(Oct.3, 1991のフィールド・ノートより)
「草むらの洞窟」村のNyu...老宅訪問。Mwanyotaクラン1の歴史についてのインタビュー。....(中略) Nyu...の妻Mupaは憑依霊のmuganga2。 先日のBora の屋敷でのkuzika(Sept.11, 1991)で私を見たという。 彼女にはmuzungu wa mumiani4 がおり、このためmuzungu5を見ただけで、roho yinaanza kpwahuka, mpaka akokoterwe.訳文1 Malindiの息子を訪ねた際にも、azungu5が一杯なため roho ni kpwahuka kpwenda訳文2 だったという。 背中に背負う mufuko6 が欲しいという。来年のお土産約束。
訳文1: 心臓が破裂し始める。(「白人」に対して)唱えごとをしてもらわないと。 訳文2: 心臓は破裂し続ける。
(Sept.7, 1992の日記7より)
午前9時キラジニ川向うの「草むらの洞窟」村のNyu...老を訪問。Nyu...老は妖術系の呪医2だが、彼の妻Mupaは憑依霊の呪医2で、昨年訪問した際に約束していたお土産のバックパックをたいそう喜ぶ。彼女の持ち霊のムミアニの「白人」のせい。
(Sept.7, 1992のフィールドノート8より) ムミアニの白人の要求: バックパック、ソックス、白いつば広帽(野球帽みたいな?)10、靴 これらは治療するときに身につける
MupaによるMuzungu wa mumianiの説明(DB 5121-5123) 夢のなかで追いかけられる話が面白い
Muzungu wa mumianiの呪医(DB 5126-5129) Muzunguは占いが嫌い、瓢箪も嫌い kulavya nze11 はお金を払って、mihi12を示されて終わり 背中に背負うバッグはmugangaにkokotera24してもらう mihiはバッグのなかに入れる
muzunguをもっている施術師にしかkukokoteraはできない。 もっていないのに kukokoteraすると病気になる
農耕を嫌う
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Mupa(M): それとソックスとつば広帽子ね。 Hamamoto(H): ふむ。 M: さて、私が施術に行くときには、それを被って行くのよ。(被る動作をしながら) H: おお、つばが一方にだけあるみたいなつば広帽子なんですね。 M: そうよ、あのつば広帽子よ、あの重たい28。 H: なるほど。 M: そう。さて、それが欲しがられているのよ。もし私がワンピース(長衣)を着用するとしたら、帽子とソックスと靴を加えないとね。もし施術に行くなら、それらの品々を身に着けて行かないと。 H: ところでこの「白人」ですが、人をどんな風に苦しめるんですか。もし人を捕らえると、その人をどんな風に苦しめるのかって? M: 人をどんな風に苦しめるかですか? H: はい、人をどんな風に苦しめるか、そいつ、ケヤの白人は。 M: 人を捕らえると、胸の痛みね。 H: ふむ。 M: そうよ。そしてときには肋骨の脇が何かに突き刺されるみたいな。頭痛が続く、そしておさまることがない。占い(mburuga29)に行ったら、ケヤの白人のせいだと言われるのよ。 Nyu...(N): あるいは、わしらはそいつをムミアニとも呼んどるんじゃ。 M: そいつはムミアニの「白人」とも呼ばれるのよ。あの奇妙なひとたち、あの、何ていうんだっけ人間を...
Hamanoto(H): えーと、血を吸う? Mupa(M): ええ、そうよ。ああ、そのとおり、あの人間に注射を打つ奴ら。だって今だに、眠るとそいつとその兵隊たちに追いかけられるんだから。さあ、追いかけられて、追いかけられて、もし捕まえられたら、あなたは処刑されて、石油缶の中に(その血を)注ぎ込まれるのよ。そいつの石油缶ときたら、ガンガラン、ガンガラン、そいつが持って(追いかけてくる)。 うまく逃げおおせたら、諦めてくれるでしょう。あなたは追いかけられている。そして、カンバ人の女性の小屋に逃げ込むの。その女性はあの「白人」の部下の兵隊の妻なのよ。その女性の小屋に逃げ込んで、見回しても、戸口がない。小さな壁の割れ目があってそこから外に出ないと。そのとても小さい割れ目を開いてもらうの。カンバ人の女性があなたに言うのよ。出て、出て、って。あなたが出ると、彼女は小屋の中に戻る。そしてあなたは朝(目覚めて)、異常な症状を感じるわ、どうしようもないほど。これがムミアニの白人よ。 そうなると、それ(の病気)は、施術師のところに行く必要があるのよ。唱えごとをしてもらわないと。そう、憑依霊の白人の施術師のところに行って、「白人」に対して唱えごとをやってもらわないとね。その病気が出てきたら、施術師のところにそれをもって行かなければ、私の施術師のところで唱えごとしてもらわなくちゃね。 Woman1(W1): シディさんに? M: ちがうちがう。私の施術師よ、以前私を調えてくれて、おかげで私が回復したその人、ベムァヴンバさんの息子よ。 Woman2: ンガタ(ngata16)はどこか行っちゃったの? M: 今ももってるわよ。
Woman1(W1): その人(施術師)、「湿った窪地」村の人? Mupa(M): 「湿った窪地」の人よ。ところでそのンガタは、私自身がもっているの。私がね。自分できちんとしまっておいて、ときどき見て、身につけるのよ。 Nyu...(N): ほら、これじゃろ。 Hamamoto(H): で、そのケヤの「白人」とムミアニの「白人」ですが、同一人物なんですか。それとも... M: 二人とも一体よ。そいつ(「白人」)一人と、その手下の兵隊のカンバ人。 H: カンバ人? M: そのカンバ人を、そいつ(ムミアニの「白人」)はけっして手放さない。その手下の兵隊としていつもいっしょに行く。 H: おお、(ケヤの「白人」は)、ムミアニの手下の兵隊のこと? M: そうよ。その手下の兵隊よ。彼らは別れない。ところでその兵隊こそ、この布の持ち主なのよ。(これは)兵隊の布よ。 H: その黒い布が? M: ええ、黒い布。白いラインが縫い付けてある。(ムミアニの白人の)長衣(rinda30)みたいにね。 H: すると、それぞれが自分の長衣をもっている? M: うーん。 H: 「白人」の仲間たちは? M: いいえ、その兵隊はこれ(黒い布)を手に入れたら、それで終わり。長衣31とともに着たいときには、長衣を着て、それからこの布を巻いて結ぶのよ。
Mupa(M): ああ、占いなら私たちはしますよ、しますとも。でもね、あの大きなバッグの持ち主(憑依霊「白人」のこと)につかまれるのよ。そいつは占いを打つのが嫌いなの。あれらの瓢箪を打つのも嫌いなの。 Hamamato(H): ふむ。 M: (瓢箪を)見るのも、覗き込むのも嫌いなの。もし近くにいたとしてごらんなさい、もう徹底的に嫌うんだから。そもそもそれらを拒んでいる。このバッグの人が来た日には、ああ!ああ、私たちのところには瓢箪なんてありません、私たちは、って言うのよ。だから(私たちが施術する際には、瓢箪には入れずに)薬(muhaso32)だけを持っていきます。それをバッグに入れて、それを肩にかけてね。 H: ふむ。 M: でも、この瓢箪って誰のもの?だって、彼(憑依霊「白人」)こそが癒しの術を握っている人でしょ。私に必要なのは、300シリングを手に入れること。それで憑依霊「白人」を外に出せるのよ。(300シリングを)手に入れて、(憑依霊「白人」を外に出してしまえば、しばらくは「白人」のせいで治療を他の施術師に受けに行かなくて済むので)一休みできるから、その方が良いでしょ。そう、たった300シリング手に入れるだけよ。だってその(彼女を治療してくれている)施術師が言うことには、「ああ、300シリングだけ持っておいで。私があなたに草木を示してあげるよ。だって、(憑依霊「白人」)はンゴマ(ngoma33)を開くこともない、ただ私が草木を示すだけだから。」 H: ふむ。彼が? M: ええ、ムウェレ(muwele37)は草木を示してもらえば終わり。 H: それで外に出したことになる。 M: このバッグはすでに持ってる。そう。あちらで外に出してもらうというのなら、そもそもバッグは手に入れたわ。そう。施術師は(憑依霊「白人」の)草木を伐っては、そのバッグの中に入れてくれる。伐ってはバッグの中に入れてくれる。ここに着くときには、草木もいっしょ。自分のバッグの中にすでに入っている草木とともに着くことになるわ。さて、憑依霊「白人」の施術はこのバッグで、順調に続いていくわ。後は、そのバッグをあちらの施術師によって、唱えごとをしてもらうだけ。
Hamamoto(H): 「湿った窪地」村の? Mupa(M): そこにそのバッグをもって行って、私の施術師に唱えごとをしてもらわないとね。この近所のあの人(施術師)、もし憑依霊「白人」じゃなかったら、とうに唱えごとしてもらってるでしょうよ。でもその人は、憑依霊「白人」の施術師じゃないのよ。その人は憑依霊「白人」と知り合いじゃないの。 H: ふむ。 M: (「白人」は)自分のことを知らない人には、唱えごとしてもらわないの。 Woman1(W1): じゃあ、あなたは(「白人」と)どうやって話するの、あなたが(「白人」を)知らないとしたら。 M: ちがうってば。まずね、そいつはすごく獰猛な(強力な)憑依霊なの、あなた、キョウダイ。もう、すごいんだから。あなたが「白人」を知っていなくちゃ、あなた自身が「白人」を(身体の中に)持っていなくちゃ、それで初めて他の人に唱えごとしていいのよ。もし、あなたが「白人」を持っていなければ、行ってその人に唱えごとしたら、その人は病気になっちゃうのよ。 H: ふむ。 M: ええ。もし、あなた自分の憑依霊をもってなくて、誰かあなたに施術してもらいたい人がいたら、さて、あなたその人に唱えごとしたりする?あの、私の(施術上の)お母さんですら、私に唱えごとしないわよ。「いえいえ、あなたが互いに関係をもってしまっているあなたの相棒(憑依霊)に、私はまだ捕らえられたことがないのよ。」と言って。 W1: 彼女はまだ? M: 彼女はまだムミアニの「白人」には捕らえられたことがないのよ。だから「ああ、私はその人(「白人」)に対して唱えごとはしません。そいつが私を捕らえるといけないから。」って言うのよ。そうよ、ものすごく厄介事を引き起こす霊なのよ。畑仕事も嫌いだし。
Woman1(W1): そいつ怠け者なの? Mupa(M): いいえ。荷物は嫌いね。そいつはバッグだけは好きなの。変なの。あちら(「湿った窪地」村)で、(「白人」は)まだ外に出されていないけど。白人たちって、仕事といえば荷物よね。背中に。キリフィ(Kilifi42)に行ってごらんなさいな。大きなバッグが背中に、別のバッグが腰のところに、さらに別のバッグを肩からかけてるのを見るわよ。 W1: ええ。見れば、白人たちがザァァ(背中に背負った荷物を上下させながら歩くさまを表現する擬態語)。 M: あっちでもザァァ、こっちでもザァァ。私、キリフィに行ったら、白人を大勢見るわ。そこに着いたら、熱が出ちゃうのよ。 Hamamoto(H): ふむ。あっちはたしかに白人が多いですね。 M: 多いわ。私が初めての旅で行ったとき、その場所のことは知らないで。(白人の)若い娘、年取った女性。私はキリフィは初めてで、最初はマリンディにいる私の息子のところに行こうって。でキリフィでもうすごくたくさんの白人。 W1: どっちを向いても、白い、白い、白い顔ばかり。 M: それはもう。みんなぴかぴか光ってるの。私は病気になっちゃった。こちらに着いたら、それはもう。 H: うーむ。それはお気の毒でした。 M: ええ、帰り着いたら、もう病人そのもの。 W1: あの人たち、水のあるところ水のあるところにいるのね。 M: 水だらけ。だって彼らの国がそうなんだから。うちの主人が言うには、白人の故郷は水の中だって。水がいっぱいの中でばちゃばちゃするのが彼らの好みなの。 H: うーむ。
Mupa(M): うん。そんなふうにしても白人は溺れないのよ。深みにも入っていくのよ。 Hamamoto(H): うん、そうですね。 M: 深みにも入っていく。水のなかでばちゃばちゃするのが仕事。 (以下、急に、日本についてのどうでも良い話になっていくので省略)
ムパさんに初めて会ったのは1991年の調査で。ご主人のNyu...老からMwanyotaクランの歴史と、それを構成するさまざまな分枝について聞くインタビューが目的だったが、偶然奥さんのムパさんが憑依霊の施術師であることがわかる。私にとっては初対面だったのだが、彼女はその前月に「酸っぱい」村で行われた埋葬の際に、そこで私を見たという。見た途端に心臓が破裂しだし、帰宅して施術師のところで唱えごとをしてもらわねばならなかったと。彼女の持霊がムミアニの白人だったせい。というわけで来年来るときにはお土産に背中に背負うバッグを忘れるなと言われた。面白いおばあさん。
というわけで翌年、再会したときには憑依霊「白人」について聞いてみた。「白人」の話自体は短く、すぐに日本での暮らしなどについての興味津々な質問攻めになって、完全に話題を彼女にコントロールされてしまったのが残念。
しかし、とても興味深い話が聞けた。彼女は、ムミアニの白人(muzungu wa mumiani)とケヤの白人(muzungu wa keya)を、後者を前者の家来の兵隊とする独自の理論をもっている。その根拠となるよく見る夢の話である、というのが面白い。ムミアニの白人は、ドゥルマ人の血を集めているのだが、その実行部隊が家来のカンバ人で彼らに追いかけ回されるという。
それにしても「白人」の憑依霊を持っている人は、白人を見ただけでも心臓バクバクで病気になるって...でも同じような話を他の「白人」持ちの施術師からも聞かされたことがある。変な形で現実の白人と連動しているのが面白い。
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