(1989年11月17日の日記より)
カタナ君が、ちょうど小屋の前を通りがかったMurina氏に引き合わせてくれる。Murina氏は妖術の治療をする呪医。説明が上手で、礼儀正しいmutumia1だ。奥さんのChariは憑依霊の呪医だとのこと。ジャコウネコの池の坂を下ったmweha2のところを少し右に入ったところに小さな小屋をもっている。行ってみると、Chariは、なんと1987年にkalimboに連れられて占いmburuga3を打ちにいった際の女性呪医だった。私のことを覚えていた。ちょうどNgonzini4で治療をするからいっしょにくるかというので同行する。Ngonzini, Bekpwekpweの屋敷。帰宅は夜の8時になる。疲れたが、とても面白い経験。MurinaはJumma5の日はuganga6の仕事がないので話を聞くにはちょうどいいから、Jummaごとに来るといいと言ってくれる。ありがたい話だ。
これから長い付き合いになるMurinaとChariの施術師夫妻との最初の出会いである。そしてその日にいきなり同行することになったンゴンジーニでのカヤンバは、なんと、ムルング7に「鍋(nyungu18)」を差し出し、「手付の瓢箪子供」を示し、出産を祈願するためのカヤンバだった。ベクェクェの屋敷でのムルングの鍋と瓢箪子供のカヤンバ(ドゥルマ語テキストのみ)。
後日(11月24日)、ムリナ氏らからこの日のカヤンバについて、そして瓢箪子供について、いろいろ話をうかがった。以下はそのテキストの一部である。 ドゥルマ語テキスト(DB 1388-1411)
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Hamamoto: 先日のンゴンジーニでのカヤンバは、瓢箪子供(mwana wa ndonga19)を差し出すカヤンバだったんでしょうか? Bakari(B): そう、瓢箪子供を差し出すカヤンバだよ。 H: ところで、私は瓢箪子供がいったい何なのかまだ理解していないんです。 B: 瓢箪子供ってどういう意味か、かい? Murina(Mu): そこのところを探求しているのかい? B: そう、質問はあなたたちの場所ですよ、お母さん。あなた方は「瓢箪子供を差し出すとは、どういう意味ですか」と尋ねられています。うたた寝しておられるのですか? Mu: 瓢箪子供、その意味はまずはじめには、瓢箪(chirenje)20そのものだ。それは瓢箪と呼ばれます。しっかりと実になるとね。首をもった小さいやつ。さて、女性が憑依霊ムルングをもっているとします。ムルングこそ、その瓢箪(chirenje)でできた子供を欲しがっている者なのです。
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Hamamoto: ムルング自身が瓢箪を欲しがっていると。つまり彼女の子供を欲しがっている? Murina(Mu): つまり彼女の子供をね。さて、ムルングにこうやって(直接に手渡すように)渡すことはできない。まずお前はムルングにンゴマを打ってやらなければならない。ムルングのために鍋を設置して、歌とともに与えるのさ。あの人(ムルング)に対して私たちがやるあの仕方でね。彼女が到来するまで。私たちはあの子供(瓢箪子供になる瓢箪)を彼女に見せてやらねばならない。そもそもムルングが求めているのは、この子ですよとね。今日、あなたに差し上げます。ムルングにね。 Bakari: その子供は、ムルングの子供なんだよ。 H: その瓢箪がね。 Mu: そう。私たちはその子をあのムルングに、あの憑依霊に与えるのさ。さて、その後、ムルングがやって来ると、こちらでは彼女が(ムルングが)踊っている、太鼓が鳴っている、施術師が座っている、施術師はその子を差し出す。施術師は言う。さあ、これがお前の子供だよ。私があなたに調えて差し上げました、私の友よ。 H: でも、まだ何も入れられてないんですよね。
1390,"解説","瓢箪の子供03","Murina and Chari","
Murina(Mu): まだ何も入れられていない。つまり、私たちは子供を祈願しているのだから。私たちは(ムルングに)その子を与える。そして、私たちの方では私たちの子供を祈願する。 Katana: まだ穴も開けられていない? Mu: まだ口も穿たれていない。 H: 口をもっていない? Mu: 口をもっていない。どうしてかって?まだ彼女のお腹のなかにいる、私たちが知らない人(生まれてくる赤ん坊のこと)を求めているんだよ。その子を祈願しているんだ。その瓢箪は、祈願の瓢箪(chivoyero, 動詞 ku-voyera「祈願する」より)と呼ばれる。私たちが今、私たちに与えられることを求めている、実際の人間の子供の祈願の瓢箪。その女性を塞いでしまっていたのは、ムルングなんだよ。さて、私たちは彼女(ムルング/ムウェレ)に対してンゴマを打つとき、それを終えると、私たちは唱えごとをするだろう。「子供はこの子です。私たちも子供がほしいのです」と。 H: あなたはムウェレに対して唱えごとをするのですね? M: そう、そのムウェレに対してだよ。
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Murina(Mu): 「私たちの方でも子供を欲しがっています。あなたの子供については、私たちは約束を果たしました。この子です。私たちも、私たちの子がほしいのです。ここで、云々の日に。」私たちは年(mwaka)を約束にします。あとは子供を見たら、です。 Hamamoto: つまりは、ムルングは自分の子供が欲しかったので、今その女性の子供を封じているのだと? Bakari: そう。腹を塞いだのさ。 Mu: そこで、私たちはそんなふうに祈願するというのさ。ムルングが彼女の腹を塞ぐのをやめてくれるようにとね。もしこちらで、その母親(患者)のもとで、子供が固まり、出産するときに、子供(瓢箪子供)が彼女(ムルング)の子供になりますようにと。さて、(人間の)子供が生まれたら、つまり、こうして子供になり、水を落とし(yudzegbwa madzi21)、つまり固くなり、ひよめきが閉じれば(字義通りには「鍋に蓋がされれば(kufinika dzungu)」、私たちは再度ンゴマを開催しに来るんです。この子供(瓢箪子供)を本当に差し出すためのね。ここで、私たちはその子の口を穿つんですよ。この子の口を開いて、薬を入れるんだよ。今や、布のなかに、生まれてきた子供を背負うための布に入るようにね。
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Hamamoto: 薬(mihaso22)を入れるんですか? Murina(Mu): そう。薬とヒマの油だよ。そして、私たちはンゴマを打つ、ムルングが到来するまで。そしてムルングにまずあちらの子供を見せる。あの歩く方の子供をね。 H: 生まれてきた赤ん坊を見せるんですね。 Mu: あの歩く子供を見せる。この子供(瓢箪子供)がこの相棒を養うように、とね。こちらの瓢箪(chirenje)の方の子供は、こちらの(生まれてきた)子供がこうしてこの子のように固くなるまでは、外に出ないんだ。さあ、今や、(子供を産んだ母親に)2人の子供(背中に背負った子供と瓢箪子供の)の世話をしてもらいましょう。子供を養い、子供に乳を飲ませ、上手に育てますように。あんたは、彼女(赤ん坊の母親/ムルング)にこんな風に唱えごとします。彼女(母親/ムルング)に彼女の瓢箪(chirenje)を与え、彼女はそれを(赤ん坊を背負う)布のなかにくくり付ける。おぶい布(mukamba23)の中にね。あの子供を背負うためのね。 H: あの赤ん坊を背負うためのやつですね。 Mu: そう。布の端のほぐれた部分をこんな風に折り返してね、そこに瓢箪を入れるのさ。瓢箪子供が、前に来るように。
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Hamamoto: ああ、背中に背負うんじゃなくて? Murina(Mu): そう。背中にいるのは、あの本物の子供の方。でもこの子(瓢箪子供)の方はこちら(胸のところに)だ。彼女(母親)がこの子(赤ん坊の方)を授乳するために布からほどくとき、瓢箪の方はこのあたりに垂れ下がる。さあ、こんな風に私たちはムルングに子供を与えるんだよ。子供は瓢箪の子供。畑にある瓢箪そのもの。それを私たちはムルングの子供に作るんですよ。 H: そんなわけで、ムルングはついに自分の子供を手に入れる。 Mu: 自分の子供を手に入れたというわけ。 Bakari: さて、あんたカリンボさん、もしもう少し長くここに滞在できたら、きっとあの女性が本当に妊娠するのを見ることになっただろうね。 H: ムルングが本当にあの女性をとき解くだろうというのですね。 Mu: とき解くとも。そして彼女は子供を産む。彼女が子供を産めば、私たちはもう一度ンゴマを打つ。あの子供の口を穿ち、薬を入れて、本物の子供にするんだよ。
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Katana: ところでその子(瓢箪子供)にはビーズ飾りはあるんですか? Murina: ビーズを紐にとおしたものだけ、それも一本だけね。白と黒(紺色)のビーズをその首のところにね。
(以下の私の質問は、うまく伝わっていないようで、答えも意味不明。) H: Chikala ye muchetu achivyala, phenjine yunahenza mwanawe kahiri, sambi undamupha chirenje kahiri? M: Ni chiratu, chiratu ndo chindakpwenda humbulwa tundu, chitiye ushanga sambi, chitiywe mafuha, ndo chitiywe mihaso, ndo ahewe kahiri sambi. Phamwenga na huya munjine yendakala yudzimuvyala. B: Muratu mulala mo yuyatu muchetu.
Mu: そんな風に、まだ口を穿ってないうちは、瓢箪を寝台に寝かしてはいけないんだよ。それは、ここ、寝台の脚の地面のところに置かれている。 H: 寝台の下の空間にですか? Mu: 寝台の下に、布といっしょにね(布を敷いて)。寝台の中には上げてはいけない。もしそれが(寝台に)上るとすれば、相棒の子供ができてからだ。
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Hamamoto: 布だけですか? Mu: そこに布だけでね。こんな風に(物を頭に乗せて運ぶ際に頭に置く、布をぐるぐる巻いて作った)カーハ(k'aha24)のように巻き付けて、その中に座らされる。 Chari: 黒い(実際には紺色)ムルングの布だよ。瓢箪はずっとそこにいる。その女性が妊娠し、子供が固まり、彼女が出産し、そして生まれた子供が寝台に入るようになるまで。そのとき、瓢箪も地面のその場所から離れて、その相棒の子供といっしょになる。ずっと(瓢箪は)そこ(地面の上)にいる。でもまだ子供にはなっていない。その相棒(生まれてきた子供)には口があるけれど、この子にはまだ口がない。さて施術師は待ち構えている。口を穿ちにやって来る約束の日を。こちらの子(赤ん坊)と同じように、この子もまた口をもつようにとね。だってもし口を穿たないでいると、こちらの子も言葉が喋れなくなるんだよ。さあ、やって来て口を穿ってもらう。この子にも言葉を与えるのさ。穴を開けて、心臓(mioyo=種)を取り出し、さあ、草木の心臓と油を入れてあげる。ンゴマを打って、さあ、ムルングに子供を与えてやる。理解できたの、でも? H: はい、よくわかりました。
Katana: さて、私も質問があります。瓢箪の中に入れる品物(viryangona pl.of chiryangona25)には何がありますか? Murina(Mu): 瓢箪の中に入れるのは、ムルングの草木とあのヒマの油だけだよ。それとムルングの香料と、ブバ(buba26)、ルワフつまりカキリ(kachiri27)、以上。 K: 鶏のものは含まれない。 Mu: ないよ。 Bakari(B): え、中に心臓はいれないの? Mu: 本当の規則はね、肉という名のものは入れないというもの。ムルングの規則さ。ムルングが言うには、瓢箪の中には肉と名のつくものは入れない。草木のマパンデ(mapande12)だけ。ムェレケラ(mwerekera28)、ムヴンザコンド(muvunzakondo29)、ムジョンゴロ(mujongolo30)。 B: ほかの施術師は、鶏の心臓を入れるよ。 M: ムルングの草木、ナンバーワンだけ。ムジョンゴロ、ムヴンザコンド、ムェレケラ。 Hamamoto(H): ってことは、鶏の心臓は入れないと?
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Murina(Mu): 草木こそが心臓だよ。お前は草木の小片(chipande)を切削して、それを心臓として入れるのさ。でも、このあたりでは(施術師たちが)鶏の心臓を入れているのを見たよ。 Chari(C): でもあんた、どう思う?施術師たちの多くがそんな風に心臓を調えて、人(ムウェレ)が外に出されて、翌日には占いが打てないというのを。もう普通の人にすぎないのを。癒やしの術はそこにはない。やったことと言えば。そもそもムコバ(mukoba34、施術師の袋)には生の肉を入れちゃいけないのは、なんのためだと?ムコバには生の肉を入れるものではありません。なのに、瓢箪子供には、あなたは生の肉を入れる。さあ、それでいったい何をしようというの?その瓢箪子供を与えられた女性は、ごらんなさい、子供を産めないから。 Mu: だって、その心臓は腐ってしまうからね。私はまさにそのことでムロンゴ(近所にいる施術師)を問い詰めたことがある。私は言ったね。もし瓢箪子供をそんなふうに差し出すとしたら、鶏を屠って、それを取り出す、つまりそいつ(鶏)を割いて、死んだ心臓を取り出すわけだ。そしてそれを息をしているもの(生きている)子供に入れると。それって死体だろ。死体が歩くのを見たことがありますか?死体が薄粥(muswa)を食べますか?
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Bakari: もう一人の方(生まれてきた子供)は薄粥を食べる。その子は。 Murina(Mu): 何をしたのか。(鶏の)心臓を取り出し、行ってあちらに入れる。こっちの鶏は死ぬ。必ず死ぬ。だってもう屠られているんだから。まだバタバタしているときに、心臓を取り出される。私はムロンゴに言ったね。あんたは先のないステップをとってしまっていると。私はあなたに言いたい。あの子供(瓢箪子供)、あんたはその心臓(瓢箪の種)を取り出した後、あの鶏の心臓を取り出し、それを瓢箪子供に入れた、こちらの瓢箪に。それを瓢箪の心臓にした。あちらの鶏はといえば、すぐに死ぬだろう。(瓢箪に入れた)あの心臓も、鶏同様に死んでしまうだろう。さて、このことでどんな健全さがあるというのか。その日は、大喧嘩さ。 Chari: あなたは死んだ心臓を入れる。あなたは腹の中の子供を求めている。問題がないと?
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Murina(Mu): 最善は、癒やしの術の草木を探すことなのさ。 Chari: あなたが外に出された際の草木ね。 Mu: あなたが外に出された際のです。それを小片(pande12)に、中に入れることができるサイズに切り削りなさい。そしてそれらのパンデだけど、まずお前、夫から始めて、次いで奥さんに続いてもらう。あなたがた二人であなた方の子供(瓢箪子供)に心を入れるですよ。最後まで。終わりましたか?そこで今度は施術師が、香料を入れます。施術師のすることは、香料、それと薬(mihaso)だけです。
C: このあたりでは、瓢箪子供の口を穿つのも施術師ですね。(ムリナとチャリによると、瓢箪子供の口を穿つのも瓢箪子供を与えられる夫婦の仕事) Mu: パンデは、お前と妻とで入れる。もしお前が瓢箪子供のもらい手ならね。あんた方はあんたが他の子供を与えられるんだから。さらに、その瓢箪子供が今日、差し出されるのなら、それがすでに一昨日に口を穿たれていたなんて、とんでもない。それ(口を穿つのも)今日、その日じゃないといけない。今日、調えられて、今日完成し、今日差し出されなければならない。 というのも、私(施術師)のところに(与えられた瓢箪子供を)もってきてよ、私がゆっくり完成させますから、なんて規則破りは、なし。あんた(施術師)(性交を)しないでいられるかい?
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Murina(Mu): だって、私がおまえ(施術師)に渡しちゃったらね。私はお前を短く縛っておく(ヤギをつなぐロープを短くして、ヤギが草を食べられないようにするように、私はお前をお前の妻に近づけないようにする)ことになる。私の日時が来るまでのあいだ、お前がお前の妻に擦り寄らないようにな。万一、お前がお前の妻と一緒にいて、瓢箪子供を「産んで」しまったら、お前は瓢箪子供を「追い越してしまった」ことになる。 それはもう私のものではなく、お前のものになってしまう。瓢箪子供のきまりさ。なのにこの辺り(の間違ったやり方)では、(施術師の)施術上の子供たちは、先に行くように言われて、施術師のところに行ってしまう。結果、あとで私のところで厳しく問い詰められることになる。というのも、人は規則について彼に尋ね、(私のところに彼をひっぱてきて)そこで彼が(厳しく責められて)身動き出来なくなったりするんだよ。 Bakari: そいつ(その施術師)の癒やしの術が問題だらけだとわかるわけだ。 Mu: (施術師に向けての語り)さて、私はお前にこの瓢箪子供を求めた。そしてそれには名前がある。我が子という名前がね。私が、お前に私のためにこの瓢箪子供を産んでくれるよう望んでいると思うかい(ありえないだろう)?さて、私はお前に時間を与えてやろう。お前はそれと(その瓢箪子供と)一緒にいて良い。2週間(ドゥルマでは8日間)ちょうどだ。なぜなら、お前はゆっくりと仕上げると言うんだから。(ただし)お前は私を(私自身が私の妻とその瓢箪子供を産むのを)待たなければならない。お前我慢できるかい?
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Bakari: 我慢しないだろうか? Murina: そりゃお前は、お前の妻を触りまわるに決まっている。もしお前が妻を触り触りしたら、もうお前は間違いを犯してしまっている。お前は私に、私のものではない、お前の子供を渡しに来ることになる。私に対してこの我が子で間違いをしでかしたことになる。私は嫌だね。だから、この日の内にだ。もしお前が遅れたとしたら、それはお前の問題だ。私の知ったことではない。でも私は、明け方の冷たい空気の中で、私の子供が欲しいのだ。私に瓢箪子供を渡せ。夜が明けたときには、お前はすでに私に子供をわたし終えていてほしい。その後に黒いビーズを付けるとか、なんとか。しかし私は私のスケジュールどおりに事をはこんでほしい。でも、その挙げ句、私は面倒なやつとか言われるのさ。 Chari: その手の癒やしの術は自ずと失敗するのさ。 Mu: 癒やしの術とはこういうものだ、でも癒やしの術は重い(困難だ)。この頭の中に癒やしの術を運んでいくのは、重い。その道はとっても難しい。 C: あなたは、もう処置しましたという。さあ、お踊りなさいな。 B: そしてその「もう処置しました」の言葉が、だめになる。
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Chari:(私に) でも、あんた癒やしの術の物語(stori)をたどるというのなら、ああ、癒やしの術はとっても難しい学問(chisomo chikali)だよ、あんた。 Hamamoto: はい。ところで... Murina: 施術師は言う。ムコバ(mukoba編袋34)も今日、瓢箪も今日、瓢箪を入れるためのムコバそのものも今日。そして瓢箪類もすべて今日。明日には、これは、午前5時には、すべてのものが、用意されてなければならない。 C: というのも、このムコバにしても、編み始めもその日になってから。そしてその日のうちに終わらせねば。 Mu: 編み手(縫い手)も、あんたたち二人、二人。あるいは三人、三人。でもそれを終わらせること。それに網籠も。 Katana: それに瓢箪を準備する人たちも。つまり瓢箪にビーズ飾りを巻く人たち。 Mu: 今日中にだ。一日のうちにだ。 Bakari: そもそも施術師が到着するときには、すでにアナマジ(anamadzi35)たちといっしょに来るからね。 C: 癒やしの術は大変なんだよ。
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Murina(Mu): さて、彼らの様子を見たら、彼らには出来ないことがわかる。その今日、この日のうちにの作業が。そして台無しに転落。それは困るんだよ。規則は、今日のうちに調えよ、なんだよ。 Katana: そいつらは近道をとろうとする。 Mu: その近道というのが、そもそも間違い。お前さんのアナマジたちは信用できない。今日は調える日。ンゴマは明日、明後日に。なんて私は信用できない。もしかしたら、お前さんも、もうごまかそうとしている。お前さん、施術師がね。だって、お前は癒やしの術のスタイル(sitaili)を知っているから。一人のムァナマジ35でも、ここで過ちを犯すに決まってるんだから。自分たちの家に行って、そこで誰かと過ごすかもしれない。あるいはこちらに(相手を)呼んで、示し合わせた場所で一緒に過ごすかもしれない。あんたが彼らに家に行ってくる許しを与えるかもしれない。そこで彼らは間違いを犯すだろう。そんな風に彼らが事を駄目にしてしまうのさ。何を欲すればいいんだろう?(ンゴマが)終わったら、自分たちの瓢箪子供を自分でもって帰るのさ。あんたはあんたの妻とともに帰る。もう癒やしの術は与えられている。するべきことも告げられている。大事なのは、そこにいた連中によってあんた方が「追い越されない」ようにすることさ。あんたたちの瓢箪子供がね。
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Katana: あなた方が最初の者になりなさいと? Murina: そう。あなた方が最初の者でなければ、あなた方が。たとえあの連中全員(ンゴマに従事した施術師やそのアナマジたち全員)が彼らのそれをしようともね。あなた方がすでに先行している。もし遅れたら、あなたは「追い越」される。 K: たしかに追い越されるね、そして駄目にされる。 Mu: 癒やしの術は重いんだよ、あんた。多くの人は、それにかなわない。 Bakari: あなた方は困難をかかえている。 Mu: なぜなら、癒やしの術には禁止があるからね。この癒やしの術には、あんた。ところで、カリンボ(私のこと)、お前の質問なんだっけ? Hamamoto: はい。もし、瓢箪子供を与えられた女性が、子供を順調に産んで、たくさんの子供をもったとします。そうしたら、その瓢箪子供の仕事は終わったのでしょうか。その女性は、それを捨ててしまってもいいのでしょうか。あるいは放置しても? Mu: 放置しちゃいけないよ。だってそいつ(瓢箪子供)は彼女の子供なんだから。誰それさんの子供だったんだから。さて、私たちはンゴマを打って、子供を祈願しました。そしてその瓢箪子供は、彼女が子供を産むように、彼女のために道を解き開くための子供だったのだから。
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Murina: 彼女が出産するように、そしてもし彼女がその子(瓢箪子供)を大切に扱えば、彼女が完全に子供を産み終わるまで、彼女の生涯を終えるまで。彼女が大切に扱えば、その一人の子供(瓢箪子供)がだよ。もし瓢箪子供を壊してしまったら、彼女は(施術師に)来てもらってもう一人、調えてもらわねばならない。もっともそう簡単には壊れないんだけどね。 Bakari: 施術師のところに行かなけりゃならない。 Mu: それも、簡単には壊れないんだよ。壊れるといえば、もしお前がその子が壊れているのを見たら、それは何か問題があるってこと。 B: 何か過ちがおきたってこと。 Mu: だって、お前がその子を落としても、その子は壊れないもの。でもその子の相棒(一緒に生まれた実際の子供)につかまれて、(地面に)ブウェ、ブウェ、ブウェって叩きつけられたら、壊れるかもしれないけど。でもお前(瓢箪子供を授けられた女性)自身、(それを結びつけている)布からはずれて、その子を落としちゃったとしても、その子を見てもまったく無事だろうよ。(中の)ヒマの油すら漏れない。たとえ、こんな風になっても、油はこぼれない。
1406
Bakari: こんな風に逆さになっても、地面の方に向いてもね。 Murina(Mu): その子の首が折れているのを見たら、お前、その子の父親がその子を追い越した、あるいはその子の母親がその子を追い越したってことだよ。お前がブッシュで(妻以外の)別の女性といっしょにいる(性関係をもつ)。そして家に着くと、その子(瓢箪子供)の首は本当に折れている。 B: 家の中にいたその子の首が折れている。 Katana: つまり、その瓢箪子供って、もしあなたの妻が瓢箪子供を作ってもらったら、あなたは「外の妻(muche wa konze[^muche_wa_konze])」と性関係をもちにいくことは出来ないというんですか? Mu: 絶対に外に行かない(妻以外の女性との関係を持たない)。 K: 絶対に?そして妻の方も同様に? Mu: 妻の方でも同様さ。 B: だから施術師も(瓢箪子供を「外に出す」ンゴマで与えられている以上)、外には行かないのさ。彼自身の妻とするしかない。彼の妻も外には行かない。
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Murina: 私は外には行かない。私が施術師に課す禁止事項は、彼が私に瓢箪子供を与えたら、その後、彼は私よりも先にやってはならない、です。 Bakari: なぜなら規則は、最初にお前が「産むこと」を始める、だ。その施術師がじゃない。 Mu: (施術師が授けられた者の夫に言う)まずお前が行け。そして事を終わらせなさい。そして私に(私自身がする)機会をください。(施術師は)じっとしている(妻との性関係をひかえている)。ずっとじっとしている。その施術師は。さて、お前はやるべきことをやって、すでに終わっている。さて、お前の施術師に譲りに行け。施術師が今度は(その妻と)ことを行う。それが済めばおしまい。お前の方では、彼を咎める理由はなくなる。今や、間違いが起こるとすれば、それはお前自身の問題だ。 Katana: でもその施術師は? Mu: 彼にはもう何の問題もない。自分の屋敷にいて、お前にすでにちゃんと(瓢箪子供を)授与済みだ。今後、彼がどこへ行くかだって?彼の勝手さ。でもお前、この瓢箪を与えられたお前。そしてお前の妻。そう、あんた方二人は、その瓢箪を与えられた。もしあんた方が瓢箪子供に間違いを犯せば、それまで。あんた方はまたあちら(施術師のところ)に戻らねばならないだろう。だって、瓢箪子供は壊れちゃったんだから。
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Hamamoto: 瓢箪子供は、どんな風に壊れるんでしょうか? Bakari: 首が折れるのさ。 Murina(Mu): すっかり割れてしまう。 B: 真ん中で割れるのさ。 K: つまり、もし... Chari: 壊れないとしても、必ず油が溢れてくる。 Mu: 幸いに壊れないとしても、油が全部流れ出てしまう。その子は吐き続けるばかり。ずっとぶくぶく。すっかり無くなってしまうまで。 B: 油が上ってくる。 Mu: 後にはただの瓢箪(chirenje)だけが残るのさ。 K: そんな風に教えるのさ。 C: その子は泣いているんだよ。 H: 油がこぼれることが、泣いているということ。なるほど。
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Katana: で、もしその女性が閉経すれば、子供を産むのを止めれば、その子供(瓢箪子供)は、相変わらず彼女といっしょにいるのですか? Murina(Mu): ああ、それまでだよ。もし彼女が閉経すれば、そう、その子(瓢箪子供)もいなくなる。 Bakari: つまりもう子供を産まなくても良くなれば。 Hamamoto: そのまま寝台の上にいるってことは、その子は? Chari: そう、寝台の上にいる。 Mu: その子はそこ、寝台にいる。その子は、今や、(彼女が産んだ)歩く子供たちを育てている。すでに彼女が産んだ子たちをね。今や、この子(瓢箪子供)は彼らの守護者なんだよ。 C: (瓢箪子供は)彼女自身も護るんだよ。 H: じゃあ、その女性が死んだら、その瓢箪子供はどうされるんですか? M: 彼女が無くなったら、その子供は、その心を取り出されます。施術師自身によってね。(巻いてある)ビーズ飾りも全てほどかれます。中身をすっかり全て吐き出させられます。だって、もう所有者はいないんですから。
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Hamamoto: 「お悔やみのカヤンバ(kayamba ra pore)」を打つ必要はないのでしょうか? Murina(Mu): その当日には大いに打たれますよ。カヤンバは打たれます。それは「悔み(pore)」のカヤンバですよ、それは。彼女(死んだ女性)のために服喪(hanga)が開かれるじゃないですか。さあそこで、その子はビーズの紐を切られるんですよ。 Katana: でも、(死んだ女性が)施術師じゃなかった場合でもでしょうか? Mu: ビーズの紐は切られるし、心は取り出されます、すべて。施術師じゃなければ、カヤンバは打たれません。 K: でもその瓢箪子供の持ち主の女性に対しては、カヤンバは打たれないと? Mu: (ビーズ紐は)切らねばなりません。施術師たちがビーズ飾りを切って、(瓢箪のなかの)薬を全て取り出さねばなりません。 K: でも、(カヤンバを)打たないといけないのは、施術師ですね。 Mu: 施術師にはカヤンバが打たれねばなりません。というわけですよ、カリンボ。説明は以上です。