないのさ。お前さんは、自分を律しないとね。だって人というものは... Chari(C): さらにあなたが(移転先にと)考えているそこだって、ねえ、そこでトゲに刺されるってこともある。キナンゴの町でさえね。その先はというと、あなた、草履を忘れたりはしないでしょ。 Mw: 彼は忘れないよ。 (このやり取り、文字通り植生について語っているのか、どこに行っても妖術使いの危険はあるという話なのか、どちらともつかない。私には...) C: 今、念頭にある場所も、まずは誰かに先に行ってもらうことね。 Mw: 誰かに先に行ってもらって、お前さんが着いたときには、そこにはすでに誰か(身内が)いるようにね。そこに着いたときに、他人に頼らなくてもいいように。自分自身に頼れるように。というのもキョウダイたちの住んでいる土地からは遠く離れているんだから。
Chari(C): ところであの方たち、やって来て、さらには私のために奴ら(チャリの敵の妖術使いと仲間たち)を叩いてくれた人たちにね、私はワリ(wari60)を与えて、食べてもらいました。その後で彼は回りを見回して言ったの。「ああ、あなたはヤギの糞がたくさんある場所に来たんだな。もし(妖術使いたち)に煩わされなかったら、金持ちになってただろうに。」
Chari(C): (話を続けて)そして、その長老(ムリナの父)は立ち去るんだけど、私に10シリングをくれたの。彼(ムリナ)には紙幣で10シリング、私には硬貨で10シリングくれました。立ち去るときにまた言いました。「奥さん、このお金、さらに10シリングだよ。これらは私の編み籠(chikaphu)のお金。あちらはあんたの夫にあげたカザマ(大瓢箪一杯の酒)だ。ありがとう。お前さんとわしの息子は、しかと立ち去って、ここに参られた。ここは、もし揉め事がたくさんじゃなかったら、あんた方は金持ちになってただろうにな。」その長老はそう言って立ち去りました。立ち去るときにかれはそれらのお金を私に残していったの。そしてお金を稼ぎなさいって言ったのよ。 つまりお父さんは、ここに留まって稼ぎに励みなさいって言い聞かせに来たのね。それとも、私たちをここから今すぐ立ち退かすために来たのかしら。その辺りがわからないの。 Murina(Mu): 別の場所に引っ越して、そこで稼げというのか、それを知りたいね。
2860 (ムァダル氏、時間をかけてムラムロ棒を操作)
Mwadalu(Mw): まだここの屋敷にとどまるね。でもあいつら(妖術使いとその仲間たち)は、それを嫌っている。でも、屋敷にとどまる。ごらんよ、(このムラムロ棒が)何度やっても、この先まで出てくる。 Murina(Mu): もし私がやつらに計画したようにやったら、やつらは攻撃を諦めて、私に一息つかせてくれるだろうか。だって、私はやつらをふん縛ってやるつもりなんだから。 Mw: (ムラムロ棒を操作して)やつらは完全に負けるだろう。お前さんが彼らを縛りさえすれば、やつらは「ああ、こいつには敵わない」と思い知るからね。「なんと、こいつは打ち負かすことなどできない、おれたちはこいつを打ち負かせると思ってたんだが。」 Mu: 私の20シリングをもって、チェアマンのところへ行ってやる。「あんた」「はい」「先日、来るって言いましたよね。ほら、これがお金です。やつらを呼んで下さい。日曜日にここに呼んで欲しい。」やつらに問いただし、たぶん、彼(チェアマン)にこう言うことになるだろう。「ちょっと、あんた」「はい」「私に書面を書いて下さい。なぜならここで問題が終わりになったとは全然思えないからです。」
Murina(Mu):(なおも話し続ける)「私はまったく納得していません。まったく気に入らなかった。だから、あなた私に書面を下さい。私に先に進ませてください。その後で、私はチーフのところに上告しに参ります。」 Mwadalu(Mw): ならやつらも、すみやかに捕まえておかないと。 Mu: ああ、もうやつらは押さえてるよ。さらにやつらをチーフの所に連れて行くさ。もしキラボ(chirapho36)の方に先に行けなかったとしてもね。ああ、「そいつを自由にしておけ、自由にしておけ」も、多額の賄賂が必要で、やつらには痛いこと。「お前は、死刑判決を下しているのさ。」あんたは「彼女は死ぬでしょう」(の言葉)とともに、歩む。「お前は自分で殺す判決をくだしたんだ」さあ、私はお前をまず法廷に訴えにいくことができる。なぜなら法廷では「彼女は死ぬでしょう」と言った人物の出頭が必要とされるから。なぜならお前は、自分で殺す判決を下したんだから。さて、おまえを法廷に置きに行けば、そこで私はお前を泣かせてやると思え。お前はひどく泣くことになるだろうさ。 Woman(W1):お前といっしょにいる人は、お前をほっておいているの? Chari(C): 私は悲しいのよ。私はもうまるで(激痩せして)棒みたいになっている。
Woman(W1): あなたその悲しみのせいで、ますます命が縮まってるわよ。 Murina(Mu): ところで、これからこの人に、もう一度クブェンドゥラ(kuphendula61)するべきだろうか、それとも、昨日彼女に打って(枝の束を薬液に浸してそれで身体を打つ)、浴びてもらった私の薬液(vuo32)で、彼女の身体内部を冷やせたんだろうか。それとも、クブェンドゥラした方がいいんだろうか。 Mw:(ムラムロ棒を操作)フュラモヨ・ジメネ28だよ。赤い雄の若い鶏、さらにもし逆毛の鶏100があれば、さて、あなたは彼女を周回61してあげなければね。 Mu: それだけ?それとも(フュラモヨは)まだ充分冷やされていないのだろうか。 Mw: 今は、徹底的に彼女を洗って(薬液を浴びさせて)やらねば、そして... Chari(C): ところで小銭はないの?このお金をくずす小銭、もってる? Mw: それならありますよ。 C: これがくずせるのね! Mw: はい。 Mu: さて、子供を連れて帰ろうか(家事などを手伝ってくれる少女をしばらく借りて帰ることになっていた)? C: いいわよ。 Mu: あの少女を呼んでください。もう家に帰りますよ。屋敷には誰も人がいないんですよ。相談は終わりました。
この地域には2つのタイプの「占い」がある。一つが憑依霊の施術師による占いムブルガ(mburuga)、もう一つがここで紹介するような憑依とは無関係の占いムラムロである。この2つの占いについてのやや理論的な考察としては、1993年の『民族学研究』への投稿論文「ドゥルマの占いにおける説明のモード」(『民族学研究』Vol.58(1):1-28)がある。当時の私のドゥルマ語力のせいで、ドゥルマ語テキストの翻訳部分に、誤訳や、訳語のいくつかが不適切、発言者を間違って割り当てている箇所があるなど、自分自身が読んでイヤになる点もあるが、この2つの占いが、相談者にとっての「問題」の位相の違いに応じた対照的なモードの占いであることはきちんと論じられていると思う。
ムブルガ(mburuga17)においては、相談者は占い師に一切の情報を与えず、占い師が憑依霊の助けを借りて、相談者の抱える問題をすべて述べ立てて行かねばならない。その占い師の語りに、相談者は、それが正しければ「タイレ(taire101)」と応え、間違っていれば否定する言葉を発し、それによって占い師の語りが結論に向かって構造化されていく。一方、ムラムロ(mulamulo16)においては、相談者が占い師に自分が抱えている問題を逐一語っていき、その認識の正しさや、事態に対してとる対処の是非を問い、占い師は自分の占い道具を操作して、相談者の問いにイエスかノーかの答えをだす。それを基に相談者と占い師は話し合いながら事態がどうであり、どのような対処がよいのかを導き出していく。
前者でイエスまたはノーのみを答えるのが相談者であるのに対し、後者では、占い道具の方が相談者の語りや問いにイエスまたはノーで答えるという、正反対の仕方で占いが進行していくのである。
簡単に言うと、さまざまな困難や不幸を経験してはいるが、それがどのような問題であるかがわかっていない相談者が、それらの困難や不幸の背後にある「問題」が何であるかを知り、その解決策を求めるのがムブルガであり、問題が何かをすでに知っている(つもりでいる)相談者が、自分すでに計画している対処の成否を知ろうとして赴くのがムラムロであると言うことができる。
私はその日の朝にチャリから夢の話を聞いていた。ムリナの亡くなった両親の訪問を受けたという夢である。その後すぐにムァダル氏のムラムロに相談に出発したので、私はてっきりこの夢の内容を相談するのだとばかり思っていた。両親の訪問の意味を明らかにしようとしているのだと。だが、これに先立つ9月3日に今後の予定を聞いた際に、ムリナたちは近々、ムリナの母に対するサダカ(sadaka102)を開催すると知らされていたのだから、もはや改めてムリナの母の要求を確認する必要はなかったのであり、この日のムラムロ訪問が別の目的であることには気づいていてもおかしくないはず。鈍感な私だ。
いずれにせよ、その日の私にとっては意外なことに、二人の相談の中心テーマは、自分たちに妖術攻撃をしている近所の老人とその妻に対する妖術告発の是非であった。というか、ムリナはすでにそれをする固い決意をもっていたので、妖術告発を行うことが正しいことを確認するためのムラムロだったのである。告発の相手は、何ということか、他ならぬムリナたちに自分の土地に住むことを許してくれていた一族の長老なので、そんな人を告発して、結果がどうであれ、ただで済むわけがない。という訳で、このムラムロではムリナたちが最終的には別の土地に移り住まねばならないことを前提に、その移転先について相談することも目的の一つであったことがわかる。
実際にはムリナとチャリ夫婦は、今後の行動について自分たちでほとんど決めている状態であるように見えた。ムァダル氏ももっともらしくムラムロ棒を操作してみせているが、やっていることはというと、私の目には、単にムリナたちを元気づけたり応援したり、逆に逆にムリナたちの行為によってどんな事態が生じるかを語って、少し考え直させたりといった、単なる相談相手の役割を務めているだけのように、私には見えた。
ただ同じ屋敷に住んでいない非・親族相手の会話には絶対登場するわけのない、さもなければ私などに知りようのない、夫婦の私秘的な経験があけすけに語られており、驚きの連続だった。帰り道にこっそり聞かされたチャリのムリナに対する不信感(浮気の疑い)に関係したことも語られていたし(相手の女性からの一方的な恋慕として語られていたが)、チャリの自殺未遂の出来事も、妖術使いが誰であるかについても、包み隠さず語られていた。ムラムロ・オペレータに職業的な守秘義務はあったりするのだろうか。きっとあるんだと思いたい。
冒頭、ムリナはチャリに対する妖術攻撃が気がかりだと言う。実際、ムリナたちの屋敷への入口近くに怪しい薬(muhaso24)がこっそりと仕掛けられているのを目撃している。最初の質問は、それに対するムリナの対抗施術が成功したかどうかで、ムラムロはそれに対して、成功したとの答えを与えている。
妖術使いたちが焦っている原因の一つが浜本の存在だとされている。本人が眼の前にいるのに、おかまいなしに私のことを話している。ムリナたちは浜本の存在をムァダル氏に説明する。私が彼らの施術上の子供になっていること。おそらく浜本がムリナ夫婦にいろいろ援助しているに違いなく、それを妖術使いたちが忌々しく思っていること。そして浜本が心変わりして、いなくなるように、ムリナ夫婦を含む私たちが互いに仲違いして、ばらばらになってしまうようにと妖術フュラモヨ(fyulamoyo27)を仕掛けたのだと。
ムリナが発見したのはその仕掛けであり、ムリナは直ちに薬液(vuo32)と草木束(vanda33)で、それに対処したのだが、それが果たして成功したのかどうか、これが最も心配な点らしい。ムァダル氏はすでに成功したという答えを出したのだが、ムリナは、チャリが一昨日ロープで首吊り自殺を試みていたことを明らかにし、すでにフュラモヨに捕らえられてしまったのではないかと問う。
ムリナによると彼らを攻撃しているのは、彼らがその土地に住まわせてもらっているポンタ(仮名)老とその妻である。そして彼の妻はチャリに面と向かって「お前はここキナンゴで死ぬよ。たとえあんたが嫌でもね。」と言ったらしい。これが彼らに妖術使いの正体を確信させた。ムリナたちは彼女を捕まえて、毒の試罪法(chirapho36)に引き立ててやると鼻息荒い。
なぜ彼らはそこまで憎まれているのかの理由に、私が含まれているのは、なんだかいやだ。浜本の存在が、ムリナ夫婦に迷惑を掛けていることに今さらながら気づいてショックな私だが、金持ちの白人からなんらかの利益を得ているに違いない(違うってば)ということで、それを不愉快に思って、薬(muhaso)によってそれを台無しにしようと、実際に企て実行する者が存在することは確かなのだ。私とカタナ氏の自転車に、中に何かを包みこんだ黒い布が針で突き刺してあったのを私も目撃しているし、私の調査小屋へ通じる分かれ道にモノが埋め込まれているのも見た。調査小屋の水浴び囲いのなかにトグロ巻く人糞が鎮座していたこともあった(大便の妖術(utsai wa mavi)である)。
私が別の著書でも書いたように(浜本2014『信念の呪縛:ケニア海岸地方ドゥルマ社会における妖術の民族誌』p.123)、妖術の物語は2重の不在で特徴づけられる。誰かが突然死んだときなど、人々はそれを引き起こした妖術使いの存在を追及する。だが犠牲者が存在しているとき、それを引き起こした妖術使いなど実はいない。一方、憎い相手に災難を引き起こそうと、薬を使用する者は今述べたように実在する。しかしこうしたナンチャッテ妖術使いが実在しているときには、犠牲者はいない。だってそんな妖術に実際の効果があるわけはないから。犠牲者が実在しているときには、それを引き起こした妖術使いは不在で、妖術使いが実在して何かをしているときには、その犠牲となるものは不在である。
とにかく、妖術でなにかしてやろうという者は、実際にいるのである。というわけで何度かの妖術攻撃を受けても私は平気で歩き回っていたのだが、そのことで浜本が「無敵」だと思われていたとは、私も想定していなかった。ムリナさんまで私がどこかで妖術に対する防御施術を施されたに違いないと思っていたとは!
私のことはともかくとして、ムリナ夫妻に向けられた攻撃の動機には、別の側面もある。そちらの方がより厄介だ。この日チャリが見た夢の中で、ムリナ氏の死んだ母親から杖で打ち据えられた女性、ポンタ(仮名)氏の若い妻こそが妖術使いだという。そして彼女がチャリの死を望む理由とは、なんとムリナと結婚したがっているからというのだ。チャリの解釈では、その女妖術使いは、チャリをこの地から追放し、それができなければ殺して、自分がチャリに代わってムリナの妻になりたいと思っているという。ムリナは彼女になんの興味もないと言い放ち、彼女を縛って、まずはラロの長老の裁定の場に、ついでチーフの法廷に連行し、告発し、チーフの許可を得て毒の試罪法36に持ち込み、そこで自分もキラボ(chirapho36)を食べて白黒つけるすると息巻く。
息巻くムリナ氏に対し、ムァダルは彼女を訴えても、彼女は怯えて裁定の場に来ることを拒むだろうと、ムラムロ棒を操作して答える。なおも毒の試罪法キラボまで連れて行くと言うムリナに彼らはキラボを拒むだろうと、ムラムロ棒の結果を伝える。しかしムリナは譲らない。ムリナは妖術攻撃をかけてきているその女妖術使い(ポンタ(仮名)氏の若い妻)が、妖術の知識をもっているとは考えていない。彼女らが雇ったはずの妖術の施術師がおり、そいつ(ら)が実際に薬を提供している。彼らの名前を聞き出したいというのである。ムァダル氏は、それらの術者は単に金で薬を売っただけの関係だから、追及するなと諭す。
ムラムロ棒の出した答えという形はとっているが、私の目にはムァダル氏自身がムリナたちが追及を徹底することを、押し留めているように見えるのだが、そうなのだろうか。少し前の箇所で、ムァダル氏はムリナに彼女を第二夫人として娶る可能性を尋ねてすらいる。ただちに否定されているが。
チャリはムァダル氏に黙って3本の小枝を差し出す。それぞれがムリナたちが念頭においている3人の主要な攻撃者に対応しているらしい。ムァダル氏は、一人が女妖術使い、もう一人がチャリの施術上の子供、もう一人がポンタ(仮名)長老その人だと告げる。
ムリナ氏が計画通り、彼らを告発し、彼らが処罰を受けた後に、彼らはまた妖術を再開するだろうかとムリナは問う。ムァダル氏は彼らは許しを乞い、和解を願うだろうと繰り返す。だが、ムリナはそれを受け入れるつもりはない。チャリはその女妖術使いが、ポンタ(仮名)氏の結婚したばかりの若妻であること、そしてもう一人の女性がポンタ(仮名)氏の息子の妻(「ジャコウネコの池」にチャリたちが移り住んで最初の施術上の子供の一人103)であることを明かす。
和解の可能性がないなら、結果は予想がつく。ムリナたちは、客人として住むことを許されていただけであった。となるとその土地を立ち去るしかないことになるだろう。という訳で話題はムリナたちが引っ越していく移転先のことになる(一部、和訳を省略した)。すでにムリナたちも自分たちの移転先についていくつか候補を考えていることがわかる。
そして最後にチャリがその日に見た夢の話になる。ムリナの両親の訪問は何を意味しているのだろうか。彼らはムリナたちに、今の土地にとどまるよう言いに来たのか、それとも別の場所に引っ越すようにと言いに来たのだろうか。ムラムロ棒は、当分の間は今の土地にとどまることができると告げた。ムリナには敵を、上級審にまで訴えていく時間がある。
結局、ムァダルのムラムロ占いは、ムリナたちが当初からもっていたプラン、3人の妖術使い一味を、ラロ(lalo38)の長老による裁定に始まり、チーフの法廷を経て、州都の治安判事裁判所にまで追及していくことにゴーサインを出した格好になった。
最後にチャリのフュラモヨを治療するために、きちんとクブェンドゥラ(kuphendula61)するようにとのアドバイスを受けて、ムラムロは終了した。
ムラムロのアドバイスに従って、さっそく翌朝、ムリナによってチャリのフュラモヨに対するクブェンドゥラ施術が執り行われた。
なんだか、ややこしいことになっている。ムリナたちは、本気で隣人を妖術使いとして告発しようとしているようだ。おそらく隣人たちは、まさかそんなことになっているとは思ってもいないだろう。私の最初の反応は、巻き込まれたくないなぁ、というものだった。でも私自身もしっかり話の要素に入ってしまっている。ムラムロは、ムリナたちの確信を是認し、強硬な告発を思いとどまらせる動きはあったものの、全体計画を後押しする格好になった。
しかも、この日の帰り道に、私はさらにチャリから衝撃的な話を聞いてしまった。ムリナが、上述のムリナを欲しがっている女妖術使い(ポンタ(仮名)老人の若い妻)とすでに関係をもっているというのだ。ムリナが夜中に小屋を抜け出していくので、後を付けていくと、彼女と一緒になっていたというのだ。でもよく聞くと、そういう夢を見たということで、チャリがもっている憑依霊(どの霊かは、聞きそびれた)が教えてくれたのだという。やめて~。夢を浮気の証拠にされたら、たまりませんから~。だが、チャリはムリナと若妻との浮気を完全に確信している。もしかしたら彼女の自殺未遂は、妖術を掛けられたからというよりも、夫の浮気を「知った」からだとも思えるくらいだ。この時点で、ムリナはチャリがこうした疑惑をもっていることを知っていたのだろうか。ムラムロでしきりとあんな女には用はないと強調していたのも、振り返って考えてみたら怪しい。っていうか、いやいや、はっきり言って浮気はしてないでしょう。でも、もしかしたら....
ああ、いやだ、いやだ。そもそも妖術自体が、「想像された」隣人の悪意にすぎず、ムリナたちが実際に攻撃を受けているわけではない。これに実際にはおそらくは実行されていない夢見られた「不倫」が付け加わって、当事者たちの目にはすごく複雑に絡み合った事件が展開しているのだが、もしかすると「なんの事件も展開していない」可能性のほうが大きいのだ。 私はこの後、コストがかかるとか、地域の人々からの批判がとか、憑依霊はときどき嘘をつくって言ってたじゃないですかとか、なんとかブレーキをかけようと試みたのだが、事態は私の片言の努力にはお構いなしに、進んでいくのだった。
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。ただしドゥルマではサブロケーションより下位の単位であるラロが日々の生活では重要で、地域の長老たちによりさまざまな紛争が話し合われる最小の単位となっているので私はこのラロを引き続き「村」と呼ぶことにしている。新行政システムではかつてのサブロケーションがvillageに対応するとされているが、それとはズレた用法になる。例えば「青い芯のトウモロコシ」や「ジャコウネコの池」を私は村と呼んでいるが、それはラロであり、サブロケーションよりも下の単位(公式には存在しない単位)になる。実はその下にさらに名前のある単位があるが、それは地図にも表れない単位なので私は「地区」ととりあえず呼んでいる。 ↩ ↩
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tsovyaの別名とされる「内陸部のスディアニ」の絵 ↩