ムロンゴさんは、「ジャコウネコの池」地区で私の小屋からは最も近くにいる憑依霊の施術師だ。私が屋敷の秩序に関するさまざまな「冷しの施術(uganga wa kuphoza)」について多くを学んだムァゾンボ氏(ニューニの治療でも有名)の娘でもある。ただ残念ながら、「ジャコウネコの池」での調査のごく初期に、すぐ近所で彼女の施術(「嗅ぎ出し(kuzuza1)」)が行われているので、近所の人々といっしょに見に行った際に、彼女の弟子(mwanamadzi89)の一人とトラブルになり、以後、彼女の施術を敬遠するようになってしまった。調査の都度挨拶に行く以外にはなかなか親密なお付き合いまでは行かなかった。
いろいろミスや偶然が重なっ。小屋のなかでカヤンバの演奏中にこっそり入っていったのだが、ここで2択があった。「1. 挨拶する」その場合、「ご傾聴ください(taireni)」と大声で断って、すべてを中断させた後、一連の挨拶プロトコルに従わねばならない。それをせずに中途半端に挨拶すると罰金を課される。「2. 何も言わずこっそりと入る」重要人物(長老だとか、ある種の親族関係にあるとか)ではないほとんどの参加者はこちら。という訳で、後者を選んだ。これはミスじゃなかったと思う。なのに、なぜか突然演奏が止まり、ムロンゴさんが何か言ったかと思うと、私はすぐに小屋から出ていくように言われたのだ。「眼鏡がギラギラする」とかなんとか。
何年か後でわかったことなのだが、ムロンゴさんを苦しめている強力な憑依霊の一人がムミアニの「白人」(muzungu wa mumiani)であり、こいつは患者に眼鏡を手に入れるよう要求する。ムロンゴさんは眼鏡をかけている白人(私もその一人)をみると、ドキドキしてしまって施術に支障が生じるということだったのだ。当時の私には知るべくもない。釈然としない思いで、追い払われるみたいに外に出た。
小屋の外には、搗き臼に薬液を入れた、ライカのための「屋外のキザ(chiza cha konze35)」が設置されており、その横の椅子に腰掛けた助手(mwanamadzi)の一人が、ンガタ(ngata30)に包み込む憑依霊を描いた絵を描いているところだった。私は暇なので、キザの写真でも撮ろうかとカメラを取り出した。するとその助手が、写真は撮るなと言って、撮るならお金を出せなどという。ときどきそういうことを言う人がいる。私は特に写真を撮りたい方じゃないので、「じゃ、いいや」とフィールドノートにチョロチョロと搗き臼のスケッチをし始めた。するとそいつは、スケッチも駄目だ。金をよこせと。特に珍しい施術でもないし、ちょっと気分を害して、私は帰宅した。この助手の男は、その後も何食わぬ顔で呼びもしていないのに、私の小屋に何度もやってきて高圧的に借金を要求してきたり、家族写真を撮りに来いと命令口調で言ってきたりというイケスカナイ野郎だということがわかったのだが、こういうことがあると、どうしてもその施術師との交流には消極的になってしまうのだ。
その後、お付き合いを始めるとムロンゴさん自身は、とっても楽しく面白い女性施術師であるとわかったのだが、その頃には詳しく話を聞く憑依霊の施術師は5人程度に絞り込んでいたので(それでも各人が主宰するンゴマにすべて参加することは不可能で、しばしば難しい選択に迫られることになった)、彼女が主宰するンゴマにはほんの数回の参加にとどまった。
きっかけはムミアニの「白人」だったが、多くの霊を外に出しているムロンゴさんの当時の最大関心事もムミアニの「白人」だった。
日本語訳の各パラグラフの冒頭の数字をクリックすると、対応するドゥルマ語テキストに飛びます。
(from diary of Nov.12, 1991, Tue, Kpwisha)100
午前中はMwadzombo氏のところでuganga wa kuphoza26について聞き、そのあとでMulongo wa Mwadzombo(憑依霊の呪医のMulongo)を訪問する。後者には例によって砂糖とchai101をお土産に。行くといきなり眼鏡が欲しいなどと言われて面食らうが、よく聞くと、muzungu wa mumianiのchiryangona104だった。Mombasaで探してくると約束。 帰宅するとなんとuwa105の石の上にトグロまく人糞。実際に悪意を持つ者の仕業以外には考えられない。カタナ、極度にショックを受ける。彼が「何を求めて行ったのか」村で成人教育の教師をしていたころに妖術をかけられた、その端緒がやはり人糞だったからだ。彼の寝泊りしていた小屋の前にある日、人糞があり、それを取り除いた直後に例の病気が始まったのだという。Mem....によるとutsai wa mavi106は頻繁に行われているという。一度詳しく聞いてみる必要あり。
(from fieldnote of Nov.12, 1991, Tue, Kpwisha)107 【muzungu wa mumiani】by Murongo wa Mwadzombo (DB 3947-3950)
chiryangona
miwani109 tochi110(電池が切れると病気になる) saa111 sabuni112 marashi113
夢で自動車(白い自動車、緑の自動車)に追いかけられる。
車のライトで照らして追いかけてくる。
速く逃げると、今度は飛行機で追いかけてくる。
あるときには自動車から血を採る注射器をもった人々が降りてきて追いかける。
症状: 貧血、kufyoka, kuphaphika
dawa114 は chitunguu115といっしょにkujita116 kogeswa[^kogeswa] na marashi113 ngoma zenye94
Mulongo(M): だって、もしあなた、(その自動車が)通るのが見えたら、ここはもう二度と暮らせる場所じゃなくなるわ。だって、どちらを見ても自動車のヘッドライトがギラギラ。そしてあの連中は(制服を)身につけて、荷物を背負っている。あなたには革靴がゴボッゴボッと鳴るのが聞こえるでしょうよ。さらに一人ひとりが鉄砲を持っている。あなたはずっと全速力で走る。でももしあなたがとても速いとみると、飛行機が出てくる。あなたはそいつらに追われているのよ。もし捕まったら、あなた血を抜き取られるわ。どうして逃げるのかって?私はこの目で現場を見たことがあるから。その癒しの術は、まだ手に入れ始めたばかり。まだ終えていないの。 Hamamoto(H): ムミアニの白人の癒しの術ですか? M: ええ。私はこれこれの品を揃えるように言われたんだけど。まだ全て買い終えていないのよ。 H: 揃えるべき品は何と何なんですか? M: 腕時計と懐中電灯、それに眼鏡ね。さらに石鹸も買わないと。バラ香水の石鹸。
Mulongo(M): ところで彼らの自動車は2台あるの。緑色の車は、人間を捕まえるあの連中を運ぶ自動車(トラック)よ。でも白人たち自身は白い乗用車を持ってるの。さて、そいつ(白い車)が(ジャコウネコの)池にやって来たのが聞こえたら、こちらではいち早く身をひそめる。だって、やつらの緑色の巨大そのものの車が近いって知ってるから。その車は赤々と燃えていて、それが通り過ぎるだけで、すでに血の臭いがしてるのよ。そして停車。やつらが大きな注射器(bomba)をもってやって来る。 Hamamoto(H): 血の臭いがするんですか? M: ええ、血の臭いがするの。彼らは車をもう止めている。彼らの手にはナイフが握られてるのよ。白い車の白人たちもナイフをもっている。 H: 人々を切って、その血を吹き出させるためのナイフ。 M: ええ。 Bahari(Mulongoの夫、mwanamadzi(B)): そうさ、ナイフこそ武器じゃないかい。
Mulongo(M): その注射器と来たら、あの太いポンプ(bomba)みたいなやつ。石油缶のなかに(血を)注ぎ込むように。さあ、あなたは走らないと。目覚めによって救ってもらうまで。もし目が覚めなければ、あなたは捕まって、死んでしまうのよ。 Hamamoto(H): つまり寝ている時間に、彼らはやって来るんですね? M: そらそうよ。 H: なんと。(夢のなかで)彼らに捕まって、斬られたら、それでお終い。死んじゃうんですね。死んでしまう。わあ。なんと恐ろしいやつですね、ムミアニの白人は! M: そいつらが引き起こす病気も、恐ろしいわよ。だって、あなたは血を飲まれちゃうんだもの。あなたは白くなっちゃうわよ。 H: ところで、そいつムミアニの「白人」はイスラムの憑依霊なんでしょ? M: うう。とってもイスラム、イスラムよ。でもそいつには手下の兵隊がいるの。あいつら兵隊は、マサイ人や、ドゥルマ人、いろんな民族の人たちよ。 Bahari(B): あいつらは仕事で雇われた賃労働者なんだよ。 M: 雇われた人たちなの。そしてそいつらがあなたを追いかけるのよ。白人本人は白い乗用車の中にいるの。
Bahari(B): 白人自身はスタッフ(stafu117)なんだよ。 Mulongo(M): そう、そいつは自分の白い車を持っている。でも緑色のあのトラックはね。さてさてもしお前が捕まったら、お前はそこに行くことになる。でもそいつらも血を吸い上げるポンプをもっているのさ。 Hamamoto(H): ところで(憑依霊の白人による病いの)治療方法は? M: 洗ってもらうのさ。例の石鹸でお前を洗ってもらわないと。お前を治療してくれる施術師に、身体全身をすっかり洗ってもらうのよ。そして(憑依霊の白人の)香料(mavumba27)とローズウォーターを身体じゅうに塗ってもらいます。それが済めば、施術師はおまえに例の石鹸をくれるわ。そして施術師はお前に、薬もくれるわ。その調理法も指示されるわ。玉葱といっしょに料理するのよ。 H: おお、たまねぎ。その薬は、玉葱といっしょに炒めるんですか、それともスープのようにしっかり煮るんでしょうか。 M: 炒めるのよ、そして水を加えるの。
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(from diary of Aug.29, 1992, Sat, Kurimaphiri)100
朝キナンゴに行ったついでに帰途ムロンゴを訪問。一昨日私が留守中に来たと聞いて、昨日は一日中私を待っていたという。時計は喜ばれる。話題の第一はBarabaraによる妖術使い狩り。ついで今年のnzalaの話。Chariと同様nzalaのせいでugangaはさっぱりだったという。しかしそろそろ人々に余裕ができたのでカヤンバが始まりかかっている。すでにムロンゴ自身、3つ開いた。また近々あるらしい。 ... ムロンゴはほとんどのnyamaを出し終えており、後はムミアニのみだという。チャリとは対照的に極めて健康そう。ムァゾンボ氏は不在。 午後水浴びと洗濯の後、昨日通知のあったキジヤモンゾのマニョータのsadakaに行く。まだ挨拶を済ませていなかったので気が乗らなかったが、行かないとますます面倒そうなので。ちょうどカリンボが来たので、強引に誘って、肉を食べに行こうと言って、二人してでかける。
(from fieldnote of Aug.29, 1992, Sat, Kurimaphiri)107 Mulongoに時計を渡す。実は彼女の霊Mumiani(muzungu)の要求の品
mumianiの品々 香水(mafuha ga muzungu wa mumiani) 懐中電灯: 電池を切らすと夢の中で車に追いかけられる 時計と眼鏡 「外に出す」には kayambaではなくNgoma zenyeが必要
Mulongo(M): 香水(mafuha118)の小瓶よ。私もその香水なら小屋の中にもってるわよ。 Hamamoto(H): 何の香水ですか? M: ムミアニの白人の香水よ。 H: おお。 M: この別の小瓶は、空になっちゃった。 H: 良い匂いのやつですか? M: うん。ムミアニの白人の香水よ。うん。だってそいつは白人で、イスラム教徒なんだから。そいつの香水は良い匂いがするの。さらにそいつの護符(pingu31)は、いつも通り、お金といっしょに置いておかないといけないの。 Child: この瓶は匂いがするわ。とっても良い匂いがする。 M: ああ、寝台のところに置いておいで。それらの護符を身に着けていたら、もしなにか面倒事(shida119)に出遭ったら、たとえちょっとしたことでもね、それを外して置いていかないといけません。その面倒事を終えたら、帰って水浴びして、それからその護符を身に着けないといけないの。 H: 無造作に身につけていてはいけないんですね? M: そうよ。 H: イスラム教徒たちのローズウォーターは(「白人」は)使わないのですか。 M: ローズウォーターは使いますよ。商店で売っているローズウォーターね。(ムミアニの「白人」は)薬草類(miti shamba)も使います。商店で売っている薬草(miti shamba)や香料を手に入れて、いっしょに搗き砕くのよ。
Hamamoto(H): ふむ。 Mulongo(M): うん。さて、それに水とローズウォーターを注いで、洗面器に入れて、それと石鹸。それで全身をすっかり洗ってもらうのよ。さて、それが済んだら、あなたは(ムミアニの「白人」の)煎じ薬をもらいます。あなたは玉葱とカレー粉を買う。さあ、煮て。さてあなたはその薬(煎じた薬)を飲まないとね。もし(あなたの病気が)それ(ムミアニの「白人」)のせいだったら、もう一発よ。あなたはすでに治っているのがわかるでしょうね。これで、あなたは眠っても、あれらの自動車をみることは二度とありません。飛行機もね。 H: おお、夢の中に出てくるそれらを。 M: ええ。つまり眠っているときに、こんな風に、眠っていると、あなたはその自動車に追いかけられるのよ。小型の白い車と、もう一台は緑色の車。そこに、あれらの飛行機が上空にやって来る。もしあなたがとても素早かったら、こんどは飛行機で追いかけられるのよ。でもあなた、その後は、あなた白い布みたいに全身まっ白になるわよ(貧血のせいで)。でも、ちゃんと調えてもらって、すべて終わりさえすれば(ムミアニの「白人」を外に出してしまえば)、あなたは解放されるわ。 H: じゃあ、今はまだ(夢の中に)車がやってき続けているんですね。
M: ええ、今もときどきやって来るの。あの懐中電灯がね...。私は懐中電灯を買うように言われたのよ。もし電池が切れてしまったら、例の自動車がやって来るの。 H: なんと! M: そうなのよ。その懐中電灯は、電池を入れて電気がある状態に(moho 字義通りには「熱い状態に」)しておかないと。でももし電池がなかったり、熱がなかったりしたら? H: そうすると。
Mulongo(M): あの自動車がやってくるのよ。 Hamamoto(H): やって来て、あなたを怖がらせる。 M: だからこの懐中電灯は、電池を入れて、電池が切れたら、また入れて.. H: それに毎日電気(熱 moho)があるように。 M: それに毎日電気があるように。 H: でも電気が切れてしまうと、必ず(自動車が)やって来る。 M: ああ!晩になると、もし電気が切れて、晩になると、その自動車がもうやってくる。あなたが眠りにつくと、まさにそのときにすでに例の大きな方の自動車が。 H: それがあなたを追いかけてくる。 M: ええ。あの連中が(車から)降りてくる。 H: 「白人」の手下の兵隊ども? M: ええ。車の中にいたやつらよ。あなたを大急ぎで運ぶために、降りてくる。車はそこに置いて、お前をかかえて運びこむように。ある者はナイフを手にしている。ナイフだよ。はあ、さて、もしお前が夢のなかで、すごく素早ければ、飛行機が出てくる。 H: わあ!ああ、でもあなたは飛行機には勝てない。
M: ああ、勝てない。今や、お前の幸運は、突然目を覚ますことよ。あれらの飛行機どもが始まったら、さあ、お前は突然目を覚ます。夢の中に別の人がやって来て、「さあ、目を覚ましなさい、目を覚ましなさい、目を覚ましなさい」。目が覚めたら、身体のあらゆるところが震えている。そして心臓もまた震えている。 H: やって来たその人は、あなたの別の憑依霊なんですね? M: うん。あなたを驚かせに(起こしに)やって来るのよ。 H: もしそうできなければ、あなたはきっと捕まってしまう? M: ええ。そうできなければ、あなたは捕まえられる。あなたはその場で死んでしまうかもしれない。あるいは重病になるでしょう。
これは後日談である。 その後も、フィールドに入る都度、ムロンゴさんの屋敷には「挨拶」に訪れていた。また彼女が主宰するカヤンバが「ジャコウネコの池」で開かれる際には、声がかかるので参加することも何度かあった。1995年からの3年度は別の科研費プロジェクトで、私はタンザニアのザンジバルのペンバ島(そこのクローブ・プランテーションに出稼ぎに行った経験があるドゥルマの老人もけっこういる)調査を担当した関係で、しばらくドゥルマには注力できない期間が続いた。とは言え、ザンジバルとケニアのモンバサは飛行機でわずか45分(当時59$)なので、タンザニア調査の行きや帰りにドゥルマに挨拶で立ち寄りはしたが、それまでのように長期の集中的フィールドワークはできなかった。とはいえ、フィールドの興味深さはドゥルマが圧倒的だった。
1998年の1月の訪問では、ムロンゴさんに挨拶に行って、次の日に「月のカヤンバ」を開くのでおいでと招待を受けた。データを採るつもりもなく、最初から演奏に参加したり、みんなといっしょに踊ったりですごそうと決めていた(メモはとったけど)。そのクライマックスは、明け方近くのムミアニの「白人」の出現だった。ムロンゴさんは、彼女にとって厄介の種だったこの「白人」をすでに「外に出す」ことに成功していたのだった。その様子は当日の日記の記述(フィールドでのメモを基に作成)によって紹介しよう。(それにしても、ちゃんと録音もしておけばよかった。今となっては悔やまれる。)
(from diary of Jan.10, Sat, 1998, kurimaphiri, kumi ra kahi, mwezi motsi)100
5時過ぎカタナたち帰ってくる。ムリナたちも言っていたように、暗くなってから行くのは危ないから120、明るいうちに着きたい。でパンとコーヒーだけを腹に詰め込んで、歩いてムロンゴの家に向かう。途中酒飲みオッサンらに呼び止められ、時間を食ってしまう。おかげで日が暮れて、道に迷いそうになる。昼間なら通い慣れた道も、夜になると勝手が狂う。... バハリとキコベはすでにお酒を飲んでできあがっている。予想通り、チャリの所には真っ先に挨拶に行くくせに、こちらにはなぜ来ないと責められる。今日のカヤンバは病気治療のものではなくムロンゴ自身に対する kayamba ra raha らしい。kayamba ra mweziかと問うと kayamba ra mwaka121 だとか。anamadzi89 たちが各地から集まってくるはずなのだが、10時になっても集まりが悪く、ムロンゴたちちょっと機嫌悪い。が11時までには結構な数の kayamba プレーヤーが揃いカヤンバ開始。
録音するつもりがないと、気楽だ。最初のうちカヤンバ演奏にも加わり、途中からは座って眺めたり、いっしょに踊ったり。 kayamba進行は、なんとなく決まったプログラムに沿っているだけのような印象。ハプニングや、思いがけない盛り上がりには欠ける。しかし参加者たちは、チャリのカヤンバにおけるよりも和気藹々である。ちゃんと3時前にはマコロウシク122のマハムリ98とチャイ101が用意できている。段取りが良い。
5時過ぎにクライマックス。ムズング・ワ・ムミアニ123の登場。メガネ、時計がはめられ、タバコが用意され、ファンタがグラスに注がれる。バハリがお金を持ってきてムロンゴの前で開いて、一枚一枚数えて見せている。ムロンゴの場合、このムミアニが一番の厄介者で、仕事を妨害したり健康を害したりする張本人である。 「ムミアニの歌」をムロンゴが先導して泣きながら歌う。 Kure kure kure, Dzombo ni kure nauya dede Dzombo ni kure(日本語訳1) おそらくムロンゴの自作の歌。ややオリジナリティには乏しい。
呪医も人々も、「白人」にはスワヒリ語で応対する。 いきなり私がそばに呼びつけられる。私が腰に着けているカメラバックをムミアニに見せて、「お前も同じようなものを手に入れる」と言っている。私に対して「いつだ」と聞いてくるので、ukifungua kazi, ukifungua mwili, utapata vilevile(日本語訳2) と答えると、どうやらこれが正しい応答だったようで、呪医の女性(ムロンゴのmuteji)も同じことを繰り返す。やれやれ。
呪医はさらに、私を指して「unaona anavaa miwani kama wewe」(日本語訳3)と指摘する。ムミアーニが「イエス」と答えたので、周囲は爆笑する。
その後ムミアーニとベルトの見せあいっこをする。
さらにムミアニは私に自分が持っているたくさんの金を見せてくれる。で、「ポーチをいつくれるのだ」と要求する。呪医と一緒に先ほどと同じ答えを繰り返す。呪医は、さらにクツとソックスもあげると約束し、私と一緒にウラヤ125に帰してやるとも...むちゃくちゃな約束である。
ムミアニは自分の仲間を呼んでくれと言う。メリガナ126。歌は ngui133 が先導するが、kurira yunarira kure, ukalole magana(日本語訳4) というだけのかなりいい加減な感じがする歌。ひとしきり歌って終了。
ムミアニの登場が終わると、プンガヘワ134をひとしきり、でデナ60を抜かしちゃいけないよという女性の弟子のアドバイスでデナ、次いでお約束のシェラ66。全員でキヌ135の所に行き、vuo37をザブザブ浴びながら、例のやけくそのシェラ・ソングズ。最後はムルング136の曲を3曲演奏して全過程を終了。
チャイとマハムリ98を待ちながら、写真をいろいろ撮らされる。 ほとんど一睡もしていないが、久々のカヤンバを堪能。
日本語訳1: 「遠い、遠い、遠い、ゾンボ(Dzombo142)は遠い。私は帰ります、キョウダイよ。ゾンボは遠い。」 日本語訳2: 「仕事を解きほどき、身体をとき解いてくれたら、手に入りますよ。」 日本語訳3: 「ごらん、この人もお前と同じような眼鏡をしてるよ」 日本語訳4: 「泣く、遠くで泣く、100シリング札を見に行きなさい」
ムミアニの白人の霊を持っている人々の、共通の経験が夢のなかで受ける攻撃である。それには、人によって、いろいろなバリエーションがあるが、そこで攻撃を受け、追いかけられる恐ろしい夢だ。しかし同時に、現実の「白人」を見て動転したり、動悸が速くなったり、熱が出たり、息ができなくなったりという経験ももっている。それらはしばしば、それらの「白人」が、憑依霊の「白人」が要求するものを持っている(眼鏡をかけている、バックパックを背負っている、など)ことも引き金になっている。帰宅して、そのまま病気になり、憑依霊の「白人」を専門にする施術師に治療してもらって、ようやく軽快する。
型にはまった夢ではあるが、夢であるので、当然個人ごとの変異も大きい。夢を根拠に、ムミアニの白人とケヤの白人が、結局は同じだと論じたり、ケヤの白人が、ムミアニの白人の手下であると論じたりといったことが起こる。
ムロンゴさんの場合、1991年の夢ではムミアニの手下たちは、制服を着て鉄砲をもち、背嚢を背負い、革靴で行進するといったケヤの白人的特徴を持っているが、翌年の夢ではそれは消えている。飛行機が追跡手段として登場するのは、ムロンゴさんの夢の特徴である。
悪夢から目覚めなければ(つまり夢のなかで捕まって血を取られてしまうと)そのまま死ぬとされるが、こればかりは、眠っている間に死亡した人から聞くわけにもいかないので、確たる証拠のない話だろう。でも夢を見ている当人にとっては怖いことだ。
夢が変異に富み、興味深いのとは対照的に、治療の方は、ムロンゴさんの説明から判断すると、ほとんど市販されているイスラム系(あるいはインド系、ドゥルマの人々にとって両者の区別は曖昧)の伝統薬、その他の市販のものである。ムズングの草木としてしばしば挙げられるムヒナ(muhina143)もいわゆる「ヘナ」であり市販されている。なんだかつまらない。玉葱といっしょに炒めてカレーパウダーを入れるとか、ただのカレー料理みたい。

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tsovyaの別名とされる「内陸部のスディアニ」の絵 ↩
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