Nov.8, 1991に憑依霊ドゥルマ人の「鍋」を始めたTusheTusheのための憑依霊ドゥルマ人の「鍋」だが、私の個人的予想に反して12日間しっかり湯気浴びが行われた。施術師就任のンゴマ(ngoma ya kulavya nze1)は予定では11月22日の夜に開催されることになっていたので、ドゥルマ人の鍋に12日かけてしまうと、憑依霊全般(世界の住人 arumwengu2)のための4日間の鍋が難しくなるので、ドゥルマ人の鍋は短縮されるだろうと思っていたのだ。そんなに大事だったのか、憑依霊ドゥルマ人対策は。
しかもChari自身のための、シェラ(shera)、憑依霊ディゴ人(mudigo)、ライカ(laika)の3種類の憑依霊の施術師就任のンゴマ--これまでに2回も異なる施術上の父母によって受けていたのだが、手続き上に間違いがあって(チャリ談)うまくいっておらず、これが3度目の挑戦になる--が11月18日の夜から19日の日暮れまで予定されていた。あまりにも過密なスケジュール。11月9日の夜にも徹夜のカヤンバ(Chari自身の「月のカヤンバ」see kinds of kayambaの予定をキャンセルして、Chariの施術上の子供である女性のためのcherekoの瓢箪子供を授けるカヤンバを開いた)を主宰し、11月16日の夜もNgonzini3の施術上の子供のための徹夜のカヤンバ主宰したばかり。
私が憂慮していた通り、Tusheのための「招待の鍋」は11月20日に据えられた。本来は4日間の鍋なのだが、場合によっては2日でいいのだという。朝夕2回kudzifukiza し、キザを浴びる。この日の晩に始めると22日の朝にちょうど4回が終わるから、これでいいのだと言う。いいのか? 憑依霊全般に対して、ンゴマを告知し、鍋に招待して、当日機嫌よく踊ってトラブルを起こさないよう頼むのが目的である。
(from diary) Nov.20, 1991, Wed, kpwisha 目覚めても疲れが残っていたが4、Murinaたちのことが気になったので、ちょっと様子を見るつもりで訪問。Mwanakombo(昨日来ていて、Bang'a5の帰りにMurinaのところに荷物を届けたときにであっていた)6たちに対するkuphendula7が始まるところだった。それに参加。午後TusheのNyungu ya kurongeshaを据えると言うので、あまり期待していなかったが、一応同行することにする。一発目、学業不振の青年に対するfyulamoyo8のkuphendula7。すっかり慣れたkuphendulaの手順。3時に再訪すると、まだMwanakomboたちに対するugangaの続き。Mwamakomboのmukakazi Chiziに対するtego9の治療と、Mwanakombo に対するkutsodza10。Tegoの治療は面白かったのだが(呪文が)、テープレコーダの操作をミスって録音失敗。どうも外部マイクにしてからミスが目立つ。昨日のkayambaでも録音したつもりであった箇所がすっぽり抜け落ちていた。....(中略)... 5時過ぎて、ようやくkurongeshaが始まる。単に普通にnyunguを据えるだけだと思っていたら、Chari, Murina, Tabu, Muchenzala11の4人でTusheを囲んでいきなりkayamba12を打ち始めたのでびっくり。ぼんやりしてたら、お前も入れと言われて打つ。8時過ぎにキジヤモンゾに帰る。TusheはあさってのngomaまでChariの家で過ごす。あさってのNgoma はngoma zenye13だそうだ。
MurinaとChari夫妻。男性施術師Chaiはンゴマ当日に来訪予定。 患者はTushe(本名Umazi)、Chariの施術上の子供(mwana wa chiganga)14
(1991年11月20日のフィールドノートより) 例によってフィールドノートをほぼそのまま転記したテキストをそのまま貼り付ける。ナンバリングはフィールドノートにおけるもの。フィールドノートそのものの記述に手を加えないため、現地語なども注釈の形で補足説明することにしている。(DB...)は後にフィールドノートに紐づけた書き起こしテキストの、該当箇所を示す番号。植物名の同定はフィールドではできず、文献に基づく事後的な補筆である。
【Umazi(Tushe)のための kumita nyungu ya kurongesha】
mihi ya mulungu15 mulagap'ala(Croton pseudopulchellus; =muyama(?) kalagapala, chilagapala) chinukamuhondo(Sesbania sesban, Egyptian riverhemp; =mwamusunza mwamutsanza)16 etc.
朝夕ku-ohaする17 その後vuoでkoga18 4回、つまり今晩始めると明後日(Nov. 22)の朝に終了
(1)chinukamuhondoを手に持ってnyunguの端に置き makokoteri
chinukamuhondoの唱えごと
(DB 4065-4066)ドゥルマ語テキスト
次いでTusheがmakokoteri
Tusheによる唱えごと
(DB 4067-4069)ドゥルマ語テキスト
(2)nyunguの中に集めてきたmihiを次々に円を描くように詰めていく
(3)chivumbani(luvumbani?=Ocimum gratissimum)で作ったmwingo、およびnzugaを用意
(4)nyunguとchizaの用意ができると、Tusheを座らせ、mulunguの布19を
頭からすっぽりかぶせ、kayambaを打つ(Murina、Chari、私、Chari
の2人の娘)
カヤンバ開始
(DB 4070)ドゥルマ語テキスト
カヤンバ演奏曲
(DB 4071-4076)ドゥルマ語テキスト
(5)Tushe、golomokpwa20する
mwingo21とnzuga22を渡して、ngomaを告げる
その後Chari, Tusheにkudzifukiza23のやり方教示
Tusheが持ってきたkuni24をくべて kujita nyungu25
憑依状態のトゥシェに唱えごと
(DB 4077-4080)ドゥルマ語テキスト
(6)Tusheがnyunguをkufukizaする。kayamba演奏のなかでChariはmakokoteri 鍋の湯気浴び開始 (DB 4080-4082)ドゥルマ語テキスト
今日からTusheはngomaが終了するまで、Chariたちの屋敷で寝泊りし 朝晩 nyunguをkufukizaする。
4065 (チャリ、キヌカムホンドを持って鍋の縁に手を置き、唱えごと)
Chari: さて、私はお話しします。私がお話しするのはウマジのためです。ウマジはその父と母から、きれいな息をもって生まれました。なのに今、このとき、どうでしょうウマジは。ウマジが発狂したのは昔のことです26。彼女に求められていたもの、それは癒やしの術(uganga)だと言われております。ウマジは長い年月、発狂していました。ついに今や(憑依霊たちと)互いに手を結び合います。そして今や、彼女は癒やしの術を差し出すことを望んでいるのです。 こうして今日、私は鍋を差し出します。この鍋はあなたムルング子神のものです。ムルング子神に続くは憑依霊アラブ人(p'ep'o)27。あなたはバラワ人28、サンズワ29、バルーチ人30、ムクヮビ人31、キツィンバカジ32をおもちです。おだやかに、おだやかに皆さま。私は皆さまに「おだやかに」の言葉を発しに参りました。 私は皆さまにおしずまりくださいと申し上げます。そして「おしずまりください」の言葉に皆さまどうかご傾聴ください、私の兄弟の皆さま。こうして、私はウマジのためにこの鍋をお置きします。この鍋が、癒やしの術をほぐし開いてくれますように。癒やしの術が首尾よく輝きますように。
4066
Chari: もし本当にあなたムルング子神によるものであれば、あなたが自分の瓢箪の子供を欲しておられるのなら、あなたの子供はすでに用意されております。もしあなた世界導師、あなたなら、あなたの子供も用意できています。 でもまずは、彼女にこの上なく良い夢33を与えてください。降りてきて、ウマジとともに薬液(vuo)34の水を浴びてください、あたなムァムニィカ35、またの名をヴンザレレ36、偉大なるヘビよ。あなた、バラ・ナ・プワニ(内陸部と海岸部37)よ。あなたこそ、昔からウマジに癒やしの術を求めている者です。あなたは(ウマジの)夢の中にやってきて、彼女のために護符(pingu)を吐き出してお見せになった。あなた世界導師。そしてあなた世界導師こそ、偉大なるムルングその人ですね、あなた。こうして今日、私たちはウマジに鍋を与えます。(癒やしの)仕事のための鍋だと、お知りおきください。この鍋は癒やしの術(uganga)の鍋で、ンゴマはもう明後日です。月の5日目です。施術師たちよ、ご傾聴ください38。 H: ムルングの。 C: さあ、私は鍋を差し込みます。
4067 (チャリはトゥシェ(ウマジ)を呼ぶ。ウマジやってきて、チャリに代わって唱えごとを続ける)
Tushe(Umazi): 私の苦難は昔に始まりました。当時、私には調えてくれる者はおりませんでした。なぜなら、もしお前が子供であれば、お前はお前の配偶者(dzumbero)をお待ちなさいと言われるからです。私は自分の配偶者を待ちましたとも。ついに配偶者を得ましたが、彼はまったく関心をもちませんでした。キリスト教徒だったのです。どうしようもありません。相変わらず苦難つづき、苦難つづき。ああ、私はいったいどうなってしまうのでしょう。私はクェチェ(占いの瓢箪の音)をしに行きました。そして憑依霊のせいだと言われたのです。憑依霊たちが癒やしの術を欲しているというのです。さて、本当にあなたがた私の憑依霊たちのしわざだったのですね。あなたがたは知識をおもちでした。あなたがたは癒やしの術の皆さまでした。私は地面に頭を打ちつけました。そして頭を満たし、ついに今では、癒やしの術に通じております。癒やしの術が輝きますように。輝きますように。癒やしの術とはそれです。この鍋は癒やしの術の鍋です。このキザは癒やしの術のキザです。この癒やしの術が輝きますように。もしあなたがた憑依霊が本当に癒やしの術を望んでおられるのであれば。
4068
Tushe: なぜなら私の困難は昔に始まったもの。本当に昔に、まだ私が小さかった頃に始まったのです。クェチェをしてもらって、憑依霊(p'ep'o)だと言われたのです。 Murina: 鍋はもう煮たのかい? T: いいえ、まだよ。煮ないといけないの?じゃあ、もし私のなかに、どこかちょっとした恨みごと(結び目 kafundo)39があるとしたら、ほどけますように。わたしは自分であれこれ奮闘してまいりました。もしなにか「しこり」があるとしたら、徹底的にそのしこりを取り去ったほうが良いでしょう。そもそも私は今や、どこにも悲しむようなことはありません。私のお母さんをすら売り払うにいたった(これは母の遺産として手に入れたウシを売却したことを差している)私のこの奮闘努力についてすら。私は地下の世界(死後の世界)にいる母をすら売ってしまいました。ですから、私はこの癒やしの術が順調に外にでてくることを望んでいるのです。 (トゥシェは口に含んだ水を自分の胸に吹きかける) T: プーッ、プーッ。これでいいかしら、皆さん。 C: ええ。
4069
Murina: 鍋に熱気あれ。 Tushe: 鍋に熱気あれ。そして夢(k'oma)。私はあらゆる種類の夢を見ます。意味のないバカバカしい夢は嫌いです。もし(憑依霊の)皆さま方、皆さま方が癒やしの術の方々なのでしたら、バカバカしい夢は嫌です。私は言葉と良き段取り(の夢)を望みます。皆さま方が癒やしの方々であり、癒やしの術を望んでおられることの証拠となるような。 C: ンゴマの当日に、草木を示していただけることを。 T: やがてンゴマの当日になれば、どうか皆さま方が癒やしの術を本当に求められていることをお示しください。でも、どこか知らない場所に連れて行かれて、夜が明けたら、頭が気の触れた言葉を喋りだす、そんな夢を見せないでください。まずもって、頭がおとなしくしていますように。癒やしの術とはこういうものだと頭が理解しますように。そしてもしお一人、彼女はどうせうまく行かないよとおっしゃる方がいらっしゃるなら、その方、彼女はうまく行くまいよとおっしゃる方は背中に置き去りにして、皆さま方だけ外に出てらしてください。 これでおしまいでいいですか。それともほかに言うべきことがありますか?
Tushe: じゃあ、あとは煮てもらうだけね。 Chari: いやいや、まだ。黒い布はもってる? T: 布は持ってきました。でも向こうにあります。私が来たときに、受け取って行かれたでしょう。真っ黒な布。 (Tushe 黒い布を頭からすっぽりかぶって鍋の前に座る。) (Chari、長声とともに、キザの薬液をトゥシェの頭に振りかける) C: ヒリリリリリ... T: これが一回目。 C: ヒリリリリリ... T: これで二回目。 (以下、7回目まで繰り返す) C: ヒリリリリリ...
長声T: これで七回目。 C: さてンズガ(nzuga 三日月型の金属製の鈴)を始めてね。こんな風にチャランチャラン ngbwenje ngbwenje、って。カリンボ、どこに腰掛ける?ランプはないの? Muchenzala(Chari's younger daughter): ランプはあるわ。すぐに持ってくる。
4071
Chari: じゃあ、持ってきて。それと(Tusheに)水の入った割れ鍋(chigae)をもってきてあげて。 (ムルング子神の歌、開始) 降りてこい、おだやかに、ムルング子神 エーエ、降りてこい 昨日、私たちはやって来てとまった。ムクセ(=laika mukusi)子神のおやつ。40 お母さんのところに行きましょう、我が子よ 降りてこい、おだやかに、ムルング子神 エーエ、降りてこい
4072
カンガガの池(カイエンガヤツリ41の生えている池)、お前は不思議。 睡蓮の池には不思議があるよ。 私は眠らない。私は(憑依霊の棲み家の)池を畏れている。そうとも。 睡蓮の池には不思議があるよ。
4073
Chari: カリンボ!なんでずっと黙ってるの。歌いなさいよ。ほらあんたのカヤンバよ。 H: はーい。 (歌) ヴンザレレ(東アフリカグリーンマンバ)、ヴンザレレ まさに偉大なるヘビ 後ろをよく見てごらん そいつはビーズの飾り物を身につけているよ
(Murina、歌が繰り返されているあいだにトゥシェに語りかける)
Murina: さあ、我が友人よ。さあ、我が友人よ。
4074
ヘー、蛇、ヘー、蛇、ヘー、蛇 空(mulunguni)の上の方には蛇がいるってさ 争いごとを壊すもの42 おお、蛇、エエ、蛇、エエ、蛇 争いごとを壊すもの、エエ、蛇
私の子どもたちに会いに行かせて、みなさん ムァチェ(地名、川の名44)に私の子どもたちに会いに行かせて ムァチェに、私の子どもたちに会いに行かせて お母さんのところに 私の子どもたちに会いに行かせて
(歌の演奏中、Chariはトゥシェに繰り返し呼びかける)
Chari: 降りなさい、降りなさい。
4076
おぉ 私の蝿追いハタキ お母さん、私の蝿追いハタキ 私はひどい扱いを受けているわ、おぉ、私の蝿追いハタキ 私に蝿追いハタキをちょうだい、施術師の方々 おぉ、私に蝿追いハタキをちょうだい、施術師の方々 私に探索させて(nivoyere)45
(トゥシェ、憑依状態に)
Chari: 皆さん歌いなさいよ。 Tabu(Chari's elder daughter): お父さんにも歌ってもらいましょうよ。(歌い続ける) Murina: ああ、私には歌えないよ、お母さん。 (Chariは彼女に憑いていると思われる霊ムルング子神に語りかける) あなた、あなたに小さな鍋を置いて差し上げましたよ。この小さな鍋は、喜びの鍋ですよ、あなた。癒やしの術(を外にだすため)の鍋ですよ。癒やしの術のための鍋が必要とされていると言われているのです。私たちが言われたことには、その癒やしの術はあなたムルング子神の癒やしの術なのです。わたしたちはあなたがたにあなたがたの鍋を差し上げます、あなた。わたしたちは、仕事が必要とされていると言われております、あなた。だからお互いに理解し合いましょう。私はあなたに小さな鍋を差し上げましょう。私はあなたこそが、あなた、仕事を欲しがっていると言われております。バラ・ナ・プワニ37もいらっしゃいます。でもあなた、それはあなたでもあるのでしょう?あなたじゃないのですか? (中断) Chari: ちょっとそのランプをちょうだい。 (唱えごと再開) Chari: わたしは仕事が外に出てくるよう望んでいます、あなた。ほら蝿追いハタキ(mwingo)ですよ。これは何かを探索する(見出す)ための蝿追いハタキです、この蝿追いハタキは。降りてきてください。 (歌はキツィンバカジの歌に変わる)
4078
キツィンバカジ ムルング子神 ムルング あなたには不思議がある、あなた ああ、池 わたしンダワは苦しめられている ウェー わたしはわたしのムルングに祈ります ムルング あなたには不思議がある、あなた わたしは池に わたしンダワは苦しめられている ウェー わたしはムルングに祈ります 雨が打ちつけてきたら何を背負えばいいの?
4079
Chari: ムルングはまさしくキツィンバカジ。降りてきてください。降りてきてください。さあ、わたしの友よ。わたしの友よ、あなたに小さな鍋を差し上げます、あなた。仕事の鍋です。さあ、今、鍋をお受け取りくださることを願います。これが招待の鍋です、これが、あなた。さらに後ほど、あなた自身のキティティ(chititi 占いに使用する小さい瓢箪のマラカス)も差し上げます。鍋、こちらがムァキヴチェ(mwachivuche 施術用語で「蒸気」、ここでは鍋nyunguを指す)ですよ、あなた。そしてこちらがムブソ(バチャバチャ mubuso、ku-but'a 池や川などの水場で水をバチャバチャさせて遊ぶ、より、ここではキザchiza46を指す)ですよ、ムブソ。それは仕事のためのもの。さあ、わたしの友よ。ムァキヴチェご覧になりましたか。ご覧になって、首尾よくお受け取りいただけましたか? Tushe:(憑依状態で)えぇぇぇぇ! C: 仕事についても、のちに私たちはしっかり見ることになるでしょうね、わたしの友よ。ムルングとその仕事について祈りましょうね、あなた。あなた、バラ・ナ・プワニの仕事も、そして憑依霊ドゥルマ人の仕事も。わたしの友よ、仕事こそ私たちが望んでいるもの。私たちは(さまざまな病気の原因に)仕事があるとだけ言われています。私たちには、その仕事の問題がいつ始まったのかは、わかりません。仕事があるとだけ言われています。私たちはそれについて知りません。
Chari: でも今や、私たちはムァキヴチェを差し出しました。仕事のムァキヴチェです。ンゴマもすでに明後日ですよ、わたしの友よ。 (唱えごと中断、ChariはTusheに普通の口調で鍋の蒸気を浴びる際の注意を与える) C: この鍋は、ここに置いておきます。そしてンズガ(nzuga)はここに。蒸気を浴び終わったらチャラン、チャラン、チャラン、チャラン。 Murina: さて、鍋を火にかけようかね。 C: (Tusheに)さあ、あそこにある薪を焚べて。(Hに)彼女自身に薪を持ってこさせて、来て焚べさせ、すぐに湯気を浴びさせる。そうしないと効果がないのよ。 M: (Hに)彼女が湯気を浴びるとき、このンズガは腕につけておくのさ。 C: そして彼女のキヴンバニ(を束ねて作った蝿追いハタキ)。そしてカヤンバもここに。 (Tushe戻って鍋を火にかけ、kudzifukizaの準備を調える。) (カヤンバが演奏されムルング子神の歌が歌われる中、チャリが唱えごと) C: さてあなたムルング子神。わたしたちは鍋を差し出しています。この鍋は、そう仕事の鍋なのです。
4081
Chari: 別の鍋については、すでに差し上げています。憑依霊ドゥルマ人たちでしたら、すでに仕事について告げるための彼らの鍋を与えています。今、今日はこの鍋です。鍋よ、熱気あれ。それも、癒やしの術と癒やしの術の夢47にふさわしい熱気を。さらにンゴマの当日には、どうか皆さま、彼女に草木をお示しください。彼女が自分でブッシュに入り、自分で草木を折り採って来て、私たちに彼女は本当に求められているのだと知らしめてください。 でも私たちは、彼女がたしかに仕事を求められているのだということを、確信してはいます。というのも(彼女の病気は)子供のときに始まっていたからです。いまこそ、皆さま方、仕事に降りてきてください。あなたムルング子神、どうか降りてきてください。北の皆さま(a kpwa vuri)も、南(a kpwa mwaka)の皆さまも、東(mulairo wa dzuwa)の皆さまも、西(mutserero wa dzuwa)の皆さまも、ブグブグ(bugubugu48)の方々も、ニェンゼ49の小池の方々も、皆さま降りてきてください。降りてきてください、ミドゥングニ(lemon scented knobwood,高木)の方々、おだやかに。降りてきてください、キンガンギーニ(Ching'ang'ini 池の名前)の方々、おだやかに。降りてきてください、キンベーブォ(Chimbepho 池の名前)の方々、降りてきてください、マレレ(Marere 淵の名前)の方々。皆さまそろって降りてきてください、キグルフュラ(Chigulu fyula 池の名前)の方々、ゾンボ山(Chirima cha dzombo)の、キリマンジャロの高い木々の方々。
4082
Chari: 皆さまそろって、世界導師(mwalimu dunia)37の仲間の方々。あなた世界導師、またの名をカリマンジャロ(kalimanjaro)50。あなたバラ・ナ・プワニ、あなたジャバレ導師(mwalimu jabale)51。わたしはおしずまりくださいと申します。この仕事、この鍋は仕事の鍋です。ここにおわしますあなたムルング、そこはあなたバラ・ナ・プワニのおわすところ。これなる鍋、この鍋、どうか二本の腕でお受け取りください。憑依霊ペンバ人の皆さまのおられるところ、皆さま、わたしの兄弟の皆さまも。どうか皆さま力を合わせて、この人間の者であるこの者に仕事をお与えください。どうして彼女は苦しんでいるのでしょう。おだやかに。どうかムツァンゾーニ(mutsanzoni 「外に出す」施術師就任のンゴマの際に草木が示される場所を指示する施術師用語)に、わたしは皆さまを心から招待したいのです。皆さま方に招待の鍋を差し上げるのです。この鍋の湯気を浴び、外に出て草木を折り採ってきますように。彼女が眠れば、皆さま彼女に草木を見せてあげてください。この鍋は招待の鍋です。 Murina: そしてわたしはテキパキした52癒やしの術を望みます。 C: それこそフピ(Fupi53)さんのところであった話よ。彼女は鞭打たれたのよ。ンズガを手に取ったらもう、追い立てられて。行って草木を折り取ってこいって。無理やりね。 M: 噛みタバコ、食べさせてよ。